第6話 数々のやらかしと説教
「———で、何か申し開きはあるかしら?」
測定が終わった次の日、俺は麗華ちゃんから呼び出しでとあるスイーツ店にやって来ていた。
『朝イチで会えないか』と連絡があったので何事かと飛んで来れば、何でも昨日のやらかしについてらしい。
それも麗華ちゃんめちゃくちゃキレている様で、イライラオーラを隠すことなく解き放っている。
俺はそんな激おこ状態の麗華ちゃんに、ナンパで培った愛想の良い表情を浮かべて弁明する。
「い、いやぁ……最初は俺が悪いにしても2つ目は可哀想な美少女を救ったんだよ? 褒められてもいいくらいだと思うの」
「ならもう少しいい手があったわよね? 何故わざわざ男の方を逆上させる様な態度を取ったの?」
「えっと……勿論自然に———ひっ!? 分かった! 言う! ちゃんと言うからフォークをこっちに向けるの止めてくださいお願いします!」
「ならさっさと言って」
俺は此方にフォークを向ける麗華ちゃんを宥めながら、催促されるがままに本音を告げた。
「『美少女の双子っていう羨ましいシチュエーションのくせに、よく可愛い双子の妹の美少女を虐めれるなクソが。頭湧いてんのかお前』とか思ってついやっちゃいました」
「はぁ……想像以上に阿保な理由ね……。いや、アンタらしいと言えばアンタらしいけど……流石に相手が悪かったわね」
「因みに……あの2人って誰なんだ?」
恐る恐る訊くと、麗華ちゃんに『お前正気か?』とでも言いたげな視線を向けられた後で大きなため息を吐かれた。
「これくらい知っておいた方がいいわよ? 彼らは西園寺財閥には及ばないものの、日本で絶大な権力を持つ赤星財閥の御曹司とご令嬢よ。アンタ、本当にとんでもない所の御曹司に嫌われたわね?」
「へ、へぇ……べ、別にほ、報復とか全然、こ、怖くねぇし?」
俺は又もやめちゃくちゃ聞き覚えのある財閥の名前が出て、思わず顔を引き攣らせる。
そんな俺の姿を見た麗華ちゃんは呆れた様に再びため息を溢す。
「あ、そんなにため息なんか吐いてたら幸せ逃げるよ?」
「一体誰のせいだと———はぁ……まさかここまで無知だったなんて……我が同僚ながら悲しくなるわね」
「すんごい言われよう。俺が悲しくて泣いちゃうよ?」
「チャラ男の涙に価値は無いわ」
「ひっどいなぁ……もう少しチャラ男を労ってくれよ」
「嫌よ。私がどれだけナンパされたと思っているのかしら? もうチャラい人にはウンザリなの」
嫌悪感剥き出しで自身の身体を抱く麗華ちゃんに、俺は思わず苦笑する。
確かに麗華ちゃん程の美貌であれば、街を歩くだけで何十人という男の人に声を掛けられるだろう。
しかも日本人離れした銀色の髪と瞳と完璧なプロポーションは、余計に周りの男性達の視線集める。
「まぁしょうがないと思うぞ〜〜? 麗華ちゃんは数多の女の子をナンパした俺でも目が飛び出るほどの美女だし、その銀色の髪と瞳が相まって更に美しく見えるからなぁ〜〜」
「な、なっ———あ、アンタ急に何言ってんのよ!!」
突然褒められた麗華ちゃんはほんのり頬を朱色に染めて恥ずかしがる。
美人が羞恥に悶える姿……実によい。
見るだけで寿命が1年くらい伸びそうだ。
俺は目を癒しながら、麗華ちゃんの問いに特に嘘つく意味も隠す理由もないので、自信を持って言う。
「勿論口説いているんだけど何か?」
「く、口説い———だ、騙されないわよ。私を揶揄おうなんていい度胸じゃない」
「別に揶揄おうとは微塵も……ただ公然の事実を言ったまでだって〜〜」
「……まぁいいわ。———兎に角、アンタ本当にやらかしてくれたわね。百合からアンタの話を聞いた時は思わず噴くかと思ったわ」
「うん、それに関しては何も言えないです」
いや、あんなに沢山の人がいる中で西園寺財閥のご令嬢にピンポイントで話しかけるって普通あり得なくないか?
どんだけ運が悪いんだよ。
「ただな……その教訓を生かして赤星財閥の美少女には話し掛けなかったんだぜ!」
「普通は美少女だからと言ってホイホイ話し掛けに行かないのよ……」
「えぇ!? 美少女には、出会った瞬間話し掛けるが
「んなわけないでしょ! そんなのアンタぐらいよ! 冗談よね? 流石にそれは冗談よね?」
割と本気で言ったのだが、どうやら麗華ちゃんは冗談にしたいらしい———ってそうじゃないよ!
「麗華ちゃん! 俺どうすればいい!? 普通に身バレの大ピンチなんだけど!」
「取り敢えず美少女だからと言って直ぐに話し掛けるのをやめなさい。この際その軽薄な口調も改めるといいわ」
「言っておくが、俺から美少女とチャラさを抜いたら何も残んねぇぞ?」
「それ、自分で言ってて悲しくならないの……? はぁ……まぁいいわ。取り敢えずステータスは誤魔化せたのでしょう?」
「うん、バッチリだった」
「なら本当に目立つ行動をしなければ問題ないわ。百合には私が上手いこと言っておくから」
「流石麗華ちゃん。協会長のクソババアとは比較にならん程頼りになるなぁ〜〜。どう? 俺と付き合わない?」
「…………お断りよ。今はまだ、ね……」
え、それってどゆこと?
「なぁそれってどう言う———」
俺が麗華ちゃんに問い掛けようとした瞬間———俺の言葉を遮る様に麗華ちゃんの携帯が鳴った。
それも———麗華ちゃんの仕事用の携帯である。
俺は猛烈に嫌な予感がして席を立とうとするが、ガシッと腕を掴まれた。
「嫌だぞ」
「行くわよ」
「嫌だぁああああああ———ッ!!」
連行された。
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☆☆☆とフォローして下されば、作者が泣いて喜びます。
たまに2話上がるかもしれません。
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