第2話 異能診断
オレの名前は、蛇谷
前世は元男性で記憶を保持したまま転生してしまった。
この世界は、女性が15歳になる年の9月から異能力が診断され判明する。
異能力は自身が明確に能力の効果を把握しないと発動しないため、ある程度精神が成長した状態ではないと異能力を把握させてもらえない。
そして今日、9月1日でオレの異能力が判明するのだ。
昨日は緊張して夜までしか寝れなかった。
一体どんな能力になるのであろうか。
やはり転生したのだから、特典としてチートみたいな能力だったりして。
そんな期待しながら、鏡の前で腰まで伸びた黒髪を後ろで結びカバンを持って家を出る。
中学校へ登校中。
自分がどんな能力なのか妄想により上の空の状態で、歩いていると突然後ろから抱きしめられた。
「ゆ~りちゃん! いよいよ脳力診断日だね!」
「う、うん」
彼女は水上涼香。
白銀の綺麗な髪に青みが掛かっていて美しく、深い海のような青い瞳が特徴の少女だ。
抱き着かれると、微かな膨らみが背中に伝わり元男性のオレでも意識してしまう。
毎度スキンシップが激しい少女とは、小学生からの付き合いで中学3年生になっても仲良しの親友だ。
「ゆりちゃんは一体どんな異能が欲しいの?」
「そうだねー、やっぱりレアで効果が強いのが多い現象系の異能かな」
「現象系かぁ、活躍してる選手は多いけど、最初は弱いってよく言われているよ」
「でも、ほとんどハズレがないんだよ、大器晩成型って後々に最強になるってお約束だよ」
「ゆりちゃんゲームのやりすぎだって」
「あはは。 だって、異能が扱えるんだよ、楽しみすぎるよ!」
異能についてあれやこれやと話題が尽きずに、あっと言う間に中学校に着く。
教室に着くと、女子生徒達は異能についての話題が尽きず、男子生徒は羨ましいと目線で訴えている。
もしオレが男性に生まれてたら、異能が扱える女性に対して嫉妬をするのであろうなと思うよ。
これに関しては、性別が逆転して転生したことは感謝はしている。
同じクラスで席が近い涼香と話をしているとチャイムと同時に教師が教室に入り、HRが始まる。
その後の授業は、お待ちかねの異能力診断と講義に異能操作訓練だ。
◇
異能力診断。
クラスの1組から順に女子生徒を体育館に呼び出されて、診断が行われる。
診断は鑑定系の異能力者達が行う。
オレ達のクラスは2組。
1組の診断が終わり、とうとうオレ達の番だ。
クラスの女子達と一緒に体育館へ向かう。
中に入ると、スーツ姿の女性が5人並んでいた。
彼女達は政府お抱えの鑑定者達だ。
異能で把握した対象者の異能を紙に記して渡す。
出席番号の順で次々と診断されていく。
診断された女子達の反応は十人十色の反応をしていた。
「さすがに緊張してきたなぁ」
心臓がバクバクと強く鳴っている。
「ゆりちゃん大丈夫?」
「あぁ、うん。 覚悟は……出来てるよ涼香」
「私も緊張してるんだぁ~。だって、異能によっては将来が決まるものだからね」
「そうね」
「さっきの子なんて、身体変化系で痛覚遮断の異能だって。 さすがに使い道が困るの能力は怖いよね」
「うへぇ、身体変化系の異能はピンキリだからね。 レベル3あたりになってから欲しいよ」
「私はやっぱり最初は日常でも使える異能が欲しいな~。 日常的に使えばレベルが上がるんだっけ?」
「そうらしいよ。 そういう話は今日の講義で教えてくれるでしょうね」
涼香と話していると、オレの順番がやってきた。
鑑定者の前まで来ると、教師の指示でパイプ椅子に座らせられる。
「これからあなたの異能を鑑定します。 手を前に出してそのままでいてください」
「はい」
オレは鑑定者の前に手を伸ばす。
すると、女性は手を両手で包み込む。
その手はスベスベとして温かく、少し心地がいい感じだ。
「こ、これは……」
何、その反応。
まさかハズレ中のハズレ?
鑑定者が苦笑いしながらオレの手から外し、机に用意された紙に記していく。
無言で差し出された紙を見ると、オレも微妙な反応してしまった。
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異能レベル1
異能:『触手操作』
物質に触れている間だけ、その物質が円錐状に細長く伸ばせる。
伸縮自在で四方八方動かせることができる。
触手の強度は素材そのもの。
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「なんですか、これ……」
「……分類は物質操作系ですねー。 では、次の方どうぞ」
触手操作ってなに!?
これ、ウネウネしてるやつだよね!
物質を伸ばす程度だったら、蔓とか鞭という表現でいいでしょっ!!
こんな能力を涼香に見られたくないよ!
異能の鑑定が終わりオレは、とぼとぼと教室へ向かう。
ゆっくり歩いていると、後ろから強く抱き着かれた。
「ゆ~り~ちゃん! 大丈夫? テンションが下がっていたからつい気になっちゃって抱き着いちゃった!」
「抱き着くのはいつものことだから、いいけど。今はその安らぎ心に効くよ」
「診断された異能はハズレだった?」
「当たりかハズレか分からないけど、おそれくハズレだろうね……。 オレのことはどうでもいいから涼香のことを教えてよ」
「うん! 私の異能はね『水生成』だって、蛇口を捻ると水が出るイメージをすれば異能が発動するんだって!」
「現象系の異能なのね。 いいなぁ~羨ましいよ」
「でも、今はちょろちょろと水が出る程度らしいから、レベルを上げないと使い物にはならないよ?」
「それでも、オレよりいい能力だよ」
「ゆりちゃんの異能がどんなのか気になるよ!」
やだよ!
涼香みたいな美少女の前に触手なんて出したくない。
そこを切り抜かれたら、薄い本の襲われる一歩手前のワンシーンとして描かれてしまう。
それだけはいけない!
「また今度教えるよ」
「うん、楽しみにしとくね! それよりも喉乾かない?」
「少し乾いたね……」
「じゃあ、これでも飲んで」
どこから出したのか、涼香は水筒を取り出して渡してくれた。
「ありがとう」
水筒の蓋を開け、ぐびぐびと飲んでいく。
少しぬるいけど水道水よりも飲みやすくて、冷えたら絶対に美味いと思ってしまう。
「涼香、水をありがとう。 凄く美味しかったよ!」
「それはよかったぁ~。喉乾いたらいつでも言ってね! 水筒を準備しているから! これからはお茶とか自前で用意しないでね」
「うん。欲を言えば少し冷えたら最高だと思うよ」
「――っ!? そうだね。今度から冷やすことにするね!」
「うん」
歩きながら、視聴覚室へ向かう。
この後は、異能についての講義の時間だ。
今は変な異能でも、レベルが上がれば別の異能を授かる可能性がある。
仕方がない。
今はこれを受け入れて、今後はレベルを上げることを目標にしよう。
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あとがき
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