第3話

 三日目。眠りから目が覚める。ちょっと気分が悪いが、まぁしょうがない。現在かなりのストレス下にあるのだ。体調も悪くなることもあるだろう。


 それもこれも順調に行けば今日にでも救助エリアに到着するはずだ。通信装置を使って今日も会話を交わす。


「よぉ。調子はどうだ?」


 通信士からの問い。もう耳にタコが出来るぐらい聞いた。


「少し気分が悪いぐらいだが……まぁ状況が状況だからな」

「そうか。帰ったら検疫が待ってる。それまで頑張ってくれ」

「あぁ。そうするよ。ところでメイジャンは居るか? お前さんと話すのも悪くはないが、やっぱり恋人と話がしたい」

「あぁ。変わる。待ってくれ」


 それからすぐにメイジャンが出た。


「あぁ。ジェイク。気分は大丈夫? あまり良くないって聞いたけど?」

「あぁ。ちょっと気分がすぐれないだけだ。帰って熱いシャワーを浴びて、ゆっくり眠りたいよ」

「えぇ。そうね。そうすればきっと良くなるわよね?」

「あぁ」


 その後も会話をしていたが、そろそろ救助エリアだ。


「メイジャン。それじゃあ、また後で。船で会おう」

「えぇ。また後で」


 そう言って通信が途切れた。


 それから歩くこと少し。


 とうとう座標の示す場所へと到着した。


 しかしそこには救助艇の姿はない。それどころか座標の地点に人間が一人倒れているのが見える。


 俺は静かに倒れている人間へと近づいていく。遠目に見える宇宙服はオレンジ色で俺が着ているのと同じ型だ。


 ということは知り合いである可能性がある。いや。でも……


 アーフゼロの乗員で俺以外に行方不明だという話はなかった。少なくても俺は知らない。


「誰だあれ? 救助艇はどこだ?」


 異常事態が起きているようだ。俺の呼吸が荒くなる。人の居ないはずの惑星に未知の死体らしきモノが転がっているのだ。どう考えてもおかしい。


 心拍数が跳ね上がっているのが分かる。目眩がする。俺の目に見えてるのは現実か?


 俺は倒れてる宇宙服に近づく。嫌な予感がする。俺はこれを見てはいけない気がする。これを見たらもう引き返せない気がする。でも、見ずには居られない。お前は誰だ!


 俺は倒れている遭難者の宇宙服のバイザーを上げるボタンを押した。


 すると、そこには……


 俺が居た。


 俺が、死んでいるのだ。


「嘘だ……」


 嘘だ嘘だ嘘だ!


「うわぁああああああ!」


 俺は悲鳴を上げていた。何で俺が居る。俺が死んでる。俺が!


 そこに突然「動くな!」と命令が下された。俺が恐る恐る振り返ると、そこには銃を持ったオレンジ色の宇宙服を着た人達が立っていた。


 そして彼らが俺に対して誰何する。


「お前は誰だ?」


 俺は首を左右に振って答える。


「俺は……俺はジェイクだ! アーフ113のパイロットで。地球には家族が居て、アーフゼロの船内にはメイジャンという恋人が居て!」


 すると銃を持った仲間の一人が言った。


「では、その木の根元で死んでいる人物は誰だ?」

「……し、知らない」

「嘘だな。メイジャン」


 メイジャンが俺を避けるように迂回して木の根元の死体に駆け寄った。その手には遺伝子を調べる検査キットが握られている。


 そしてメイジャンが検査結果を口に出して言った。


「ジェイクです。救難信号も彼の物で間違いありません!」


 俺は、その情報を聞いて混乱は極みに達する。じゃあ、俺は一体……誰なんだ……

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