第4話 女騎士団長のクセ強アピールのせいで「瞑想」出来ない

//SE 遠くで鳥の声。そして、水のせせらぎ。魔力が高まる音がする。


「おい、お前。何故無視をする」


「瞑想の時間だから? 知らんな。お前が一人になる時間がここしかなかったのだ。お前が悪い」


「最近、ずっとお前の周りには人がいる。お前が認められてきたからだから、それはいい。だが、なんだ……その、モテすぎではないか」


「団員たちにもお前の努力と、その頭脳が認められてきて皆に好かれているのはかまわん。団長としても、お前を想う者としても誇らしい限りだ。だが、この前、姫様とも随分と親し気に話をしていたではないか」


「前の職場の関係で? そんなの分かっている。お前の過去は出来るだけ調べげふんげふん。……そ、そうかー、まえのしょくばのかんけいかー。だけどー、そのー、なんだー、お前はー、その」


「ああいう可愛らしい女性が好みなのか?」


「姫様は美しく可愛らしい。国一番といっても良いだろう。だから、その、お前も楽しそうに話をしていたし、その、かわいいし、皆も絵になると……その、かわいいし……」


「聞いているのか? いないのか? 瞑想、しているだけなのか……?」


「ぐす……ど、どうせ私はフリルのついたヒラヒラでフワフワのドレスなど似合わんさ」


「着てみたんだ、この前。でも、わたし、吊り目だし、肩幅広いし、骨ばってるし……」


「オークよりも力があるし、オーガくらい骨が硬いし……オークよりもオーガよりも誰よりもお前を想っているというのに……スライムくらいぷにぷにでツルツルになりたかった……!」


「スライムよりつよいのに……! スライムより強いのに……!」


「ぐす」


//SE 小さく鼻を啜る音


「すん……少しでも、きみにわたしを見てもらいたいから、着てみたのに……似合ってなくて……」


「わたしは、どうしたら、きみに想ってもらえるのかなあ……」


「!!! ど、どうした……? 急に……『瞑想出来ない』? ご、ごめ……って」


「どうした? 顔が、真っ赤だぞ……」


「え? もしかして……え? もしかして、え? 照れたのか? 意識したのか? 私が隣にいて集中出来なかったのか? え? え? え? どうなのだ? なあ、なあ、なあ?」


「くくく……そうかそうか。いや、皆まで言うな。そうだ、そうだった。『私は私』なのだったな……自分を見失ってはいけない、だよね」


「なんでもない。邪魔したな。だが、お前の今の身体ではそれ以上の魔力は厳しいだろう……無理はするなよ。でも、」


「かっこいいお前はすきだぞっ……!」


//SE 遠ざかっていく足音

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る