第51話 東京デ、、いやネズミの国(隼人視点)

「これが夢の国なんだな!」


 東京に住んでるのに、全く来たことが無かった。いや、むしろ東京に住んでたから来なかったのかもしれない。父親も母親もネズミの国に行くなら、泊まりでも行ったら良いと思う方だった。


「凄いよ、ここ……」


 ちさきが目を輝かせている。入口で腕にスタンプをつけてくれた。ハンドスタンプと言ってこれで再入場できるらしい。


 入口から目の前に見えるのが、シンデレラ城だ。


「ありがとうな、俺たちに合わせてくれてよ」


「いえ、私たちこそ、ありがとう。行こうって言われなかったら、きっと来なかったと思う」


 俺もその点は同意だ。親の影響かネズミの国を大きな遊園地くらいしか見てなかった。


「えっ、もしかして隼人もちさきもネズミの国来たの初めて?」


 真香の声に俺たちが頷くと、驚いた顔をした。


「嘘、東京に住んでてそれは国宝級に珍しいよ」


「俺もちさきの両親も山登りや旅行はよくしたけど、ネズミの国は高い割には面白くないと言って来なかったから……」


「夢ないんだね」


 確かに夢がないな、と思う。この世界の中では、おとぎの国のキャラクターにコスプレをしてる人などもいるが違和感がない。


「うわっ、見て……見て……ネズミの国の主人公がいるよ、あっちはほら……ヒロインに……、あれは怖いモンスター!」


 ちさきは嬉しそうに笑う。


「ね、一緒にカメラ撮りませんかって? みんな行こうよ!」


 俺たち4人はネズミの国のキャラクターと一緒に写真を撮った。ちさきは握手をしてる。


 そういや、YouTubeにこの着ぐるみのキャラクターは、もし体調不良で倒れてもそのままの格好で運ばれていくと言われていた。


 それも仕方がないかな、と思ってしまうくらいにこの世界は夢が集約されていた。パークにはずっと音楽が流れている。昔、旅行で行ったアメリカ映画をモチーフにしたテーマパークと明らかに違う。派手なアトラクションは少なく、女の子や子供向けのゆったりしたアトラクションがメインだった。


「これ乗ろうよ、これ……」


 クマのキャラクターをモチーフにした乗り物に乗ろうと並ぶ。並んでみて分かってが、2時間待ちなど当たり前だ。


「ここに来たら別れると言うジンクスってもしかして……」


「あー、それね。いっつも混んでるから、初デートとかで来たら最悪だよね」


 真香がしたり顔で言う。そうか、確かに相手のことも知らない時に来たらギクシャクしてしまいかねないな。


「うわー、クマのキャラ可愛いよ」


 ちさきは森のクマさんを歌いながら、嬉しそうに待っていた。森のクマさんではないと思うが……。それにしても、何故クマさんはお逃げないさいと言ったんだろう、とどうでも良いことを考えてしまう。


「本当に森の中でクマさんに出会ったら、やばいらしいな」


「隼人! そんな夢のない話はしない」


 でもよ、後ろからクマが追いかけてくるって死亡フラグじゃねえか。


「まあ、そうだよな。森でヒグマにあったら本気でやばいぜ」


「だからぁ、それは分かってるよ。この歌は一緒に歌って踊れるクマさんのお話だから一緒にしないの!」


 うーん、どうだろうな。そんなことを言いながら待ってると俺たちの番になった。


「うわ、可愛い。凄い……」


 ちさきと真香はこのアトラクションに夢中だ。


「拓也どう思うよ」


「うーん、2時間待ってこれかって」


 俺の本音と一緒だな。やはりここは夢の国なんだよな。そうじゃなければ、こんな平凡なアトラクションに2時間も並ばない……。


「楽しかったね」


「本当、最高だよ。来て良かったね」


 テンションマックスな女性陣とこのアトラクションに二時間かと思ってる俺と拓也。分かりやすい構図だ。


「ご飯食べようか……」


「そうだな」


 ここの食事スタイルはどの店も混んでるので、ポップコーンやハンバーガーを買ってどこかで食べるのが一般的だ。


「うわっ、昼のパレードだよ」


 俺たちはハンバーガーを買って、昼のパレードを見るために椅子に座った。


 パークのキャラクターが音楽に合わせて踊りながら、通り過ぎていく。確かにこれは来たかいがあるな。


 その後、何個かアトラクションを回ってると拓也がここからは別行動しようや、と言い出した。まあ、俺もちさきとふたりきりでいたいな。


「もう、7時なんだね。なんか時間が経つのも忘れちゃうよ。ずっといたいな」


 奇跡的にハンバーガーショップで座れたのでパレードまで時間を潰している。ちさきは終始嬉しそうだった。


「そうだ。隼人いつもありがとう。これからも末長くよろしくお願いします」


 ちさきは嬉しそうに俺の肩にもたれてきた。


「俺の方こそ、いつもありがとな」


 その時、パーク全体にネズミの主人公の声が響き渡った。


「夜空を見上げてごらん!」


「えっ、なになに……」


 空を見上げると……そこには……。


「うわっ、花火だよ。うわいくつも打ち上がってくる」


 綺麗だ。夜空に向かって打ち上がる花火。決して、派手ではない。数発の花火が打ち上げられ、夜空を彩った。


「綺麗だね……本当に来て良かった」


 タッタタターーン タカタターン タカタターン ターン タカタターン たん タカタタンタッカッタッタタターン♪


 Ladies and gentlemen, boys and girls.

 Tokyo MOUSE proudly presents our most spectacular pageant of night time dreams and fantasy in millions of sparkling lights and brilliant musical sounds.

 Tokyo MOUSE Electrical Parade Dreamlights.


 夜のパレードが始まった。エレクトリカルパレードと言う夜限定のパレードだ。


「綺麗、あの青い光は白雪姫!」


「あれは、ネズミの国の主人公だよ!」


 ちさきのテンションはマックスだ。たくさんのスタッフが道に立ちアトラクションを誘導してるのが見える。観客はみんな手拍子をしている。


「光と闇のパレードだな」


 軽快なリズムと暗闇に広がる美しい青や黄色の光。テレビで見たことはあったが、目の前で見ると確かに感動する。


 俺はちさきの肩を抱いた。


「好きだよ」


「うんっ!」


 この光の国では、アラフォー女子などは登場しない。この瞬間が永遠に続けばいいのに……。


 明日から学校が始まる。夢の世界は今日までだ。


「ちさき、結婚しよう!」


「ちょっと気が早いってば」


 ちさきはそう言いながら嬉しそうに俺を見た。


「でも、婚約ならしたいな」


「じゃあ、約束。将来結婚してください!」


「はい!」


 そうして夢の国の夜はふけて行った。




――――――――




 ここから先、時間が飛びます。ラストまで後少しです。応援よろしくお願いしますね。


 ラストに登場する英語は、ほぼ東京ディズニーランドエレクトリカルパレードの台詞です。


 権利関係などで少し変えてますが、カクヨム様、問題がありましたら言ってください。変更いたします。

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