第4話
彼女の心は、無事戻ったらしい。
とはいえ、さすがに会いに行くことはできなかった。同僚には色々言われたが、結局、彼女を置き去りにしてひとりで漂流したのは事実。今更、会いに行くだけの心の準備がなかった。
哨戒班から、むだに彼女の情報が送られるようになった。しかし、彼女の感情そのものは化物に狙われる代物なので、情報を無視するわけにもいかない。
彼女に会う心の準備もないまま、彼女を守る日々。
まず、彼女がこの街にいたというだけで、ちょっとびっくりしてたのに。そのびっくりを持続させるだけの余裕がない。哨戒班から、情報の更新。
「あ?」
彼女が。
化物を殺した。
ひとりで。
いま、哨戒班のひとりが上との接触を彼女に求められているらしい。意味が分からない。彼女が。化物を。殺した?
通信。
『お前の彼女。組織に入りたいってさ』
彼女。彼女なら、それぐらいやるだろうか。
いや。
「そんなわけがあるか。形のないものを追いかけるのが好きな、ほんわかした女だぞ」
そんなわけが。
『お前、何年前の女の話をしてるんだ。いま通信を繋いでる女は、ずいぶんとお前に似てるぞ』
そんなわけない。
「そんなわけがあるか」
『女の勘だけどな。この女。失った感情を、お前を想うことで取り戻そうとしたんだな。たぶん』
自分を想う。
『それで、お前みたいな考え方をする、お前みたいな感情の女が出来上がったってわけだ』
残念なことに。通信先の女の勘は、外れたことがない。
『さぁ。どうする。煮るも焼くもお前次第だよ』
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