第十三話 鋏屋君、あとは頼んだよ!
「え?そんな明日お前んち行くわ!みたいなノリで言っちゃったの?」
びっくりしすぎて隊長様の発言をつい遮ってしまった。
「言っちゃったね。もっとかっこいい文面にした方が良かったかな?って少し後悔してるよ。」
桃山は悪びれた素振りも見せずあっけらかんと言ってのけた。
「でも時期尚早とは思ってないよ。戦力も揃ったし、1ヶ月の修練も積んだ。十分勝てると見込んだ上で勝負に挑んだつもりだ。そこで今日は配置について話をしたいと思う。」
桃山の話を要約するとこうだ。
鬼ヶ島は全部で4隊。鬼ヶ島高校の校内に入るには北門、南門、西門、東門の4ヶ所があるがそれぞれを各隊が守っているだろう。
中でもメインの校門である南門、ここは門も広く多くの人数がなだれ込む事ができる為攻めやすいと判断。
相手ももちろんここに人数を割くだろうから人数の多い白鬼隊がここを守ると考える。
ここに当てたいのが1番隊だ。敵が多く待ち構えている所に栗田の砲丸をエンドレスでぶち込みたい。
続いて真裏の門である北門。南門の次に広い門である。ここに来るのは2番目に隊員の多い赤鬼隊だろう。実質的トップの紅蓮が率いることから相当手強い相手になるので、ここの突破は避けたい。
桃山率いる2番隊が責任を持ってここを抑えると宣言した。
続いて教師の出勤用の門である西門と、ほとんど使用されていない東門。ここはどちらも広くなく西門はギリギリ車が通れる程度で、東門に関しては人1人通れる程度。
ここのどちらかが黒鬼隊と青鬼隊だろう。全く見当がつかないがここに3番隊と4番隊を当てなければならない。
3番隊は20名近くいる。その人数が狭い門で戦った所で1人ずつ倒されておしまいだ。
と言う訳で消去法で西門が3番隊、東門が4番隊と決まった。
桃山が言うには、向こうの四人の中では1番目立たない青鬼が突破しやすいとの事。個人的には鬼怒の野郎をぶち回してやりたいが、ここは集団戦だ。どちらが来ても存分に戦ってやる。
3番目のトレイターである槍無さん情報によると、ある程度向こうのトレイターの能力もわかってきたようだ。
最大戦力の紅蓮は腕力強化。メインの戦闘になりそうな白鬼は瞬発力強化。黒鬼と鬼怒は共に脚力強化。青鬼は爪力強化のようだ。
「では当日は朝6時に集合!その後鬼ヶ島への討伐へ向かう!最後の1週間は各自最終調整、1番の目的は各々が絶対に死なない事だ!」
「では解散!」
一般隊員達の士気も高い。桃山の統率力の高さが伺える光景だ。
「あ、姫っち。やっほー。3番隊はどんな感じ?」
「どんなもこんなもない、不安だらけよ。銀女の最高戦力がいないんだもん。まぁ不安ばかり言っても仕方ないしやってやるわ。」
漆野は枝里花が同じ隊の仲間になってくれるものだと思っていたようで、いささか不安なようだ。
「守りは任せなさい!その代わりダッシュで鬼の頭を取ってきてよね。それこそ黒鬼が相手になってしまったら長く持たない自信があるわ。」
「あいつらの性格的に女には手をあげないような気がするが…いや別の意味で女子は危ねぇな。」
真希ちゃんの一例が脳裏に過ぎる。
「任せて姫っち!私も強くなってるし、柿太郎との相性がすこぶる良いの。結構良い感じで戦えそうだから期待しててね!」
「あなた達ほんと仲が良いわね。鉄の掟が無かったら付き合ってそうなくらいに。」
もし付き合ってたとしても黙っててあげるわと言わんばかりの発言をしてくる。俺達はそんなんじゃ…
「わ、私達はそんなんじゃないよ!もうやだなぁ姫っち!」
先を越されて否定されてしまった。これはこれで悲しい。
「振られちゃったね!柿太郎!」
雛乃進が近寄ってくる。こいつは俺が悲しんだ時の察知能力が異常に高い。
ただし慰めてくれるのではなく、からかいに来てるのが8割なので無視する事にしてる。
まぁなんであれ、全ては来週だ。来週の決戦が終われば晴れて自由の身だ。鉄の掟も、トレイター協会の派閥も、何より鬼ヶ島のやつらともサヨナラだ。
…
…そして、決戦当日。
装束を身にまとった俺達は南門付近に到着した。
到着したのも束の間、栗田の砲撃を合図に討ち入りを開始したのだった。
「1番隊!出動じゃー!!」
八助と補佐2人が先陣を切って前衛としての役割を果たしに行く。
補佐2人は柔道部のガタイが良い奴らで掴んだ相手は離さない。投げきれない強い相手は八助が噛み付いて補佐していく流れのようだ。
雛乃進は栗田の砲丸を用意しながら戦況をしっかり見ている。何やらマイクで話しているので八助達に指示を出しているのだろう。
栗田は楽しそうに砲丸を投げている。あんなに楽しそうな栗田は初めて見た。
砲丸が次々着弾するのを見て全隊はそれぞれの校門へ分散した。
「鋏屋君、あとは頼んだよ!突破は1番隊と4番隊にかかっている!」
木刀を片手に桃山が激励を飛ばしてくる。
「任せとけよ!俺を誰だと思ってんだ!」
短い会話の後に俺達は東門へと向かった。
「準備はいいね?柿太郎。」
「あぁもちろんだ。枝里花もしんどかったらすぐ俺んとこ来いよ!」
「ん!頼りにしてる!」
「後方には僕もいるからなぁ!なにかあったら連絡してやるから安心して戦うといいぞ!」
忘れていた野々山の存在に気がついた。
1番隊とは違い俺達は更に超少数部隊。野々山を隊長として俺達2人の計3人だけ。つまり実質2人だ。
一応背後を取られた時だけ教えてくれとは伝えているが、俺達が背後を取られる事はそうそう無い。
無傷で立っててくれたら何よりだ。
そんな事を考えていたら東門の付近までたどり着いた。
「…お?なんだ柿太郎じゃねぇか。」
東門の前で座ってる2人組の男が声をかけてきた。
「お前は…鬼怒!!」
「お前も討伐隊に入ったのか。で、わざわざ俺達の所に?ククッ本当に運がない奴だなぁ!!」
4番隊と黒鬼軍の戦いの火蓋が切って落とされた。
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