大好きな幼馴染が寝取られ、俺たち四人の関係はバラバラになる。数日後、残った幼馴染から告白され、寂しさから付きあった。寝取られが彼女の告白を成功させるための嘘だなんて、思ってもみなかった。
第9話 映画デート、その後(隼人視点、ちさき視点、第三者視点)
第9話 映画デート、その後(隼人視点、ちさき視点、第三者視点)
(隼人視点)
「本当に、この映画で良かったのか?」
「うっ、うんっ、これが見たい!」
明らかに無理してるのがよくわかった。真香はラブストーリーなどを期待してたのじゃないだろうか。
「楽しそうじゃない? 本能寺の真実なんて」
「いや、そりゃ、俺にとってはこの映画前から気になってたけどな」
俺は隣に座る真香を見る。さっそくやっちまったかな。歴史好きのちさきなら、絶対喜んでくれるんだけども……。
「本能寺の変って知ってるか?」
「馬鹿にしないでよ。石田三成率いる西軍と徳川家康率いる東軍が戦った話でしょ」
こいつ大丈夫か……。高校生なら本能寺の変くらい知らないとやばいぞ。
「それ、関ヶ原の合戦な」
「すみません……この映画見て勉強します」
申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、別にいいよ。俺の好きな映画に付き合わせてごめんな」
「いいって、わたしもこう言うの好きだからね」
絶対、嘘だろ……。
映画が始まる。映画館が暗転し、映画の予告が流れ出す。真香は予告のラブストーリーを見て小声で俺に囁く。
「これ、テレビで人気あったんですよ。この続編映画で出るんだ」
「そうなのか?」
俺はテレビをあまり見ないためによく分からない。確かに人気アイドルがたくさん出ていた。
予告が終わり本編が流れ出す。
「敵は本能寺にあり!」
本当はこの台詞はなかったらしいが、光秀のこの台詞にテンションが上がる。
秀吉の中国毛利攻め中に聞いた信長の訃報。中国地方平定がほぼ決まった所で信長に援軍を呼び、信長の動向を探っていたため光秀の謀反を誰よりも早く知ることができた。
そのことが奇跡の中国大返しに繋がったのだ。
「秀吉様、天下をお取りなされ!」
配下の黒田官兵衛のこの一言に泣き崩れていた秀吉はじっと官兵衛を見る。その顔は笑うでもなく、怒るでもなく、ただただ官兵衛を気持ち悪そうに見ていた。
信長の死を悲しんでいた秀吉は、その瞬間天下が転がり込んだと言う事実を知る。秀吉より一瞬速くその事実を知った官兵衛に秀吉は生涯心を許さなかったと言われる。
ここからの秀吉の動きは機敏だ。毛利と和睦をし、急ぐふりを見せずに距離を取り、途中から最高速で行軍。
当初、信長をもてなすために作っていた中継地点が京への行軍時に役だったと言われている。
総勢数千人からなるエキストラが中国地方から京に向けてひた走るシーンは圧巻だった。
「やっぱ、本能寺の変、面白いよな」
俺は嬉しさを共有しようと隣に座る女性を見た。
「すううぅっ、むにゃむにや、もう食べれないよ」
そこで隣に座ってるのがちさきではなく真香であったことを思い出す。ちさきなら、きっと俺のこのワクワク感は分かるんだけどな。
「しかたがないよ」
俺は少し寂しかったが、この映画を見たがったのは俺だ。初デートでこれじゃあ、真香に悪かったよな。
――――――――――
「無茶苦茶面白かったよね。隼人の楽しさ本当凄く分かったよ」
上映後、映画館併設の喫茶店に俺は真香に誘われ入った。
一緒にアイスコーヒーを頼み必死になってパンフレットを読みながら熱弁する目の前の真香。
「悪いな……、面白くなかっただろ」
「そんなことない。そんなことないよ」
悲しいくらい必死だった。きっとちさきに追いつこうとこいつなりに必死なんだ。
「気にするなよ。本能寺の変は女の子が好きな映画じゃないよ」
「でも、ちさきちゃんは……」
「やめとけ……、お前はお前。ちさきはちさきだ」
俺は何を期待してたんだろう。真香がちさきと同じわけないのにな。
「だから、気を張るな」
「ごめんね、本当のこと言うとね。何も分からなかった」
「だろうな……」
それにしてもファンのための作品だけあって、知識がある前提で作られていた。演出の方に重きをおいて作られてたので、真香には難しかっただろう。
「次はお前の好きな映画見に来ような」
「ありがとう。そして、ごめんね」
真香のその言葉がずっと耳に残って離れなかった。
――――――――――
(ちさき視点)
「あーあ、今日は真香とデートか」
口に出してみるとなんか寂しい気がする。流石についていくわけにもいかずに、わたしは駅前の本屋に問題集を買いに行っていた。
今日はなんの映画を見るんだろうな。隼人のことだから
いや、……隼人だからこそ選びそうだった。わたしのキスの一件が起こる前、嬉しそうに本能寺の真実の話をしていた隼人を思い出す。
わたしなら一緒にワクワクして盛り上がるだろうけど、相手は真香だよ。しかも初デートだ。それはあまりにもハードルが高すぎる。
映画がいいよ、と一般論で言っては見たけど、もしかしたらこの選択はダメだったかもしれない。
そんなことを考えながら、本屋で問題集を購入した。隼人が恋愛にかまけてる間にわたしが一位になってやるのだ。
そう思って本屋から出て青信号の交差点を渡っていた時だった。
右を見ると目の前から一台の赤のワンボックスカーが交差点に近づいてきた。思ったよりも速度が速く止まらない。
これはやばいと感じ、逃げようと動いた。とても間に合わない!!
その瞬間、響き渡る強いブレーキ音、身体に強い衝撃を受け空中を舞った。
嘘、このままわたし死んじゃうの?
そのままどのくらい飛ばされただろうか。わたしの記憶はここで途絶えた。
――――――――
(第三者視点)
「高校生の女の子が車に跳ねられたんだって」
「脇見運転だったそうよ」
「大丈夫なのかしら、結構血が出てたよね」
「可愛い娘だったらしいぜ」
たくさんの人が集まり、現場は騒然としていた。
そこは警察、救急車が駆けつける戦場だった。規制テープが貼られ、救急車が担架を運んでくる。一人の警官が目撃者から事故の状況を聞いていた。そこに一人の警官が本部に現況説明を行っている。
「事故発生 15時15分ごろ」
「所持品の生徒手帳の写真にて
……本人と確認」
「北園高校一年生」
「被害者氏名確認、
◇◇◇
えと、この事故がターニングポイントになります。
当初かなり初期から考えてた構想です。
よろしくお願いします。
応援いつとありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
後ラストの台詞ですが、一人のセリフを分ける方法は小説では一般的ではないのですが、ダメというわけでもなく実際少なくはありますが、プロの方でもやられておられます。
昔ご指摘頂いた時から、色々と読み漁ってあー、これOKなのね、と。ただ、多用するのはダメだとは思います。
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