第12話 私の豪運は怒りを届ける。

数日後、私達は王都に居た。

これぞ異世界と言った洋風の家が立ち並び、遠くには王城らしき建造物が見える。


私はレアちゃんと手を繋ぎ、歩きながら王都を散策していた。

「これだけでも不幸がほとんど発生しないね。」


「はい。それとご主人様と繋げて幸せです!」


「ほんとに仲が良いにゃね。」


そしてテウリアとは比べ物にならないほどの人が行き交っている。

獣人が珍しいのか人々の視線が時折向けられてくる。

「な、なんだか恥ずかしいですね・・・・。」


「まぁこんなもんにゃ。」



その後、私達は王国の王城にいた。


そこには玉座に座りふんぞり返っている国王と呼ばれる男が、髭をいじりながらこちらを見ていた。


此度こたびの活躍、ご苦労であった。」


「はい、ありがとう御座いますにゃ。」


「史上初の功績と聞いておる。こちらも最大限の褒美を与えたいところだが・・・・」


ところだが・・・???

私はその言葉に不快感を覚えた。


国王の顔が芳しくない。周りの将軍や兵士達も少しざわついている。

「ところで、その娘は?」


「はい、ハーフドラゴンですにゃ。」


国王は諦めた様子のようだった、兵士たちは顔をそむけだす。

「ふむ。であれば・・・。」


国王は隣りにいた補佐らしき人物に目配せをした。

「テウリア領主並びにその従者よ、褒美を与える。」


王国から提示されたのはテウリア領の関税優遇措置と、ギルドに対しての依頼優先の2つである。


史上初の撃退という功績に対して、私でも少なすぎるとわかるほどの報酬だった。

何かがおかしい・・・。


「ちょっと待って!」


「お前!?座ってろにゃ・・・。」


「なんじゃ、小娘?」


「この報酬は些か少ないと思います。」


「ふむ。原因は、その娘にある。」


国王はレアちゃんを指さしていた。


「は?」


私の嫌な予感が見事的中した。


「ハーフドラゴンと言ったか?龍族は古来より災いを司るという言い伝えがあってだな・・。」


補佐らしき人物は話す。

「魔王軍と結託し戦争まで起こしよって!此度こたびの襲撃もその娘の仕業であると考えるのが妥当じゃ。」


「お待ちくださいにゃ。」


それは当たっていた・・・私は、それ以上聞きたくなかった。


その言葉を聞いてレアちゃんが呟く。

「わ、私は!!」


「黙るのじゃ!いままわしき龍族の血を持つ娘よ!」


その言葉を聞き、レアちゃんが泣き出した。

「う、うぅ・・・。わ、私だってこんな・・・」


生まれ持った境遇によってこんなに扱いが変わるなんて、今まで思っても見なかった。

豪運によっていかに自分が楽してきたかを同時に思い知り、やるせない気持ちで溢れかえった。


そしてレアちゃんを冷遇されて黙っているわけにもいかなかった。

「おい!」


私が前に詰め寄ろうとするとクッションに手で遮られた。

「レノ、待つにゃ。」


見渡すと、周りの兵士たちも構えていた。


「なんじゃ小娘。貴様も龍族の味方をするのかのう?」


人を本当に殴りたいと思ったのは、生まれて初めてだった。

私は拳に力を込める。


クッションが私の手を掴んで、すごい力で握ってきた。

どうやら、私と同じ気持ちのようだった。


「失礼致しました陛下。我々は退出いたしますにゃ。」


「うむ。」


「こうやって、見逃しているだけでもありがたいと思うのじゃ。」


私は小言を呟いた。

「くそが・・・・。」


その後王城を後にした私達は馬倉に向かっていた。


「何だよあの国王!私達の苦労も知らないで!!」


「ご、ごめんなさい。ご主人様・・・私のせいで・・。」


その言葉を聞き、レアちゃんを抱きしめていた。

「そんなこと無いよ。私こそ言い返せなくて・・・ごめん、レアちゃん・・・。」


「昔はあんなんじゃなかったんだけどにゃあ・・・。」


いっそのこと、こんな国滅んでしまえばいいと思った。


これも不幸ということで、どこかにぶつけたかった。



馬の旗を掲げた門を私は指差す。

「ちょっと・・・よってこっか♪」


「あっ・・・。」

「しょうがないにゃぁ・・・。でも余裕は金貨3枚ぐらいにゃよ。」


「十分っ!!!」

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