俺はAV女優、鏡シュラが好きだ 〜そして、解放されるもの〜

 ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピ……


 聞き慣れなたアラームで俺は目を覚ました。

 午前6時。カーテンの隙間から差す眩い光。

 朝だ。……朝……?


 ガバッと飛び起きた俺は周りを見回した。

 寝る前にセッティングした鏡シュラグッズ。

 いつも通りのテレビとテレビ台。PS4。

 先輩のDVDがない!

 そうだ……そんなもの、最初からありはしない!

 それは「夢」だ!

 俺は、鏡シュラを抱く夢ではなく、鏡シュラのDVDで抜く夢を見ていたのだ!


 準備は完璧だった。

 ハウトゥーも真実だった。

 手順も問題なかった。


 だが、神が童貞に用意したのは「女を抱く夢」ではなく、「DVD」だった。


 ふはは、ふははははは……


 意図せず笑いが込み上げてきた。

 考えて見れば当たり前だ。

 女を抱いたことのない童貞が、リアルに女を抱く夢など見られるわけがなかったのだ。

 なのに俺は、希望を抱き、期待に胸を膨らませ、散々リソースを割いていそいそと準備して……。

 涙が溢れてきた。

 股間を確かめるとしっかり夢精している。

 それが我ながら可笑しくて、俺は泣きながら笑った。

 布団の傍らには俺が寝る前に握っていた写真。天使のように俺に笑いかける彼女。

 悲しくてやがて可笑しい、こんな朝を迎えるなんて!

 俺は、俺と鏡シュラとの関係はビジネスライクでいい、ビジネスライクだからいいと言いながら、心の奥底でそれ以上を望んでしまった。

 そんな身の程知らずな望みに対するこれが報いだというのか?

 童貞は、女を抱くことを夢にみることさえ許されないのか?


 あんまりじゃないか?


 あんまりじゃないか?


 それが正義だというなら


 それが真実だというなら


「正義も、真実もいらん!!!」


 天井に向かって叫んだ俺は涙を拭い、パンツを洗濯機に放り込み、シャワーを浴びて着替えると、立ち漕ぎでガストに向かいトンカツ定食大盛りを食べた。


*** 了 ***

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俺はAV女優、鏡シュラが好きだ 木船田ヒロマル @hiromaru712

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