第23話 告白(拓也視点)

「なあ、父さん?」


「どうした拓也!?」


「母さんが暴走しそうになってるんだが、どうしたら止まると思う?」


「なんだ? また、暴走してるのか?」


 俺は母親が風呂に入ってる間に、父親に聞いてみた。どちらにせよ、真香のやってることは間違ってると思ったからだ。


「ああ、主観的な情報で人助けをしようとしてるんだ」


 言いながら今回のことがなぜ問題なのかを考えてみる。真香が隼人と付き合えたのは、ちさきが隼人と兄妹だと信じたからだ。一つ目にこの点を今回語っていない。


「人助けか……、うむ。母さんは情に乗せられやすいからな。ただ、あー見えて馬鹿じゃない……、拓也が客観的な事実を補足すれば、むしろ、逆に変わるかもしれんな」


 二つ目に献身的な看護を隼人にしてきたと言うが、看護と言うより監視と言った方が良い。純粋な好きと言うより打算が強すぎる。


「父さん、ありがとう。ちょっと話し合ってみるよ」


 三つ目に隼人の気持ちだ。隼人はちさきへの想いがとても強い。隼人には全てを知ってもらうべきなのだ。その後のことは隼人とちさきで話し合うのがいい。兄妹ならばふたりのことだ。付き合うことはないだろう。


「まあ、頑張れよ」


 父親はそう言って自分の書斎に上がって行く。俺はこの件には関わりたくないが、母親が関わるのであれば話は別だ。


「あれ、お父さんは?」


「上に上がって行ったよ」


「そっかあ残念。今日はお父さんに思い切り甘えようと思ったのに……」


 暴走していると聞いたから書斎に逃げたんだろう。母親と父親はこの歳になってもいまだに新婚夫婦のようだが、今だに喧嘩ひとつしたことがないのは、絶妙な距離感を父親がとっているおかげでもある。


「なあ、真香の手伝いするのか?」


「だって、あの娘無茶苦茶いい娘でしょ。あんないい娘が酷い目にあうのは耐えられないよ」


「その話で一つだけ真香が話してないことを言ってもいいか?」


「なんのこと?」


「今から言うことを聞いて、どうするか判断して欲しい……、真香は全てを話してないんだよ」


「そうなの?」


「真香は母さんが思ってるようないい娘ではないんだよ。もっと打算的と言うか……」


「ふうん、もしかして真香ちゃんのこと好き?」


 おいおい、それはあまりにも勘違いすぎるだろ。


「俺はちさきが好きだと言ったはずだけど……」


「でも、真香ちゃんも好きでしょ?」


 勘弁してくれよ。少なくとも真香には恋愛感情はない。


「それはありえないよ。だって、真香……、母さんに似てるもの」


「それってどう言う意味よ?」


「言った通りだよ。それ以上でも以下でもない」


「まあ、いいわ。母さんみたいに可愛いって言いたいのね」


 おい、今までの流れ分かってるか? 思わず俺は顔に手をあててしまう。


「まあ、どうでもいいや。それよりさ、真香の言ってないこと聞きたい?」


「なに、もったいぶってるのよ」


「じゃあ、聞くんだね」


「もちろんよ……、どう言う話なの?」


「真香のお母さんは昔、拓也とちさきが生まれた病院の看護師をやっててさ。当時、ひとりの母親から拓也とちさきが生まれたのを見たと言うんだよ」


「それ、本当なの!?」


「分からないよ。少なくとも、兄妹かどうかに関してはふたりの問題だと思ってる。謄本を取り寄せるにせよ、見に行くにせよ、すれば真実は分かるだろ。それよりさ……」


 これを告げることは真香にとって、きっと大きく不利になる。それでも、それを語らないことには何も始まらないんだ。


「真香が隼人から、ちさきを引き離したくて、この話をしたとしたら?」


 母親のただでさえ大きな瞳が大きく見開らかれた。


「2人が兄妹と言うのも全てが嘘!?」


「それは無いと思う。真香はそんな嘘はつかないよ。ただ、自分の都合のいいように話した気はする。母親が見たのが本当にふたりだったのか、今となってはそれすら分からない」


「真香ちゃんのお母さんが勘違いした可能性も低くないと?」


「そうだね。後さ……その話を半年前に俺にしてきたんだけども、その時、ふたつの嘘を入れてきた」


「……嘘!?」


「きっと、俺に手伝ってもらいたかったんだと思うよ。ふたりが兄妹になってるカルテを見せられたと言われたし、親の血液型からするとちさきの血液型は生まれないとも言われた」


「兄妹かどうかって、凄い重要なことじゃない!」


「うん、でもさ、俺は兄妹のことは事実にせよ、そうでないにせよ。それを調べるかどうかは隼人が決めたらいいと思ってる。俺たちがとやかく言うことではない。ただ、少なくとも隼人には真実を告げないとならない段階まで来ている、と思う」


「わたし、明日。真香ちゃんに話してみるよ。そんな大切なことを話さないで付き合ってるなんてさ。それはダメよ」


 慌てて母親はスマホを取り出して真香に連絡していた。


「うん、明日会ってくれるかな?」


 これがいい方向にいけばいいな。


「分かったよ。じゃあ、そこの喫茶店でね」


 スマホを置いて、母親は俺の方を向いた。


「聞いたよね。明日、近くの喫茶店に10時よ」


「ふたりで会うんじゃないのか?」


「拓也も行くに決まってるでしょう?」


 俺は思わず頭を抱えた。その時に俺のLINEが鳴る。予想通り真香からだった。


(何か余計なこと言ったんじゃないでしょうね?)


 凄くお察しの良いことで……。





――――――――





これを機会に動き出します。


よろしくお願いします。


ちさきちゃんのイメージイラスト追加ししました。


https://kakuyomu.jp/users/rakuen3/news/16817330663799452142

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