第27話 蹂躙
エルクは、目を丸くしていた。
傭兵たちは。少なくとも兄たちが雇った傭兵は、けっして悪い腕前とは、思えない。
盾に、胸当て。フルアーマーの鎧は介添えが必要で、着脱もできないため、これが街中の戦闘では限界だ。
それが、叩きの召されていく。
ミイナの振るう鎖で繋がった棍は、ムチのようにしなり、構えた盾をすり抜けて、兵士たちに痛打を与えている。
みな、簡易ながら兜を被っていたので、打つのはそれ以外のところだ。だが、足を打たれた者は足を抱えて。腕を砕かれた男は、うずくまって、悲鳴をあげ、もう、立ち上がろうとしない。
それでもミイナを相手にしたものは、まだましだった。
メイド頭は、懐から取り出した布で相手の視界を奪い、接近した一瞬で相手の喉をかききっている。
凄まじいのは、アウデリアだ。
その腰にさした戦斧を抜きもせず、拳ふるう。兜など意に介さない。
そして、兜の凹み具合から、頭蓋も無事であろうわけがない。
蹴り飛ばす。敵兵の体がふたつに折れる。
背中から、折れた相手が、生きているはずもなく。
頭を鷲掴みにして投げ飛ばす。首が90殿折れた体が痙攣をはじめた。
ひとりの兵が、バランの首を後ろから締め上げた。異相ではあるが、小柄な女性であるバランを人質にしようと思ったのだろう。
だが。バランは、兵士の腕にかみついた。革製ではあるが、篭手をつけていた。女の子にかまれたからと言っていったいなにほどのことが。
バランは、邪神ヴァルゴールの12使徒だった。
バランの顎が動いた。悲鳴をあげた兵士が、手をはなした。、
二の腕の肉がごっそりと削り取られた。
くちゃ。くちゃ。くちゃ。血まみれのバランの口からもれるのは咀嚼音。
「喰ってる!」
兵士の誰かが呻いた。
「喰ってるぞ・・・こいつは。」
「わたしは、12使徒バラン。」
戦場には悲鳴とパニックが駆け巡る。
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