第二十二話 柿太郎様、お待ちしてましたわ!
ピンポーン
「あいよー。入れよー。」
「おじゃましまーす!」
「え、そんなズカズカ入って良いの?あ、お邪魔しまーす。」
決戦の次の日の朝、家に雛乃進と枝里花がやってきた。
「俺はチャイムすらいらねーって言ってんだけどそこはケジメだからって押してくんだよ。」
「ほら、こんなだから。」
「不用心ねー。」
「おや、今日は女性のお客さんも来とるのか。柿太郎、ちゃんともてなさんかい。」
じいちゃんがちょうど部屋に入ってきた。
「おじいさん!わわ、初めまして!お邪魔してます!猿藤枝里花と申します。」
どうやら昨日の一件依頼、開き直って猿藤を名乗るようになったらしい。
「ゆっくりして行くと良い。おや、猿藤って言ったら良い所のお嬢さんじゃないのかい?こんな小汚い家に招いて申し訳ないね。」
「いえいえ、そんな大した家柄じゃないですし、一応どっかに護衛が隠れてるので。」
パチン!
「お呼びで。」
「おー。我が家に忍者が隠れとった。不用心じゃのー。」
枝里花が指を鳴らすと槍梨が出てくるシステムらしい。
「かっちょいい!おっさん、俺もしたい!」
「それは残念だができぬ。お主が猿藤家に婿に来るなら話は別だが。」
「な、何言ってんのよ!アホ護衛!」
早速、槍梨は頭を叩かれている。
「今日おっさんもついて来んのか?」
「拙者、昨日も言ったように野暮な内容には首を突っ込まん。存分にお楽しみくだされ!」
「おぉ、柿太郎の子守りについて行ってくださるんですか。いやはや、ありがたや。」
「誰の子守りだよ!もう行ってくるから!」
これ以上じいちゃんに何か言われたらたまったもんじゃないし、俺の支度が出来たので出発する事にした。
「人様に迷惑をかけんようになー!」
…
「しっかりしたおじいさんね!若々しくて良いじゃない!」
「ちょっとうっせぇのが難点なんだよ。嫌いじゃねぇんだけどな。」
「あぁ見えて心配性なんだよ!柿太郎が鬼怒にやられた時とか牢屋に閉じ込められた話をした時はソワソワしてて気が気じゃなかったみたい!」
枝里花がじいちゃんの話を聞きたがるが小っ恥ずかしいので遮って俺達は鬼ヶ島高校へ向かった。
…
「よくぞ来た!皆の衆!さぁ入るが良い!」
紅蓮が盛大に出迎えてくれる。雛乃進は紅蓮がお気に入りのようで頭を撫でていた。
「紅蓮ちゃん、今日も元気だね!」
「うむ!くるしゅうないぞ!さぁさ、上がれ上がれ!」
階段を上がりながら紅蓮に尋ねた。
「桃子はまだ寝てんのか?」
「十中八九寝とる。起きてても寝起きでろくな会話は出来んじゃろう。悪いが30分くらい待ってくれぬか?」
なるほど、ゴーイングマイウェイ。さすが桃子らしいというかなんというか。
ガチャ…
「姉ちゃん、客人が参ったぞ!起きるが良い!」
「あら、紅蓮。もう起きてるわよ。」
「なぬーーーーーーーーー?!」
桃子は既に起きて着替えてるし、紅蓮はこれでもかというくらい驚いている。
「姉ちゃん、昨日変な物でも食ったか??」
「何言ってるの?もう紅蓮ったら変な子!」
桃子が紅蓮の頭をぐりぐりしてる。変な事を言われないよう攻撃しているようだ。
「柿太郎様、お待ちしてましたわ!さぁどちらへ向かいましょう?」
「んー?その言葉遣いどうした?それに目の下のクマも。」
ギクッ
「べ、別に昨日と何も変わりませんわ!おほほ!」
どう見てもおかしい桃子だが、原因は割とすぐに判明した。
「ん?"ドキドキ学園!憧れのイケメンと恋に落ちるまでの3日間"?何だこりゃ。少女漫画か?」
「それは姉ちゃんに言われて昨日買いに行った漫画じゃ。10巻以上あったのにもう全部封を開けて読まれとるのう。」
「やめてくれー!!」
桃子が顔を真っ赤にしている。
「あーこれ面白いわよね。私も読んだわ!確か世間知らずのお嬢様が転校してきたイケメンと結ばれるまでの3日を描いてるの。」
「転校して3日で結ばれるとか超スピーディーだな!」
「まぁ漫画だしねー、ってあれ?つまりこれを徹夜して読んだ挙句、今日も着替えて待ってるって事は…漫画で今日のデートの予習をしてたって事?主人公お嬢様だし…。」
「あーん!もう!それ以上詮索したら暴れてやるー!」
流石に桃子が暴れたら学校がなくなるだけでは済みそうにないので枝里花を止める事にした。
…
「ぐすん。」
「そう泣くなよ!今日楽しませようとしてくれたんだろ?ありがとよ!桃子の行きたいとこならどこへでも行ってやるからもう泣きやめよ!な!」
「…どこでも?じゃあ遊園地!」
想定してなかった返事が返ってきた。
「今日日帰りで行ける遊園地って言ったらスペースシティくらいかな?」
雛乃進が提案すると枝里花も乗り気だった。
「良いわね!賛成!」
「よし、そうと決まればさっさと行っちまうか!紅蓮も来るか?」
俺はせかせか家事をしている紅蓮に話しかけた。
「うむ、行きたいのは山々じゃがアタイはやる事がたくさんあるでな!楽しんでくるが良い!」
「そんなの帰ったら手伝うから一緒に行こうよ!」
「そうよそうよ!」
皆もしきりに紅蓮を誘いだす。
「いらっしゃい、紅蓮。あんたもたまには休みなさい。」
「じゃあ姉ちゃんがそう言うなら…」
無事、紅蓮を誘う事にも成功し5人で遊園地へ向かう事になった。
たまには皆で楽しむのも悪くないだろう。
俺達は鬼ヶ島高校を後にした。
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