第42話 遠征隊結成!
「ご苦労。王国の奴等はどうだった?」
一週間ぶりにリザーズの拠点に戻って来たシトリーは、少しやつれていた。大広間の長椅子にドカリと座ってから答える。
「バンドウの狙い通りになっていた。男聖女の話は勇者にまで広がって大混乱らしい」
草薙や青木の困惑した顔が目に浮かぶ。
「それにしても戻ってくるのに時間がかかったな。何か問題でもあったか?」
「い、いや……。何も問題はない……!」
焦ったシトリーが首に手を当て、キスマークを隠す。
「一体、どこで情報収集をしていたんだ……?」
「違うんだ! イザベラが俺に酒を飲ませて強引に! 俺は何も悪くない……!」
どうやらシトリーはA級冒険者に随分と惚れ込まれたようだ。
「自分の蒔いた種だろう? 取り入るために優しくした筈だ」
「筈だ」
シトリー弄りにリリナナが参戦する。
「うっ……」
「まぁいいね。王国や冒険者ギルドに対する情報源が増えたと思おう。枕営業のシトリーよ!」
「枕営業のシトリーよ!」
揶揄われているのは分かるようで、シトリーは悔しそうな顔をした。
「さて、本題に入ろう。我々はシトリーの妹を救出し、聖女の石化を解く為に魔大陸に行かなければならない」
大広間に集まったリザーズメンバーに向かって声を張った。
「まず、メンバーを募りたい。俺やシトリーと一緒に魔大陸に行きたい! という奴はいるか?」
間髪入れずに「一緒行く。アウグストも行く」とリリナナが手を挙げた。
「魔大陸! 行ってやるぜ!」
置いて行かれるのが嫌な鮫島も前に出る。
「仕方ないなぁ〜。僕がいないと迷子になっちゃうもんね」
田川がツヤツヤの頬っぺたを揺らした。
「よし。今立候補したメンバーにコルウィルを加え、遠征隊とする!」
「ちょっと待て! 勝手に俺を加えるな!」
不意を突かれたコルウィルが慌てて長椅子から立ち上がって抗議した。
「魔大陸にもコルウィルの名前を轟かせるいいチャンスだと思わないのか?」
「もう充分だ! 勘弁してくれ!」
「却下だ! アウグストの【盲従】を使ってでも連れていく」
コルウィルが頭を抱える。
「安心しろ。コルウィルはリザーズの象徴だ。危険な目には合わせない」
「……もう、好きにしてくれ……」
賛同を得られたようだ。
「後は俺達の留守の間、拠点をどう守るか? だ。森にはリリナナのアンデッドが居るので基本的には問題ない。ただ……」
「ただ……?」とリザーズのメンバー達が身構える。
「男聖女役を決めなければならない」
──静寂。動いたら負け! という空気になる。
「万が一、王国の刺客がこの拠点に忍び込んだ時の為に、男聖女役は必須だ! 立候補する者はいるか……?」
皆、息を止めて視線を泳がせる。
そんな中、間の悪い男が鼻をひくつかせた。
「ヘクション……!」
「チェケ。やってくれるのか。頼もしいぞ」
リザーズメンバーが一斉に息を吐いた。
「えっ! なんで自分なんすか! 何も言ってないっすよ!」
「返事したじゃないか。皆、聞いたよな?」
皆、一斉に頷いた。
「無理難題言わないでくださいよ!」
「俺が無理難題言わなかったこと、あるか?」
「謎の説得力……!!」
もう一押しだな。
「勿論、タダでやれとは言わない。男聖女手当を出そう」
「男聖女手当……。本当すか……?」
金品の誘惑に弱いチェケは折れた。
「よし。これで懸念点は無くなった。準備が整い次第、遠征隊は魔大陸に向けて出発する! 皆、頼んだぞ!」
さあ、魔大陸だ。
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