第45話 喫茶店と公園(隼人視点→真香視点)

(隼人視点)


 俺は真香を呼び出そうと考えた。ただ、呼び出しても来ない可能性が高い。


 真香は俺が怒ってることを充分分かってるだろう。


「ちさき、真香と話すと言ってはみたけど八方塞がりだよ」


 俺たちは真香の父親と話し合った後、母親と別れ、計画を練るためスターバックスに来ていた。


 フラペチーノを飲みながら、ちさきがそうだね、と相槌を打つ。


「真香ちゃんね、きっと自暴自棄になってるんだと思うんだ」


「自暴自棄か、確かにそうかもな」


 兄妹だと言った嘘に比べると、許嫁宣言はあまりにもずさんだった。俺が帰ってきたら、すぐに潰されてしまうような話だ。


「真香ちゃん、きっと追い詰められてると思うよ。隼人のことが好きすぎておかしくなってるんだよ」


 真香は嘘をつき、一度は俺と恋人になった。だからこそ、失いたくなかったのだ。でも、そのことで多くの人を傷つけてしまった。


「確かにそうかもしれないけれど、嘘で付き合うとか絶対間違ってるからさ」


「だよね。少し冷静に考える必要があるかもしれないよ」


 そうか。俺が真香を諭すのでは駄目なのだ。緩衝材となる人物が必要だ。それと、真香が今いるところも特定しないと……。


 俺はスマホを手に取った。もしかしたら、拓也なら真香を元に戻せるかもしれない。





――――――――


(真香視点)


 何をやってるんだろう。隼人を騙し、ちさきを騙し、お父さんまで騙した。お父さんからさっき隼人が話をしたいと言ってきた。何かあったのかと電話があった。


 全てが終わった。


 死にたいな。


 もう、何をしても隼人を手に入れることはできない。


 わたしが悪いことは間違いない。


 最初は出来心でついた嘘だった。簡単な気持ちでついた嘘をちさきは本当に真剣に捉えた。


 本当はすぐ嘘だと言うつもりだった。最初は冗談だったのだ。


 でも、うまく行きすぎた。


 わたしの告白に真剣に乗ってくれたちさき。だからこそ、それに甘えてしまった。


 そして、交通事故。


 何度も本当のことを言おうか悩んだ。でも言えば、きっと隼人はわたしに幻滅する。わたしは隼人と一緒にいたかった。


 だから、言えなかったのだ。


 もう全てが終わった。未来も何もない。


 お父さんもこんなわたしに呆れてるだろう。隼人を好きにならなければよかった。


「真香、ここにいたんだね」


 わたしが振り返ると拓也がいた。拓也は何も言わず隣のブランコに座った。


「ここ、子供の時によく来ていた公園だよね。決して大きくはないけど、俺もこの公園好きだよ」


 きっと拓也は隼人からわたしがしたこと全て聞いてるだろう。


「そういやさ、初めて俺が真香と会ったのもこの公園だよね」


 ニッコリと笑った拓也は夕陽に輝いて見えた。


「そう、だったかな……、忘れちゃった」


「そっか、真香は忘れたか……、実はね。俺、ちさきを好きになる前は、真香のことが気になってたんだよね」


「えっ!?」


 わたしは、初めて聞いた。拓也がわたしを好きだった。子供の時から隼人しか見てなかったから気づかなかったのだ。


「でもね。真香は隼人が好きだったから、諦めた。そんな時にちさきから話を持ちかけられたでしょ。真香のためになるなら、いいかなってね。そういう意味では俺も真香も同じなんだよね」


「そっ、そうなんだ。知らなかったよ」


「そりゃ知るはずないよね。言ってないんだからさ。ずっと、一生言うつもりなんかなかったんだよ」


 重い告白だった。きっと拓也はわたしがこうならなければ一生言うつもりなんかなかったのだろう。


「でね。本題なんだけども、いいかな」


 そうだ。拓也はきっと隼人に言われてきたのだ。隼人はわたしに怒ってる。きっと拓也もそれを伝えにきたのだろう。


「はい、覚悟はできてます」


「嘘はみんなを傷つけるんだ。俺も隼人もちさきも、真香のお父さんも、そして真香自身もね」


「……えっ……、わたしも?」


「一番傷ついてるだろ。わかるよ」


 拓也はこちらを向いてニッコリと笑った。


「今なら、まだ間に合う。俺たちは10年も幼馴染をやってきたんだ」


「もう、間に合わないよ。ちさきちゃんがわたしのせいで事故にあって、怪我をして、本当に、本当にわたし、馬鹿だ」


 拓也はゆっくりと首を左右に振る。


「電車で遅れて事故に遭ったとしても、それ電車のせいにするかな? ちさきが事故に遭ったのは真香のせいじゃないよ」


「でも、それでも!」


「分かってるよ。ずっと真香が苦しんでたことをさ。俺も同じ立場だったからね。半年間、俺も隼人に本当のことを言わなかった」


「そんなことないよ。だって、わたしはそれを利用して、あわよくば彼女の立場で!」


「でも、苦しかったでしょ。だから、一度もちさきに会うなと言わなかった」


「そっ、それは……」


「だからさ。謝りにいこうよ。隼人はね、真香から謝って欲しいって言ってるよ」


「でも、許されるわけないよ! こんなこと、わたし、許されるわけないよ!」


「だから言っただろ。それを決めるのは俺でも真香でもない」


 拓也はそこで一度話を切った。


「隼人だって、この場所知ってるんだよ。でも来なかったでしょ。その意味、分かってあげてよ」


「ごめんね。拓也、そしてありがとう。わたし隼人に会うよ」


 そうだ。許されるわけがないけど、最後の決着はつけなくちゃ駄目なんだ。




――――――――




この結末を読者様はどう思われるでしょうか?

許されるなんておかしい。


とか言われそう。


ただ、このお話始めた時、ちさきにあまりにも批判が集まりました。


ヒロインにヘイトが集まるのは作品としては駄目なんです。


だから敵を作りました。


おかげで、ちさきは救われました。


そのせめてもの償いです。


読んでいただきありがとうございます。


後数話で物語が終わりを迎えます。


最後はみんな幸せになって欲しい。

そう思っています。


ラスト数回ですが、応援よろしくお願いします。


星いただけたら、嬉しいです。

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