第4話 黒髪美少女の実力

「———多過ぎだろ〜〜こんなの地獄過ぎるってぇ〜〜」


 控え室という名の体育館は、正しく人で溢れかえっており、正直暑苦しい。

 こんな所では碌にナンパすら出来ねぇよ。


 因みに俺の番号は577番。

 最後から23番目であるため、どの程度掛かるのか検討も付かない。


 俺は一先ず暇なので、話し相手を手に入れるべく、辺りを見回してみる。

 すると———近くに偶然黒髪黒目の超絶可愛い美少女を発見。

 将来は麗華ちゃんと並ぶほどの美貌に成長するだろう逸材だ。


 善は急げと言うことで、俺は早速その美少女に話しかける。


「ねぇそこの君、ちょっといいかな?」

「……何でしょうか?」


 女の子は俺を警戒する様な、探るような目で観察した後で口を開いた。

 しかし所作も口調もちゃんと相手に失礼のない様に取り繕われているのを見る限り、何処か良い所のお嬢様なのかも知れない。


 まぁこの程度で諦める俺ではないが。


「俺さ、577番なんだけどさ、どれくらい時間掛かるかな?」

「そうですね……577番ですと、恐らく1時間は余裕で掛かると思います」

「なるはどねぇ……因みに歴代の平均能力値ってあれくらいなの?」


 俺は測定室と測定結果を映す巨大なホログラムを見ながら訊いてみる。

 因みに今測られている少年の能力値はこの程度だ。


—————————————

中谷和真

基礎ステータス

【Level】58/300(現在/限界値)

【体力】40

【魔力】41

【筋力】41

【耐久】39

【敏捷】42

【魔攻】40

—————————————


 どうやらスキルは映さないらしい。

 まぁスキルはその人の生命線とも言える代物なので、無闇矢鱈に見せびらかしてはいけないという判断なのだろう。


 因みにレベルが上がっても必ずしも全てのステータスが上がるわけではない。

 そこは才能によって変動するし、レベルキャップが300なので、今測定中の彼はあまり才能がない様に見える。


「そうですね……彼には申し訳ありませんが、スキルがA級以上でなければ、将来はC級止まりでしょう」


 彼女の言う通り、俺から見ても彼はステータスだけで言えばC級止まりになるだろう。

 ただ補足するとすれば、C級は世界で1番ハンター人口が多いので、別に弱いわけでも使えないわけでもない。


「それで、平均値でしたね?」

「うん。お兄さんに教えてくれると嬉しいな」

「過去10年のレベルキャップは537、レベルは75、他の能力値の平均は70後半ですね」

「意外に高いねぇ〜〜」

「恐らく4年前の東堂麗華さんと、7年前の大原大地さんが原因でしょう」


 ああ……確かに2人はとんでもない潜在能力持ってるもんなぁ。

 大原大地は俺とハンター歴が同じで、レベルキャップは824、等級はSS級。

 残念ながら表の顔での面識はない。


 因みに麗華のレベルキャップは927で、正真正銘の化け物である。

 SSS級ハンターの基準が全ステータス900以上だから、次期SSS級と言うことだ。


 俺は、教えてくれた心優しい美少女にお礼を言うと共に、良いことを教えてあげる事にした。


「ありがと〜〜可愛いお嬢さん。お礼に良い情報を教えてあげるよ」

「良い情報……?」


 身構える彼女の耳元で囁く。


「———今年度から東堂麗華が教師に加わるらしいよ」

「……っ!? ど、何処でそれを……!?」


 彼女が驚いた様に瞠目して此方を見ては問い詰めようとする。

 しかし、その瞬間に彼女の番号を含んだ100人が案内に呼ばれた。

 彼女は少し焦りながらも声を張り上げる。


「あ、貴方の名前は……!?」

「赤司彰人だよ〜〜いつでもおいでね」

「……っ、絶対に会いに行きますっ」


 そう宣言した彼女を、俺は笑顔で手を振って見送り、内心黒い笑みを浮かべる。

 

 よしよし……美少女との縁、ゲットだぜ。


 俺がルンルンで鼻唄を唄っていると……ふと多数の視線が自分に向いていることに気付き、周囲に視線を巡らせると———案の定物凄く注目を浴びていた。

 まぁこの程度は慣れているので、取り敢えず無視しておこう。


 俺は移り行くモニターを見ていると、先程の美少女の番がやってきた様で、彼女が映った。

 それと同時に俺に向いていた視線も一気に無くなる。


「……あの子、そんなに潜在能力凄いのかな……? 確かに他の人より強そうだったけど……」


 ———なんてことを考えていると、測定結果が出てきた。



————————————

西園寺百合さいおんじゆり

基礎ステータス

【Level】217/917

【体力】245

【魔力】300

【筋力】237

【耐久】230

【敏捷】247

【魔攻】289

————————————



「「「「「「「うぉおおおすげぇえええ!!」」」」」」」

「何だよあのレベルキャップの高さ!」

「と言うか1年でレベル200以上とか、さすが西園寺財閥の御令嬢だよな」

「何でも小さな頃からモンスターを倒しているんだろ?」

「凄い……流石百合お姉様……一生ついて行きます……!!」


 ………………おーまいがー。


 空いた口が塞がらないとは正にこのこと。

 

 理由は主に2つ。

 

 まず1つは———彼女がSSS級ハンターになる素質と才能を持っていること。

 そして———西園寺財閥という、ハンター用の様々な道具を製造し、西園寺直属のハンターの中に麗華ちゃんを含むSS級ハンターが2人居る、日本最大の財閥の御令嬢だったこと。


 ……俺はどうやら、関わってはならない美少女と関わりを持ってしまった様である。

 

 

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