第13話 私の豪運は芸術を届ける。
国王のクソっぷりにうんざりしていた私達は国営の競馬場にいた。
レース場は4つあり、短い間隔でレースが行われるようで、
一つ一つのレース場は前世の競馬場よりも小さかった。
一時期、競馬にハマっていたことがあり私がベットすると思われるレースは決まって絶望杯という名前が付けられていた。
馬も数頭買ったっけ・・・なつかしいなぁ・・・。
ちなみに未成年はダメだぞっ☆
私達は競馬場のロビーに居た。
「お、此処が・・・まずまずってところかな」
「えぇ!?結構大きいですよ。」
「にゃ。」
レースで一度に走る馬は11頭、その入着順を私は紙に走り書きをする。
なんてことはない、入着順の枠に1から10までの数字を順番に書いていくだけだ。
いわゆる10連単、これが一番の最高倍率であった。
レースごとにその紙を提出するだけ・・・・そう、それだけでいい。
一時間でどこかの領主様の総資産を壊滅させることができる、私とレアちゃんのコンビなら国王程度であれば数時間で余裕だろう。
金貨3枚が一回のレースで30000枚ほどになった。
それを次のレースに全額投入する。
一つでも外れれば0、普通の人から見れば無謀と思えるこの行動こそ私の必勝法だった。
2回、3回と受付の女性は呆れ顔でその紙を受け取っていたが、4回を超えたあたりで焦りだしその後真っ青となっていた。
当然、馬たちは私達の予想どうりの動きをして走り出し、一頭たりとも追い抜こうとはせずに美しい流れを保ったままレースは終了していく。
すべてのレースが同じ足音のメロディーを奏で、鮮やかな馬の流れを生み出す・・・まるで競馬場全体が神々しさを放つ芸術品のようであった。
そんな様子を見ていた周りの人々は私達の異常さに気が付き、続々と私達を取り囲み・・・奉りだす。
「な、なんと美しい・・・・。」
「おぉ、なんと神の思し召しか。」
「ありがたやー。」
最初は私達の後の旨味をかすめ取ろうとする輩も居たのだが、大半は全て当たってしまうことに恐怖し発狂したり気絶したりしていた。
前世では当たり前の光景ではあったが、レアちゃんやクッションはどうやら落ち着かないようだ。
「はわわわわわ。」
「にゃ・・・。ニャンだか恥ずかしいにゃ。」
受付が席を離れ誰かに連絡をしていた。その様子に私は何かを察した。
「んー、そろそろかなー。」
人だかりをかき分け裕福そうな男が出てくる。
「あのー。」
「何!?」
「ご主人様!?」
「ひぃいいいいいいいい」
おそらくこの競馬場の支配人だろう。
これも、大体展開はわかっている。
「おい!まだ出せるだろ!」
「は、はいぃいいいいいいいいいい。」
「こわいにゃ。」
一時間後。
涙で水たまりになった床にその男は必死に額を押し当てていた。
「ゆ、ゆるじ・・・・て・・・ぐだざ・・・。」
その様子を見ていたクッションとレアちゃんはドン引きしていた。
「ご、ご主人様すごい・・・。」
「こわいにゃ。」
どうやら男は気絶寸前のようだ。
後ろの方にも水たまりができていた。
「・・・クソが!精算しろ。」
些か、レアちゃんをバカにされた分としては少ない気もするけどいいか・・・。
その言葉を聞いて男は即座に生気を取り戻し、そそくさと奥へ戻っていった。
「は、はぃいいいいいいいい。」
・・・
夕方の日の入りを背に、10台以上の馬車が隊列を組んでテウリア領に向けて移動していた。
荷台には金塊、宝石は勿論、食料や装備、特典武器と呼ばれる転生者の置土産が大量に積まれていた。
私は先頭の馬車に乗り振動を抑えるためにレアちゃんの膝枕を堪能していた。
反対側にも柔らかいムニムニがあたり抱擁されるような居心地であった。
「これぞ、至福・・・。最高・・・・。」
照れながらこちらを見つめてくる。
「ご、ご主人様・・・。」
その様子を呆れ顔で見ていたクッションが話し出す。
「お前、これ私のときよりも多いにゃ。」
「そうかなぁ・・・・まぁ大切な人を馬鹿にされて黙って居るわけにも行かないでしょ。」
「ご、ご主人様!!わ、私のためにありがとうございます。」
「いいよ・・・・。」
その後、私は眠りについた。
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