第36話 ホームにて(隼人視点)
広島駅に着くと、大学生くらいの女の人がホームで待っていた。
「ちさき、よく来たね。それと彼氏くん初めましてだね」
「わしのことは無視かね」
「あはははは、おばあちゃんもお久しぶり」
それにしても胸がでかい。ちさきは清楚な服を好んで着るため、目立たないがそこそこのサイズなのは抱きしめると分かる。だが目の前の女子大生は規格外にでかかった。
「彼氏くん、そこガン見しない」
「えっ、あっ、……いや……見てないです」
「視線で分かるよ。本当、彼氏が見てるの彼女なら分かるよね。ねっ、ちさき……」
「ちょっとお姉ちゃん!!」
ちさきは恥ずかしそうに顔を赤らめた。確かに相手の顔ではなく、まず胸を見るのは明らかに反則だろう。それにしても、胸のラインがはっきりと分かるピッタリとしたシャツを着てるので、気になるんだよなあ。
「ごめんごめん。わたしは、ちさきの従姉妹の宮村優衣、広島の大学に通ってるニ回生だよ」
「お姉ちゃん、迎えに来てくれたんだ」
「可愛い妹が松葉杖と聞いて来ない姉がいると思う?」
「宮村さん、助かります。タクシー呼ぼうかと思ってましたから……」
「彼氏くん、そんな畏まらなくていいよ。わたしの名前は優衣だからね。優衣って呼んでくれていいからね」
「えと、彼氏くんと言うのは……、別に俺、ちさきの彼氏じゃ、まだないですし……、それと俺、佐伯隼人と言います。よろしくお願いします」
「えーっ、ちさき、まだ食べられてないの?」
「ちょっとお姉ちゃん。何言うんですか。私たち、そんな関係じゃないです!」
優衣さん、無茶苦茶なこと言うな。数日前まで病院にいた女子高生捕まえて、性交渉の有無を聞くなんて、なんて自由奔放なんだ。
「そっか。彼氏くんじゃなくて、隼人はフリーなんだね」
「えっ、……いや、それは……」
「お姉ちゃん、隼人は駄目だよ!」
「えーっ、でも、隼人は、ちさきの彼氏じゃ無いんだよね?」
「今はまだ違うだけ……」
「ふうううん、そんなこと言ってると本気で食べちゃうよ」
「ちょちょっと、それは困ります!」
優衣さんは、見た目もそうだが性に関して自由過ぎる。顔はちさきに似てかなり可愛いが、もしかして男性関係はかなり派手なんじゃなかろうか。
「お姉ちゃん、去年の彼氏はどうしたの? 一緒に迎えに来てくれてたよね?」
「あぁ、先月別れたよ」
「嘘!?」
「ときめかなくてね。わたしは隼人くんみたいな男の子の方がときめくけどなあ」
優衣さんはそう言って俺の腕に手を回した。うわっ、でけえ。強く抱きつくから胸の柔らかさが肩越しに伝わってくる。
「ちょっと、隼人くんは駄目だから!」
「どうして? 隼人くんはフリーなんでしょ。イケメンだし、わたし好みなんだけどな」
「駄目、隼人くんはわたしの幼馴染だから……」
「幼馴染だからって、付き合ってもいないなら、わたしが食べちゃっても大丈夫でしょ?」
なんて女だ。大学生って、みんなこんなに恋に貪欲なんだろうか。もしかして、ちさきも3年後には、こうなってるんだろうか。
「駄目、……隼人くんを取らないでよ」
ちさきは、ポロポロ泣き出した。ごめん、俺がはっきりと言わなかったからだ。
「ごめんなさい。俺たちはまだ正式には付き合ってませんけども、ちさきは俺の彼女ですから……」
俺はちさきをぎゅっと抱きしめた。
「はいはい、ごちそうさま。もう、ちさき見てると揶揄いたくなるわ。本当、奥手なんだからさ」
「お前は積極的過ぎると、わしは思うがね」
「お婆ちゃんの時代はそうかもしれないけどね。今の時代は男を選ぶ時代なんだよ。ほら、相性とかあるじゃん」
「お姉ちゃん、恥ずかしいこと言わないでよ」
「そうかなあ。抱かれてみないと分からないと思うけどなあ」
本気で自由過ぎる。関係を持った後の性の相性なんて、俺にはどうでもいい。好きであれば、そんな些細なこと簡単に乗り越えられると思うのだが……。
「お姉ちゃん……、怒るよ!」
ちさきが本気で怒り出したので、話はそこで打ち切りになった。もともと優衣さんは大人の女性だし、高校生の俺なんかに興味なんてないだろう。ただ、揶揄っていただけだ。
「じゃあ、エレベーターで降りようか。車はパーキングに停めてるからさ」
エレベーターにはちさきから乗り込み、俺が最後に乗った。ゆっくりと三階から一階に降りる。
新幹線の改札まで少し距離があり、松葉杖では大変そうだ。
「ちさき、大丈夫か?」
「うん、毎日、練習はしてたけど、やはり大変だね」
「隼人がお姫様抱っこすればいいじゃん」
「ちょっと、だからお姉ちゃんは黙ってて!」
ちさきが顔を真っ赤にして、優衣さんを睨みつけた。恥ずかしがってるが、ちさきも優衣さんを嫌ってはいない。優衣さんとちさき。全く違うタイプだが、気が合うのだろう。ふたりの話から、仲がいいのがよく分かる。
「辛かったら言ってくれよ。本当、ちさきくらいなら、運べるからさ」
「ちょっと隼人くんまで!! 大丈夫だよ」
隣をゆっくりと歩くちさきは顔を赤らめた。歩くのが大変で顔が赤くなってると言うよりは恥ずかしいのだろう。
「うぶなちさき、かわいい!」
おばあちゃんの手を引いて後ろを歩く優衣さんは、ちさきを揶揄ってるのが明らかに分かる。そりゃそうだな。こんな大人の女性が俺に惚れるなんてあるわけがない。
「車まではもうすぐだからね。あとちょっとがんばれ!」
「うん、これもリハビリになるから大丈夫だよ」
――――――――
十万字は超えそうですね。
で、ご相談があります。
星が増えた分だけ順位が少し伸びました。
本当に入れてくれた人ありがとうございます。
もちろん、読んでいただいた方皆様本当に感謝してます。
今は179位ですね。
少し後日談なども描こうかと思ってはいますが、この1週間で順位が上位になればいいな、と思います。
カクヨムのシステムは、フォロー、星数の合算で順位が決められ、毎週リセットされている週間ランキングが重視されます。
ラスト頑張りますので、本当によろしくお願いします。
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