第11話 私の豪運はお祭りを届ける。

レアちゃんに名前を付けてからというもの犬のように頻繁に私に接触してくるようになった。

今もこうして翼をバタつかせながら頬を擦り付けてくる・・・近い、近い。


「ご主人様・・・今日も素敵です!」


「そ、そうかなぁ・・・。」


「はいっ。」


まぁ幸せなので問題ない。


ただ不満があるとすれば接触してるところがピリピリしているということだ。

マグナ・クエークの時のピリピリもレアちゃんを抱きかかえていたのでこれ原因がだろう。


まぁピリピリのおかげで自称神様撃退豪運パンチを繰り出せたんだけど・・・。

となるとピリピリはおそらく不幸のチャージと言ったところだろうか・・・。


「お前ら仲いいにゃね。」


「どうしたの、クッション来る?」


私は手を差し伸べる。


「にゃ!?私は・・・べ、別に良いにゃ!」


真面目そうな男が咳払いをする。

「本件は魔導兵器により撃退したということで、王国に報告してもよろしいですかな?」


「それが良いにゃ。」


「それでいいと思う。」


あれからマグナ・クエークの死体を捜索したものの一切出てこなかったそうだ。

討伐したと言うには証拠がないので、撃退という形になった。


真面目そうな男が呟く。

「それにしても、初就任で史上初の伝説級モンスターの撃退とは・・・幸運、いや豪運と言った所ですなぁ。」


「ははは。たまたまですよ。」

はい、当たってます。


クッションがジト目でこちらを見てくる。

「ほんとに運が良いーにゃね。」


「はっはっは。」

クッションめ・・・。


ギルドから屋敷へと帰ると玄関でクッションがこちらを見つめてきた。


「餌なら、ないよ?」


「にゃ!?違うにゃ。お前のもう一つの特典のことにゃ。」


どうやら運のことだろう。

「特典?運のこと?」


「そうにゃ。お前は運が良すぎるにゃ。」

「はわわ、私も思ってました・・・。」


「あちゃー。まぁ私の持って生まれた才能って所・・・・。」


「にゃ!?特典じゃないニャ!?」

「わ、私と反対ってことですか!?」


「まぁ・・・・。そんな感じ・・・。」


レアちゃんが赤くなりこちらを見つめてくる。

「わ、私達お似合いですね・・・。」


「うん。それで結婚したんだけど。」


「待つにゃ、そこのドラゴンの娘は不運ってことかにゃ!?」


「そうだよ?言ってなかったっけ?」


「お前もっと早く言えにゃ!そういうことだったのかにゃ。」


「ごめんね☆」


「にゃ・・・。」



テウリアは半壊したものの、先の史上初の伝説級モンスターの撃退ということで街中が連日お祭り騒ぎとなっていた。

撃退の報を受けた人々が近隣の街から続々と来訪し、それを目当てに大量の屋台やら出店がやってきた。

物資不足を感じさせないほどの大盛況ぶりであった。

翌日私達はテウリアを散策していた。


「どこもかしこも、お祭り騒ぎだにゃ!」


「ねー。」

私は懐かしのりんご飴やらたこ焼きを大量購入し、次々と頬張っていた。

何という美味・・・グッバイ大和撫子。


「ご、ご主人様・・・。」

レアちゃんがこちらを見つめてくる。

しょうがないなぁ・・・。


「はい、あーん。」

「ん・・・。お、美味しいです!!」

美味しそうにたこ焼き頬張る。まさに眼福だ。


特に撃退に使用されたとされる魔導兵器は幸運をもたらすラッパとして、

領地の真ん中の広場にデカデカと飾られていた。


それを囲むようにして領地の兵士たちは話こんでいた。 

「どんな魔力してたら魔導兵器がこんなになるんだよ・・・」

「俺は見たんだ凄まじい閃光と爆発を。あれはまるで魔王の攻撃だ」


「おー。もれなく壊れちゃったやつね。」


「お前・・・・これ一門で金貨50000枚にゃよ。」


「へー」

私にとっては残念ながら、はした金である。


「あの時はすごかったですね。ご主人様。」


「ねー。」


魔導兵器を見ながら、私はある違和感に気がついていた・・・。

そう、一度も転んでいないのである。


1分に一度のペースで起こるはずなのに30分経っても起こっていないそれは、

行方がわかっていない伝説級モンスターよりも不気味すぎた。


「レアちゃん。」


「なんですか?ご主人様。」


「私達、一度も転んでないよね。」


「!?確かに・・・。わ、私・・・やっと・・・。」


突然レアちゃんが泣き出した

「ちょ、ちょ。」

確かに私も泣いちゃったし・・・豪運から開放されたい・・・。


現在レアちゃんに抱きつかれており、接触面がピリピリの不幸チャージ中である。

つまりチャージをすることで周りに不幸が発生しないということなのかは、よくわからないが移動は楽になった。


私達は、ギルドへ顔を出す。


「おかえりなさいませ、領主様、ギルド長様、レア様」


「よっ。」

「にゃ。」

「こ、こんにちは。」


「早速ですがこれを・・・。」

真面目そうな男はクッションに手紙を渡す。


「これは?」


「王国からの召集令状です。撃退の件で。」


翌日私達は渋々、祭りをキャンセルし王国へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る