大好きな幼馴染が寝取られ、俺たち四人の関係はバラバラになる。数日後、残った幼馴染から告白され、寂しさから付きあった。寝取られが彼女の告白を成功させるための嘘だなんて、思ってもみなかった。
第22話 病院でお勉強(隼人視点→ちさき視点)
第22話 病院でお勉強(隼人視点→ちさき視点)
(隼人視点)
「あのさ、今日はちさきと一緒に勉強しようよ」
真香は予想通り、俺の言葉に噛みついてきた。
「なんでよ! 半年記念でしょ」
「だからさ、ちさきにも話したら一緒にお祝いしようって……」
「なんで他の女に祝ってもらわないといけないのよ。分かってる! 誕生日じゃないのよ」
「分かってるさ。でもさ、俺たち幼馴染だろ。確かに拓也は最近来ないけどな。もう一度、俺たち四人の友情を確かめるのにもいいんじゃないか」
真香の怒りはまだ冷めてないようだ。しばらく腹を立てていたようだが、少しすると気を取り直した。
「仕方ないわねえ。貸しは高くつくよ」
「おっ、ありがたいよ。さすがは真香だよ」
俺たちは病室に戻るとちさきがニッコリと待っていた。
「リハビリ大変だったか?」
「もう、大変だよ。普段動いてないから、辛いったら、もう」
「それは大変だったな。ちなみに、真香も来てくれたよ」
それを聞いてちさきは、真香の方を申し訳なさそうに見た。
「ごめんね。無理言って、あのね。結構、私やばいんだよ」
「やばいって……」
「あのね。半年も休んじゃったでしょう。だから、本当は今からでもすぐ学校で補講したいみたいだけど、まだリハビリ中でしょう」
「確かに半年も休んじゃったもんね」
「正確には進級したから、なんとか三ヶ月で済んでるみたいだけどね。ただ、九月になったら試験受けないといけないみたいなの」
「なるほどー」
「だから、遊んでる場合じゃないというか……、本当はひとりでできたらいいんだけどね。それ言ったら隼人が教えてくれるって……」
「なら、そっちを優先させないとね」
「お前と遊ぶ時間減るけどな」
「もちろん、わたしも一緒に勉強するし、帰りにどっか寄ることかはできるよね?」
「それはそうだな」
「それなら、今年の夏はそれで我慢するよ」
「悪いな」
「いいよいいよ」
流石は真香だと思う。これが普通の女の子なら、きっとこうは行かない。
「じゃあ、時間もないから今から始めるぞ」
「ちなみに聞くけど、どのくらいの時間を勉強に割り当てるつもりなの?」
「うん、朝から1時間と昼から1時間だな。ただ、リハビリを優先させるから、恐らく終わるのは夕方になる日もあると思う」
俺がそう言うと、真香は暫く俺から目を逸らして俯いていた。
「まっ、仕方がないよ!」
全然仕方がない顔はしていないが、我慢してくれていることに本当にありがたさを感じる。
「ごめんね、わたしが勉強を教えてって言ったもんだからね」
「別にいいよ。わたしも勉強しないといけないしさ」
言葉ではそう言ってるが、勉強が始まっても不満がありありと見てとれた。
――――――――――――
「あっ、これ覚えてるよ」
ちさきが嬉しそうに問題を見てから、俺を見た。
「そうだよな。ここ、ちさきがやってた問題の応用問題だよ。よく覚えてるな」
「ちさきちゃん、凄いよね。わたしなんかずっと教えてもらってるのに全然だよ」
「お前、勉強以外に気を取られすぎてるんだよ」
「そんなこと言ってあげないでね。わたしだって、偶然同じ形式で問題が出てたからだよ」
「そんなことないよ。やっぱり凄いよ」
真香が言う通り、ちさきは六ヶ月も寝ていたとは思えないほどよく出来た。
もちろん人に得手、不得手があるのはわかる。それでも真香と比べてしまう。
「そうだ。本能寺の真実見たって言ったよね」
半年前に見た映画だし、その日にちさきが事故にあったから、それどころじゃなかったが、勉強の合間にちさきが凄く嬉しそうに聞いてきて、昨日のことのように思い出した。
「で、ラストはどう言う話だったの?」
「ネタバレになるけど、いいか?」
「わたしはネタバレ気にならないよ」
「そうだな。うん、あの映画は徳川家康陰謀説に立っていてな。明智光秀は農民に匿われて、天海になった」
「あははははっ、それ本当?」
「俺もびっくりしたよ。フィクションすぎるだろ」
南光坊天海は江戸時代の幕政に多大な影響力を持った僧侶だ。その生い立ちに不明点が多く、そこから光秀天海説が生まれた。
全く現実的な話ではないのだが、秀吉の中国大返しが早く、家康が国に戻った頃にはもう光秀は負けていた。
その後しばらくして、明智光秀が農民に連れられて、徳川家康の元にやってくる。
無事を知り、抱き合う二人。ただ、光秀の名前を表に出す訳にはいかず、僧侶として裏から政治に参加することになる。その後、家康は史実通り小牧長久手の戦いで秀吉を破るが、秀吉は信雄と和睦してしまい大義名分を失う。
その後はだいたい史実通りだった。
「でも、夢があっていいね」
「だよなあ、普段気にかけていた農民達が匿ったと話はいいよな」
「見に行きたかったなあ」
「また、ブルーレイ出たら一緒に見ようよ」
そこまで話して目の前の真香を見ると明らかに不満そうな顔をしていた。
「飲み物飲みたい。ちさきちゃんもコーヒー飲みたいでしょ」
「コーヒーならあるけど……」
「わたしはミルクティーが飲みたいの」
俺は明らかに不満そうな真香を見て、真香のいる時は気をつけないと、と思った。明らかに嫉妬していた。
「分かったよ。ミルクティーは自販機にないから一階のコンビニまで行ってくるけど、大丈夫か?」
「うん、ありがとうね」
「他に買いたいものとかないか?」
「うん、大丈夫」
俺は真香とちさきの飲み物を買うために、病室を出た。
――――――――
(ちさき視点)
時計の針が秒針を刻む音が聞こえる。なんか、真香怒ってるのかな。やっちゃたかな。
「ごめんね。その、……邪魔しようとか思ってないからね」
そう、どう言う理由で付き合うようになったのか知らないけども、隼人の彼女は真香なのだ。
「あのさ、……わたし酷いこと言うかもしれないけどさ」
「うん、いいよ」
あの表情から見ても明らかにわたしがしてることは駄目なことだ。
「隼人とふたりきりで会うのやめて欲しい」
「えっ!?」
「言葉通りの意味だよ。変だよ、隼人には彼女がいるのに、別の女が色目使ってるなんてさ」
「色目?」
「色目だよ。そりゃさ、半年も寝てたから大変なの分かるよ。でもさ、怪我だって治ってるのに、ふたりで会うのおかしいと思う」
そうか……、わたしは隼人に甘えていたかもしれない。このままではダメなのだ。
「うん、ごめんね。わたしね、誰も覚えてなくてね。隼人はその中で唯一覚えてた幼馴染だったから、甘えてたかも……」
「でもさ、さっきの映画の話とかわたし一緒に見たのに全く分からなかった。あんな楽しそうに話す隼人見るの初めてで、正直怖い」
ごめんね。怖がらして、わたしは目の前の真香を抱き寄せた。
「えっ!?」
「ごめんなさい。そして、これからも隼人のことよろしくお願いします」
「うん、今後は予定以外に会う必要があるならわたしに連絡して、わたしから隼人に伝えるからね」
「分かった。ありがとう、じゃ約束」
「うん、約束」
わたしは真香と指切りをした。
そして、私たちが笑い合えるようになった時に、隼人が戻ってきた。
「おかえりなさい」
「うん……これアイスコーヒーとミルクティー」
「隼人、ありがとうね」
ニッコリ笑って隼人に言う。
「あれ? なんかふたり仲良くなった?」
「だってね。私たち幼馴染なんだよ」
「それはそうなんだけどさ」
幼馴染だった時の記憶はない。でも、私も好きだから、真香の気持ちは痛いほど分かった。
――――――――
批判されるかな。
そろそろ動くと言いつつなかなか動かない
ごめんなさい。
ここの話は入れない訳にはいかない訳でして。
読んで頂きありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます