第5話 俺の番

「通りであんなに注目されるわけだわ……と言うか麗華ちゃんに何回か聞いてたのに何で気付かなかったんだろ……やらかしたわぁ」


 俺はザワザワと騒がしい体育館の隅で、1人反省会を行っていた。

 原因はあの美少女なお嬢さん。


 いつも通り『少し良いとこのお嬢様』程度の認識でホイホイ情報渡しちゃったが、完全に相手を間違えた。

 俺の中で関わりたくないランキングの上位に入る西園寺財閥のご令嬢だったなんて、流石に運が悪すぎる。


「それに『いつでもおいでぇ〜〜』なんて言っちゃったしなぁ……絶対に来るよなぁ……何なら俺の事徹底的に調べてから来るよなぁ……やべぇ……完全に墓穴掘ったわ」


 俺は先程やらかしたことを思い出してその場で頭を抱えたくなるが、既の所で思い留まる。

 流石に此処で奇行をすれば無駄に注目を集めそうだからだ。

 幾ら普段何もしていないナンパ師の俺でもそれくらいの常識は持っている。


『15分後に500番から600番の測定を始めますので、移動の方を宜しくお願いします』


 俺がガチ反省会をしていると、この場を離れられる唯一の救いの手が差し伸べられた。

 その瞬間『この手に乗らない手はない!』と俺の脳が答えを導き出し、颯爽と体育館を後にする。

 そして———すぐに歩くのをやめた。


「……測定室……って何処だ……?」


 理由は単純。

 測定室が何処なのか分からないからだ。


 急いで来たのと、そもそも下調べをしていないので、俺からすれば、この学園はさながら迷宮である。

 生憎一刻も早くあの場から離れたかったために、俺が1番最初に出発してしまった。


「———マジで恨むぞあのクソババア……」


 俺は今日の今日で告げて来た生意気なクソババアを頭の中でボコし、気を取り直して学園案内の地図を探すことにした。








 ———15分後。


「…………な、何とか着いた……」


 俺は開始ギリギリ直前で、何とか測定室に辿り着いた。

 途中優しい事務員の方に会わなければ間違いなく間に合っていなかっただろう。

 

「入学したら御礼しよう。あ、協会長にもついでに責任取らせて御礼言わせるか」


 あのババアは、少し俺の扱いを改めた方がいいと思う。

 俺くらいにもなれば、別に日本で無くとも生きていけるほどに引き手数多だからな。


 俺はそんな事を考えながら、ぼんやりと測定結果を眺めていると———


「478……395……501……105……821———821!?」


 又もや超高いレベルキャップの奴が現れた。

 驚いてソイツに目を向けると、身長170後半くらいと俺よりも大きい赤髪の少年で、見た感じ傲慢そうな奴だった。

 多分俺はアイツとは根本的に合わなそうなので、関わらないでおくことにする。


 更にその次の赤髪の少女も———757と非常に高い。

 そしてその少女はとても美少女と来た。


「今度こそキチンと素性を調べてから話しかけよう……!」


 先程の教訓を生かして、俺は一先ずあの美少女に話し掛けないでおく。

 

「さて……そろそろ俺かな」

『次、577番の方お願いします』

「丁度俺だったか」


 俺は椅子から立ち上がり、人1人入れるくらいのカプセル状の測定器に向かう。

 その途中で———ふと気になることがあった。


「お前……俺様と双子のくせに757だと? 幾ら何でも低すぎだろう? ふざけているのか?」

「い、いえ……そんなことは……」


 ———先程の傲慢そうな少年が、双子と言った美少女を罵っている現場だ。

 更によく見れば、美少女の襟元から何かで叩かれた様な跡が見えた。


 さて……どうしてくれようか。

 ナンパ師であり、女の子大好きな俺からすれば、女の子を罵るなんてのは以ての外だ。

 罵っていいのは協会長だけ。


 それに———


「———赤髪の美少女の方が強そうだけどなぁ……」

「———何……? おい、貴様。その言葉は流石に聞き捨てならないな」


 俺がわざと本音を溢すと、傲慢そうな少年が椅子から立ち上がって此方に向かって来て、俺の進行方向を塞ぐと、ガンを飛ばしてきた。

 

 おー怖い怖い。

 ナンパで何百何千と怖い奴を見ているが、確実に上位に入る。

 まぁそれがどうしたんだって話だけど。


「あ、すいませんねぇ〜〜後ろが詰まってるので俺はこれで〜〜」

「ちょ———おい待て!!」


 俺は一瞬の隙を突いて追い抜かすと、怒鳴り声を聞きながら、そのままカプセルに乗り込んだ。


「ぷぷっ……顔真っ赤にして怒ってやんの。女の子を罵るのが悪いんだぞ全く」


《———測定開始》


 そんな事を言っていると———突如俺の身体を光が包み込む。

 一瞬びっくりするが、特に害は無さそうだったので直ぐに身を預けた。


《———測定終了》


 僅か数秒あまりで無機質な機械音が終わりを告げる。

 そして自身にのみ映し出されたステータス画面を見て目を見開くと同時に焦り散らす。


「おいおいこれは少し不味———」

「———ふん……レベルキャップ710か……大した事ないな」


 ………………へ?


 俺は急いでカプセルから飛び出すと、表示されているステータスを覗く。



————————————

赤司彰人

【Level】194/710

【体力】237

【魔力】285

【筋力】225

【耐久】228

【敏捷】238

【魔攻】266

———————————



「…………ふぅ……危ねぇ……無駄に焦らせるじゃねぇか……あ、そこの君、ごめんね、さっきは生意気なこと言って」

「き、貴様……入学したら覚えておけよ……」


 少年は現在この場面を撮られていることに気付いたのか、謝っている俺には手を出さないでくれる様だ。

 まぁ恨みは買っているみたいだけど。


「うーん……もしかしなくても、俺って協調性無いのかなぁ……」


 少し時間が経ち、俺は測定室を出て帰りながら、ふとそんな事を思うも、今更かとすぐに考えるのをやめて、ナンパをするべく街に繰り出した。







「———あ、あの人……こ、こんな数字……は、初めて見た……」


 赤髪の少女は、家から来た迎えの車に乗り、不機嫌な兄にも聞こえない様な小声で呟いた。

 その少女の瞳には———



————————————

赤司彰人

【Level】---/987

【体力】---

【魔力】---

【筋力】---

【耐久】---

【敏捷】---

【魔攻】---

【スキル】

《???》《???》《道化師》《???》

《???》

———————————



「私の《摂理の瞳》でもこの程度しか鑑定出来ないなんて……」


 ———彰人の本当のステータスが映っていた。


  

———————————————————————————

 ☆☆☆とフォローして下されば、作者が泣いて喜びます。

 たまに2話上がるかもしれません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る