創造された?


「ちょっとまってユウ、僕らが、創造された?」


「どういう事まう?」


「あー、創造っていうと語弊があるな」


「どういうことでありますか?」


「そもそも創造魔法って、本当に作ってるのかな」


「もしかしてユウさんは、『創造魔法』は無から有を作り出しているんじゃなくて、外から持ち込んでいるって言いたいでありますか?」


 頭の上からプシューと湯気を出して答えるエミリンに俺はうなずいた。


「うん、エミリンの言う通りだ。創造魔法はモノを造り出しているんじゃなくて、世界の何処どこかから切り取って持ってきているんじゃないかってね」


「なるほど、ユウのそれは面白い仮説だね。僕らはこの世界の何者かに、創造魔法を使って連れてこられた。そう言うことだね?」


「そんな感じかな? どういう働きでそうなったのかはさっぱりだけど」


「じゃあ、その創造魔法をゲームの中で使ったら、ゲームに戻れるまう?」


「って事になるね」


「……ユウ、もしその創造魔法を現実の世界で使ったら、どうなるんだろうね」


 うん?

 なんかママがすっごい怖い顔をしている。


 俺なんか変なこといったかな……。


「えっと、それはもちろん――」


 現実世界に俺たちのアバターが……あっ!


「現実の世界で、俺たちはアバターの姿で生まれ変わる?」


「そういうことになるかも知れない。ユウ、これって危険なことだよ」


「楽しそーまう!」

「マウマウ殿、二度と人間に戻ることが出来ないのでありますよ!」

「う、そーなったら困っちゃうまう?」

「メシとか、寿命とかどうなるんだろうな?」


「ユウ、それどころじゃないよ! もし、創造魔法が君のいう理屈で動いていて、それをエネルケイアの奴らが手に入れたとしたら……!」


「――ッ! ノトスの町で起きたことが、現実の世界でも起きるってことか?」


「そうなるね。アバターは『クロス・ワールド』に由来する超人的な能力を持ってる。そしてエネルケイアはW1stワールドファースト勢だ。僕らよりも能力が高いと見ていい」


「ゲームガチ勢が現実に現れて現実で好き勝手な事をはじめたら、どうなるかわからないな……」


「ゲームのキャラが現実の軍隊と戦ったらどうなるんだろうね。ゲームのキャラには不可視やテレポートなんていう、核平気とは別の恐ろしさがあるからね……」


「あ、そっか。クロス・ワールドのアサシンやメイジが現実に現れることになるのか。それってやばない?」


「ヤバイと思うよ。クロスワールドのジョブの一つの「アサシン」は、姿を消して長距離移動するスキルがあるし。ほかにも魔法使いはゲートを開いてたくさんの人間を別の場所に移送することが出来る。うん……すっごい戦争向きだね」


「止めないといけないであります!」

「絶対止めるまう!」


「うん、絶対に止めないといけない。素早く行動しよう」


「行動するのは良いけど、具体的にはこれからどうするんだい?」


「まずは研究者のもとに向かおうと思う。きっとエネルケイアもそこに来る」


「――そうか! エネルケイアは創造魔法を求めているからね」


「そういうこと、連中も俺たちと同じところを目指すはずだ」


 エネルケイアと俺たちの行動はかなり似通うはずだ。

 お互いの目的に創造魔法が深く関わるからな。


「デュナミスのメンバーは半分くらい欠けてるけど、彼らを待つかい?」


「いや、今行ける人だけで行こう。クランの掲示板にこれからやることを書き残して、今現実世界で調査室の応対をしている人には、屋敷で待機してもらうよ」


「そうだね。何かの用事でトリオンさんが屋敷に来るかも知れない。屋敷で留守番するメンバーも必要だね」


「あ、そっか……別れ際にトリオンさんは俺たちのことを研究者に取り次ぐって言ってたんだっけ。――待たずに直接行っちゃうか」


「それが良いと思う。一刻を争う事態だからね」


「よし、やるか!」


「じゃあ、皆に伝えてくるよ」


「ありがとうママ」


 ママは長い口の端を上げて返事とする。

 彼はこういう根回しの時、本当に頼りになるなぁ……。


「おでかけまう?」


「うん、お出かけだ。この世界と、そして創造魔法について、もっと知ろう」


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