第48話 真香を探して(隼人視点→真香視点)
(隼人視点)
拓也に連絡して、家に来てもらった。今回ばかりは、本当にやばい。真香に早く伝えないと。
「思い当たるところ、無いかな?」
「ここに来るまでに思い当たるところは全部当たった……」
拓也は悔しそうに歯を噛み締めた。ちさきが心配そうにこちらを見る。
「大丈夫だよね。考えてないよね……あの……」
「分かってる!」
俺が追い込んでしまった。確かに真香が一方的に悪いのは事実だ。それでもこの方法はダメだったのかもしれない。
「とりあえず、手分けして探そう。ちさきはここで待っててくれる。LINEで真香に呼びかけて欲しい」
「分かった……ごめんね」
「何言ってるんだよ。ちさきは司令塔になって欲しい」
俺と拓也は家を出て探す。俺は俺の知ってるところを拓也は拓也の知ってるところを……。
ちさき経由で父親からも連絡してもらっていた。
「駄目だよ、何回かけても出ない」
位置情報も確認してもらったが、携帯が切れているため、分からない。
もう、自分で追い込んでおいてこんなことあるかよ。
自殺の2文字が頭に浮かぶ。それでは俺たちの関係どころか、全てが駄目になる。
どこにいるんだ。過去の記憶と真香の行きそうな場所を手当たり次第に探す。
「トルルル、トルルル」
「どうした、ちさき……」
「なんかね。電車が人身事故で遅れてるって……」
「どこだ!!」
「新小岩……」
「分かった。すぐ行く!!」
新小岩は総武線で千葉に行く途中にある駅だ。真香も通学に使ってる。そんなことあるわけないが。
神様頼む、お願いだから、俺たちをバラバラにしないでください。
苦しい時の神頼みだ。宮本武蔵のことを思い出す。
我、神仏を尊びて、神仏を頼らず。これは宮本武蔵の言葉で、神頼みする精神なら勝てないと言う精神状態を表している。
それでも俺は祈らずにはいられなかった。
俺は新小岩にタクシーで向かった。電車は人身事故で止まってる。
新小岩は騒然としていた。人がたくさん立ち往生している。俺は駅員の一人に話しかけた。
「あの、……人身事故ですが、被害のあったのは女子高生じゃないですよね!」
「どう言うことですか?」
「友達に連絡しても繋がらないんです。違いますよね!」
「ちょっと待ってくれ、調べてみるから……」
駅員は仲間に連絡していた。暫くして俺の方を向いた。
「大丈夫だ。被害者は……女子高生じゃあ……ない」
「良かったあ、本当に良かった」
「どんな娘なんだ。もし見ることがあったら連絡しようか」
「はい、この写真の娘です」
「分かった。人身事故で電車が動かないから、ここには来ないとは思うが、見たら連絡するよ」
俺は自分の連絡先を書いて、ちさきのスマホに連絡する。
「ちさき……、真香……じゃなかった」
「良かったよ……本当に……」
ちさきは暫く泣き止まなかった。
ちさきのスマホを切って、すぐ俺は拓也に連絡した。でも、拓也のスマホは繋がらなかった。
――――――
(真香視点)
「あーあ、全てが終わってしまったな」
わたしは家を出てトボトボと歩き出した。どこに行っても見つかってしまう。苦しい現実を聞かされるくらいなら……。
暫く歩いて、わたしは高層ビルに辿り着いた。
「このビルまだあったんだね」
子供の時に拓也とふたりで遊んだ高層ビルだ。数日で管理人に見つかって立ち入り禁止になったんだったね。
今なら昇っても誰も文句は言わない。わたしは高層ビルの屋上に向かった。
屋上の扉は閉まっていたが、その鍵の場所をわたしは知っていた。昔と変わらない。屋上に向かう24階のガスメーターのところに鍵が隠してあった。
「うわっ、このビル今だに落下防止柵もしてないんだ」
変わらないなあ、ここだけは。屋上に立って見渡すと心地よい風に包まれる。小さな柵はあるがこの柵を乗り越えてしまえば、その向こうは何もない。
「……死にたいな」
わたしは屋上から景色を見る。引き寄せられそうなほど高い。眼下に見える車がミニカーくらいに小さく見えた。わたしは意を決して柵を乗り越えた。
「うわっ、もう目の前は何もないよ……」
みんな、ごめんね。全てを失って……生きていけないよ。
でも怖い……、本当にここから落ちて良いのだろうか。他に道はないのだろうか。わたしは飛び降りようと一歩を踏み出した。
その時屋上の扉が開く音が聞こえた。
「……真香!!」
拓也の声だ。そうか、拓也はここを覚えてたんだね。
「拓也は来ちゃ駄目だよ。危ないから……」
「何を言ってるんだ。柵まで乗り越えて……」
「駄目だよ……わたし、もう限界……なんだ」
「そっちに行くからさ、ちょっと待ってて」
「駄目だよ、危ないから……」
「真香を助けるよ!」
拓也は柵を乗り越えた。
「危ないって!」
一歩進めば落ちてしまうくらい危うい場所。
「捕まえた!」
拓也がわたしを抱きしめる。
「ごめ、ごめん」
「もう離さないよ。絶対にね」
「ごめんなさい!!」
わたしは何も言わず、拓也と柵の向こう側へ戻った。さっきまで平気だったのに今は怖くて足が動かない。
「ごめん……もう、歩けない」
「じゃあ、これで」
わたしの身体が持ち上がる。これってお姫様抱っこ?
「どうですか? お姫様」
「そんなことしても、わたしにはもう何もないよ。全て失った。お嬢様でもないし、医者にもなれない」
「そんなことどうだっていいよ。俺は真香が好きなんだ」
その顔が眩しすぎて、わたしは何も言えなかった。
「俺じゃ駄目……かな」
「わたしで良いの。わたし酷い女よ。隼人を騙して、ちさきやあなたさえ騙した」
「いいよ、それだけ隼人のこと必死だったんだ」
目から雫が止まることなく溢れ出た。慌てて手で拭うが、止まらない。
「ごめ……」
「ほら、ハンカチ……」
「ごめ、本当にごめん」
「いいよ、それより隼人もちさきも心配してる。行こうよ」
「うん!」
――――――
この結末が良いのかどうかはわかりません。
後少し続きます。
⭐️とかよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
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