第3話 学園に通え

「おい、お前にはこれからハンター学園に通ってもらうぞ」

「———何で? お前……とうとう俺の自由まで奪おうってのか?」


 俺が『魔遺物』を悠真さんに手渡した後、突然クソ協会長にそんな頭のおかしいことを言い渡された。

 流石にこれは看破できなかったので飛び掛かろうとするが、麗華に襟を掴まれる。


「———ぐえっ……し、死ぬよ麗華ちゃん……まだ死にたくは……」

「なら文句言わずにとっとと受けて。私だってアンタのせいで学園の教師を3年間もやらないといけなくなったのよ?」

「何で俺のせいなの? 意味不明なんだけど……?」


 因みに『ハンター学園』と言うのは、名前の通りハンターになる為に全国のハンター予備勢が入学する日本唯一の学園である。

 そのため年齢は関係なく、1年生で20歳後半の人とかもいるらしいし、10歳前半の子供までいるらしい。


 ただ、つい最近、協会がハンターになる為には絶対に学園に通い、卒業しないといけないと言う決まりが出来た様だ。

 

 勿論だが、俺は正体がバレない為に行っていな———あ。


「おいまさか……あの決まりのせいか?」

「お、足りない頭でよく考えたじゃないか」


 再び煽ってきたので俺が今度こそ絞めてやろうかと拳を握っていると、俺の代わりに悠真くんが苦言を呈してくれた。 


「余計なこと言わないでください協会長。すいません彰人様。後でキツく言い聞かせておきますので……」

「ありがとう悠真くん。俺の味方は君だけだよ。あの協会長はそもそもの話だし、麗華ちゃんは公平すぎるし……」


 別に麗華ちゃんが悪いわけじゃ無い。

 何なら可愛いし、強いし、責任感も強いから尊敬出来る子なの。

 でもこう言う時はやっぱり悠真くんなんだよな。


「それで……悠真くん、俺が行っていないから学園に通わないといけないのかね?」

「その通りです。協会長の所に総協会長から直接連絡が来まして……『陰の王』を学園に通わせろと命令がありました」

「チッ……あのクソジジイ……俺の正体は詮索しないって言ってたくせに……」


 一度、SSS級ハンターになると言うことで総協会長に会ったことがあったが、食えない爺さんだった。

 正直今回の『決まり』が決定したのも、俺の正体を暴くことも理由の1つだと思われる。


「はぁ……で、このことに付いて協会長はどう思ってんの?」

「だから通えと言っているだろう。安心しろ。試験の結果は適当に改竄しといてやる」

「……ハンター辞めてぇなぁ……」

「ふっ、無理だな。今更協会がお前を手放すと思うか?」

「絶対に有り得ないなぁ……」


 一応俺はSSS級と言う世界の頂点に立つハンターだから、手放そうものなら損失は計り知れない。

 まぁ俺的には、残りの4人で何とかなりそうな気もするが。


 俺がそんな事を考えていると、協会長がふと何かを思い出したかの様な顔をすると、普段通りの口調で言った。 


「———そう言えば能力測定、今日の12時30分からだからな」


 ふーん今日……………………は?


 俺が時計を見ると、現在11時50分。

 

「———やっぱりクソババアだなお前!! 幾ら何でも頭おかしいだろ!!」

「ははははは!! 頑張って行くがいい! 行かなければお前の個人情報を全て総協会長に渡すからな!」

「くたばれクソババア!!」

「ああっ!? お前巫山戯るな! あのガラスクソ高いんだぞ!!」


 俺は仮面と外套を装着すると———壁の強化ガラスを蹴り割って地上100メートルから飛び降りた。


 心地よい協会長の怒鳴り声を聞きながら———。





「あの生意気なガキが……」

「今回は全て協会長が悪いわよ。そもそも協会長は彼のどんな秘密を握ってるの?」


 彰人が居なくなった部屋で毒付く協会長に、麗華がふと質問をする。


 麗華にとって彰人は自由奔放な人間で、とてもでは無いが、制御など出来ない様に思えた。

 そのため、現にこんなにギリギリの時間にも関わらず、文句を言いながらも素直に従う彰人に違和感を感じていた。


「……これは教えれんな。麗華が奴の彼女にでもなれば話は別だがな?」

「な———っ!?」

 

 揶揄う様な笑みを浮かべて言った協会長の言葉に、分かりやすく顔を赤くする麗華。


(ふっ……やはり麗華には言わん方がいいな。これも麗華の為だ)


 そんな麗華を見ながら、協会長は彰人の秘密を心の奥にしまった。









「———此方が番号札です」

「ありがとう〜! 因みにお姉さんこれ終わったらお茶しない?」

「すいません。そう言うのは受け付けておりません」


 能力測定の受付を終え、番号の書いてある札を貰い、無事お姉さんにお断りされた俺は、一先ず間に合ったことに、ホッと安堵のため息を吐いた。

 既に仮面と外套は外してある。

 

「それにしても……人多いなぁ……」


 幾ら辺りを見回せど、人人人。

 年齢層も10歳程度ばらつきがある様だ。

 

 そんなことを考えていると、スピーカーから案内の音が聞こえてきた。

 

『これより能力測定を始めます。番号1〜100の方は学園の測定室へと移動してください。残りの方は控え室にて待機を宜しくお願いします』

「控え室ね……まぁ取り敢えず指示には従っておくか」


 俺は人混みの流れに身を任せて控え室へと移動した。

 

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