第4話 異能力訓練
昼休憩後の授業はグラウンドで異能力を扱えるよう訓練の授業が始まる。
監督として、政府から派遣された鑑定者、講義をしてくれた女性と異能が扱える教師が行う。
オレたちは更衣室に向かい、着いてすぐに体操服に着替える。
ゆっくり着替えると、いつの間に着替えたのか分からない涼香に邪魔されるからだ。
「ふぃーっと、これで完了っと」
「ちょっと、ゆりちゃん着替えるの早くない!?」
「涼香だって、すでに着替えてるじゃんか」
「ぶー、私の成長記録が書けないよ」
「……誰の成長が書かれているのかな、所有者さん? まったく、自分のにしなさいよ。 というか、それオレにも見せて」
「きっと後悔するよ……?」
「えっ?」
更衣室のロッカーの中にある一冊のノートを取り出して表紙だけ見せてくれた。
表紙には『ゆりちゃん成長記録 part6』と油性ペンで書かれていた。
パート6って何だよ。
オレに対してそんなに書く情報があるの?
「涼香、ちょっとその中身見せてよ」
「え~、どうしようかなぁ」
オレがノートを取ろうと手を伸ばすも、簡単に避けられる。
「ゆりっち~、すずかっち~。 夫婦漫才はいいから早く行かないと遅刻しちゃうぞぉ~」
涼香と話していると、友達の猫宮縁が知らせてくれた。
すでに周りは着替え終えて、更衣室から出ている。
彼女は肩まで伸びたセミロングの金髪(プラチナブロンド)で、ルビーのような真紅の瞳が綺麗。
緩い口調のギャルで友達思いの子だ。
「う、うん。 今行く~」
「あともう少しだったのに」
「もう少しじゃないよ」
涼香は両手で指を揺らしながら、残念がる。
オレはもたもたしている涼香の手を引っ張り、縁と一緒にグラウンドに向かう。
◇
グラウンドには学年の全女子生徒が集まっている。
時間となり、授業が始まる。
内容としては、それぞれ診断した自身の異能力を発動して慣れることだ。
危険と判断したら、止めに入るため安心して使用するようにと。
「ていうか、レベル1程度の異能は危険じゃないでしょ」
「分からないよ?」
特にオレの異能が特殊すぎる。
「じゃあ、まずは私からやろうかな。 危険度ないしね」
先に言い出したのは、涼香だ。
「おぉ~! すずかっちの異能気になる!」
「見てて、縁にゆりちゃん。 ていっ!」
涼香は親指を立てて人指し指を前に出すと、そこから透明度の高い水が発射された。
だが、勢いが弱い。
20cmほど飛び出た後は、重力に従いすぐに落下していく。
「無から水が出てくるってすごいな」
「だよねだよね! これが現象系の異能かぁ~。 いいなぁ~」
「縁は何の異能なの?」
「ゆりっち気になる? 気になるよね」
「う、うん。 随分と食い気味だなぁ」
「アタシの異能は、身体変化系だよ。 にゃ~お♪」
縁は手を丸くして手招きをしてオレに向かってウィンクをすると、頭に猫耳が生えた。
その猫耳はピクピクと動いている。
「えっ、めっちゃ可愛。 一瞬意識が飛んだ」
「でへへ~。でしょー♪」
「むっ」
「冷たっ!?」
オレが縁の頭に手を伸ばそうとしたら、背中に冷たい液体が当たる。
そこには、俺に向けて人指し指を向けていた。
「す~ず~かぁ~」
「ぷいっ」
「不意打ちは心臓が吃驚するでしょっ! やるなら、縁に向けて放って!」
「えっ!、何でアタシ!?」
「夏だから涼しむと思ってね」
「たしかに熱いけど! って、すずかっち指を私に向けないでっ!」
「だって、ゆりちゃんが縁の方を褒めるから」
「ただの嫉妬でアタシを濡らすのっ!?」
猫が威嚇するように、縁の猫耳が逆立てていた。
「にゃにゃっ!?」
それを見てオレはつい気になって、猫耳を触ってしまう。
「ちょっ、にゃめてよぉ、ゆりっちぃ~。 にゃあぁん♡」
これって本物の耳なのかな?
めっちゃもふもふして触り心地がいい。
クセになりそう。
両手で両耳の内と外を軽く揉んでいると、徐々に暖かくなる。
これは、耳に神経とか通っているのだろうか?
縁から淫らな声が聞こえた瞬間。
「いったっ!」
夢中になって、縁の耳を触っていると涼香がオレの太腿に蹴りを入れられた。
足を抑えていると、前を見ると縁は服が少し肌蹴ており涙目で息遣いが聞こえて、涼香を見ると縁に向けて視線で刺していた。
「縁ごめん、やりすぎた」
「にゃはは……。 はぁはぁ、夢中になって触る気持ちは分かるよ、アタシだって昼休憩中に触ってたから……」
縁は頬を赤らめてそっぽを向いていた。
さすがにやり過ぎたと反省するが、今の縁を見ると、何だろうこの気持ち。
「ゆりちゃん、私にも頭撫でてよ!」
涼香は、自ら触りやすいように頭を下げてきた。
「涼香の頭に猫耳ないじゃん」
「合ったら撫でてくれるの?」
「うん。 涼香なら猫耳はきっと似合うよ」
「じゃあ、今日の帰りに買うね」
「いや、そこじゃないでしょ!? ていうか、すでに触ってるし!」
無意識に丁度いい高さに涼香の頭を撫でていた。
「あら、もう復活した」
「まったくもう、あれはアタシの了承を得てからやってよ」
「聞いてくれたら、触らせてもらえるのか……」
「次はゆりっちの異能を見せてよ」
「えっ?」
「うんうん。 私も気になってるけどゆりちゃんは教えてくれないから気になる」
「やめとこ? また縁が泣くハメになるよ?」
「そこで私を人質にしないで!?」
オレの異能『触手操作』が発動した場合、これって制御できるのであろうか?
まぁそういうのを確認するための授業だからやる必要はあるけども……。
さすがに異能名に操作があるから、出来ると思うけど。
この異能を女の子の前で発動したくない。
「ゆりちゃんがどんな異能でも私、受け入れるから!」
「ただの異能を見るだけで、すずかっちが覚悟してるんだけど……」
二人はもうオレに意識を向けている。
もう言い逃れできない。
「仕方ない。オレの異能を発動するから、少し離れて」
「なんで?」
「どんな異能か発動していないから分からないけど、異能名が危険だからね……」
「どんな異能なのよ……」
オレが忠告すると、二人はそれに従って二歩ほど後ろに下がる。
「いくよ」
オレの異能は、触れている物質を触手になって操作する。
ということでしゃがんで両手で地面に触れて、心で祈ってみる。
すると、地面に触れている手の前がぽっこりと突起したと思うと、スルスルと伸びていく。
突起した物が二本存在して、土や砂が落ちることなく完全な個体となってうねる。
「何これ、ゆりっち。 蛇?」
触手が徐々に縁の方へと近づいていく。
「これって、アタシに近づいていない?」
触手が縁の前に止まると、足から脚へと絡みついていく。
「えっ、ちょっ、何よこれぇ!? 締め付けが……つよいっ!? 離れられない」
足をじたばたと抵抗するが、絡みつきが強くなっていく。
「何なのよ、この能力ぅ!? いやぁあああ」
「さぁ? オレにもさっぱり」
今度は体操服の中へ侵入しそうになり、縁は涙目になる。
もう一本の方はオレの手に絡みつき徐々に上っていく。
その感触は、表面は土と砂みたいだがどこか柔らかいような。
「って、何で異能者のオレまでっ!? ひゃんっ、何か気持ち悪い」
意図せずに触手が腕に絡みつくながら登っていく。
これ、触手に粘液とかあったら、完全に成人向けの作品描写になるぞ。
「ふんっ!」
触手がオレの体操服の中まで侵入しようとしたところ、涼香の手刀によって一刀両断されて、一瞬で触手が崩れた。
「た、助かった……。 ありがとう、涼香」
「う、うん。 こちらこそごちそ――じゃなくて、よかった」
「すずかっちぃ~、こっちも助けてよぉ~」
「ぷいっ」
触手が完全に独立して動いている。
無機物なのに意思があるみたいだ。
「ゆりっち、早く異能を解除してぇ~」
「あぁ、その手があったか、ちょっと残念」
すでに触手は縁の体操着に侵入して、うねっている。
縁は腰を抜かして無抵抗で涙目になっているところで、地面から手を離すと一瞬で逆再生したかのように触手が元に戻っていく。
「残念ってなによぉ……、ぐすん」
「ごめんごめん、オレも気が動転してて」
「さっき残念って言ったでしょっ!?」
オレが縁の手を引っ張って立たせた後、土で汚れた縁の体操服を掃う。
「何でゆりっちが発動を渋ってたの理解したわ……。 発動するときはアタシが近くにいないときにやって……ね?」
「そこは縁ちゃんじゃなくて、二本ともゆりちゃんに向かってくれれば良かったのに……」
「めっちゃ黒っ!?」
「今度は涼香が触手の相手になって貰おうかな」
「いやぁん、ゆりちゃんに襲われる~♪」
「何で喜んでるのよ、この子……」
とりあえず、オレの異能の効果が知れたことは良かった。
一人、犠牲になったが。
もし異闘に出場するには、この触手を何とかしないと。
制御ができないと戦いにすらならない。
「ちょっとハプニングがあったけど、オレが操作できるまでこの時間、練習するね」
「ちょっとどころじゃないけどっ!」
この授業の時間は三人で異能力の訓練をした。
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あとがき
初めて卑猥な書き方をしたのですが、あのような表現の書き方でいいのでしょうか?
少し軽めに記載したのですが、コメントやアドバイスがあれば挑戦してみようかなと思います。
(作品の方向性としては、がっつりと異能バトルがしたい)
作者のモチベの向上のため、「♡」、「★」と応援コメントを気軽にお願いしますm(_ _)m
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