第41話 打ち上げ、お墓参り(隼人視点)
「それじゃあ、乾杯!」
優衣さん、俺とちさきは、ホテルのレストランにいた。もちろん俺とちさきはアイスコーヒーだし、優衣さんはノンアルコールビールだ。
「それにしても、ふたりが兄妹じゃなくて、ホッとしたわ」
「そんなに心配してくれてたのですか?」
「そりゃさ、従姉妹だけど、姉妹のいないわたしにとって、ちさきはたったひとりの妹みたいなもんだからね」
俺はアイスコーヒーをグッと飲んだ。
「おっ、いい飲みっぷりだねえ」
「ただのアイスコーヒーですし……」
「こう言うのは気分が大事なんだよ」
目の前には唐揚げ、餃子、焼きそば、コロッケ、そして気持ちばかりのサラダが置かれた。
「揚げ物ばかりじゃないですか。身体に悪いですよ」
「たまにはいいじゃん」
「まあ、そうですね。たまには、……いただきます」
レストランなのに頼んでるメニューが居酒屋みたいだよな。俺はそう思いながら、チラッとちさきを見た。
「でも、美味しいよ」
ちさきが満足なら、俺も嬉しい。
「でさ、エッチいつするの? 今日かな?」
実はこの旅行中にちさきとの仲を進展させたいと思ってきた。でもさ、そう言われると、まるでなんか強制されているようで嫌だった。
「知りませんよ!」
「おっ、しませんよ、じゃなくて知りませんだって。ちさきちゃん聞いた!」
「もう、やめてください。お姉ちゃんは、あまりにも軽率すぎます。わたし初めてなんですよ!」
「えと、それ生々しいよ。ちさきちゃん」
「ごめんなさい。ちょっと……」
「あっ、俺が悪いんだよ。あまりにもハッキリしないからさ。でも、そう言われると正直困ります」
優衣さんはそれを聞くと、ニコッと笑った。
「そうかー、まあそうだよね。お姉ちゃん言いすぎた。もう何も聞かないよ」
本当だろうか。俺には、と言う注記が入ってる気がした。どうせ、ちさきに根掘り葉掘り聞くことは間違い無いだろう。
「まあ、おめでたいよね。本当に良かったよ」
「ごめん、行く前から知ってたのに」
「それでも聞くだけと実際、書類見た時とは気持ちも違っただろ」
「まあ、それはそうだけどね」
ちさきはニッコリと笑う。本当に可愛いな。ちさきは、かけがえのない大切なものだ。俺はちさきと一歩ずつ歩んでいく。
「そうだ。お墓参り、まだだったよね? ご先祖様のところに行ってみる?」
「はい、ご報告しておこうと思います」
「ちさき、俺も一緒に行っていいよね」
「もちろんです。ご紹介も含めて行きたいです」
「じゃあ、ご飯食べたら、お墓参りだね」
――――――――――
お墓は少し開けた見渡しの良いところにあった。霊園墓地か。ずっと先までお墓が広がっていた。その向こうに寺務所があって、そこに花や線香が売られてるようで、何人かの人がそこに足を運んでいた。
「お墓はね、ここからまっすぐ行った三つ目だよ」
ちさきは毎年来てるのか、俺に場所を教えてくれた。
「大きなお墓だね。墓が三つもあるよ」
「うん、ご先祖の墓が二つとお爺さん、お婆さんがいつか入る墓だね」
そうか、生前にお墓を購入する人がいると聞いたことがある。ちさきの祖父母もそうなのだろう。お墓には花が生けられ、線香が焚かれていた。
優衣さんがお参りをして、ちさきがお参りをした後に、俺がお墓の前で手を合わせた。
「初めまして、ちさきちゃんの彼氏の隼人です。同じ日に生まれて、いつの間にか、ちさきちゃんを好きになり、そして付き合うことになりました。俺は絶対、ちさきちゃんを幸せにします。遠くから見守っていただけるように、よろしくお願いします。また、来ますね」
心の中でそれだけを言うと、俺はお墓の前を立った。
「長かったね。挨拶してたの?」
「はい、初めてでしたので……」
「ちさきちゃんとのことだよね」
「はい、絶対幸せにしますとお伝えしてきました」
「そっか。良かったね。ちさきちゃん」
「わたしからも言わせてくれますか?」
ちさきは真剣な目をして俺を見た。
「あっ、ああ……」
「隼人くんはわたしに一歩ずつ歩んで行こうと言ってくれました。それはわたしも同じ気持ちです。これから色んなことがあると思います。そのいついかなる時も一緒に助けあい、支え合っていきましょうね」
「うん、ありがとう」
そう、ちさきは支えられるだけじゃない。自分からも支えていきたいと言ってくれたのだ。
付き合うのは、片方の気持ちだけではどうにもならない。自分だけで乗り越えなくても、ちさきとなら一緒に乗り越えることができる。そんな気がした。
「頑張れ! ふたりとも!」
俺とちさきの肩に手を置いて、優衣さんが笑った。
「ちさきを泣かしたら、わたしが怒るからね」
「はい、大丈夫ですよ。浮気はしないから……」
「えらいよね」
「そんなお姉ちゃんこそ、ダメですよ。本当に見境ないんだからさ」
「だって、どの男も頼りなくてねえ」
「そんなこと言ってたら、いつの間にかおばあちゃんですよ!」
「本当、その言葉、最近思うわ」
俺たちは、笑い合った。こんな時がずっと続けばいいな、と俺は思った。
――――――――
読んでいただきありがとうございます。
あとは真香とのお話ですかね。
後やりたいことが一つあります。
みなさん、何卒、⭐️、応援よろしくお願いします。
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