第14話 私の豪運は神話を届ける。
レノたちが王国を去って二日後。
国王はいつもどおりの玉座でふんぞり返っていた。
バタンッ!
急ぎ足の兵士が扉を開け入ってきた。
「国王様!我が国の国庫の余力が2割を割りました!!」
国王の顔色が一気に変わり、隣りにいた補佐らしき人物は話す。
「何!?貴様それはどういうことじゃ!」
「はっ、数日前我が国の競馬場にて、神の如き運を持った者により殆どを失いました!」
「なんじゃと!?」
「バカを申せ!そのようなやつが居るものか!賊による仕業だ。風貌を申せ。」
「はっ、競馬場に現れたのは、村人らしき女1、ハーフドラゴン1、猫の獣人1でございました。」
「ほう・・・。待て!猫の獣人はテウリアの領主ではないのか!?」
「はっ、サバトラ柄と聞いており、おそらくは。」
国王には心当たりがあった。
それは、先日報告に来たテウリア領主と忌まわしきハーフドラゴンを従えたその従者であった。
「おのれ、アヤツらか・・・。」
ふと国王は疑問に思った。
高々、テウリア領主と従者ごときに国庫の8割を持ち去ると言った神の様な所業ができるだろうか。
そして、奴らが伝説級のモンスターを撃退するほどの実力を持っていたのも事実だ。
国王は撃退の一部始終を見ていた伝令役に尋ねる。
「おぬし、撃退の様子を見ていたそうじゃな。」
「はっ、見ておりました。アレはさながら天の雷とでも申しましょうか、神の所業にも思えました。」
「そうか。」
聞けばそれを成し遂げた器は天使の象徴とも言えるラッパのような形をしていたというではないか・・・。
であるすれば辻褄が合う・・。
つまり、あの領主と従者は幸運を司る天使・・・神の代弁者という可能性がでてくる・・・。
とすると気になるのは隣のハーフドラゴンだ・・・・災いの象徴としてドラゴンは天使と対立してきた・・・。
まさか、古より伝わりし神の執行者・・・・裁きの龍だとでも言うのかっ!?
そう考えると国王は全身から冷や汗が止まらなかった。
国王が玉座から立ち上がり叫ぶ。
「わ、我は・・・何ということをしてしまったのだッ!」
天使一体だけでも国、しいては世界すら滅ぼす危険性があった。
今行われている魔王の戦争が可愛く見えるほどだ。
「国王様!どうされたのじゃ!?」
むしろあのような振る舞いをして、国庫の8割程度で済んでいるのは天使のご慈悲あってこそだろう。
次の瞬間、国王は涙目流す。
「な、なんと慈悲深きことか・・・・。」
「国王様!?どうされましたか。やはり賊を今すぐにでも・・・。」
「バ、バカを申すな!あれは天より仕えられし神の代弁者なるぞ!」
その言葉を聞き周りは騒然としだす。
「なんと!」
「おぉ。」
「今後、テウリアには一切手出し無用じゃ。むしろ我々の慈悲を示すのだ!」
「はっ!」
「我はこれよりテウリアに向かう、皆の者付いてまいれ!」
「はっ!」
国王とその兵士達は、急ぎテウリアに出発した。
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