第34話 「宴会」とう名の「魔界」③

5⃣ 葉山と、その愉快な魔物たち


 コーチ同士は、今までも、何かとお喋りする機会もあったので、必然的に、葉山の元へ、みんなが集まってくる状況となってきた。

(断っておくが、男が一人しかいなかったから、仕方なくというか、怖い物見たさと言うか・・・である)


<ほっとけ!>


「ねえ、葉山監督ぅ~、私、前にどっかで、その特徴ある顔と、会った事があるというか、見たことがあるような、ないような」と、穂乃香コーチが絡んできた。


「ないな。あったら、こんな美しい女性を、俺が忘れる訳がない」


「えっ、なに、何? 良く聞こえなかった」と穂乃香コーチが、聞き直す。


「こんな、やかましい女性を忘れる訳がない。と言った野田(のだ)」


「キャー、野田さん」


「澪コーチは、病気ね」と、美弥コーチが、冷たく言い放つ。


「さっきは、『こんなに美しすぎる女性を』って言ったのに」


「ちゃんと、聞こえとるやんか。と言うより、言葉を追加しすぎとるし」


「ここまで出かけているんだけど・・・思い出せないんだよねぇ~」

と、穂乃香コーチが、頭のてっぺんを押さえて言うと、すかさず瞳コーチが、

「年くうって、いやよねぇ~。それに押さえる所、間違っとるし」


「瞳おねえさまだけには、それ言われたくないですぅ~」


ここで、よせばいいのに、葉山が、ボソッと、

「若い子は、年がどうのこうのは、言わないんだよなぁ~」


この一言で、『火に、油やらテキーラやらを注ぐ』状態に陥ってしまった。


「何がよ、この中で、一番、ジジイなくせして」と穂乃香コーチ。

「男は俺一人やから、一番は当然やがね」


「まあまあ、過ぎた年月は戻らないんだから、そのくらいにして・・・」と仲裁に入ったつもりで、真子コーチ。


「はいはい、ここまで。ネガティブ・プロンプトの入力は、ここまで」


「美弥コーチ、 今言った、ネガティブなんとかって何?」


「今、流行りの、AIでの画像生成の時なんかに使うんだけど、めんどくさいから説明は無し」


「俺も、ミッドジャーニーとか、レオナルドAIで、画像生成やってるぞ」


すると、「私もやってるぅ~」と、インスタグラマーの真子コーチと、グラフィックデザイナーの卵、澪コーチが言った。


「もう、みんな凄いわ。なんかついていけない」と瞳コーチが、ボソリ一言。


 ここで、話題が急に変わる。女性同士の会話では、ありがちな事だが、特に今日はお酒も入ってるし・・・


「ねぇ、葉山コーチン、奥様ってどんな人?」と、またもや、穂乃香コーチ。


「穂乃香コーチが、多分、知ってる人」


「えーーーーーーー、誰ですか」


「穂乃香コーチは、『ヨネッスケ』の実業団チームで活躍してたんだよね」

「そのとぉ~り」

「♬ ピアノ売って ちょうだぁ~い🎵」(これは、真由香コーチ)


「先輩に、【島崎 優里亜】って、いただろう?」


「えっ、はい!、えっ、通称『ヨネッスケの女神』の、あの、島崎先輩ですか」


「そう、優里亜が、僕の奥さん」


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 (素晴らしい、ロングトーンボイス)


「私も、知ってます。『ヨネッスケ』の全盛期を支えた、超美人天才テニスプレーヤーですよね。私のいた『国分ケンコーTOKIO本社』でも、よく話題になってた人で、会社のイメージガールとかもされていて、先輩から、いろいろ話は聞いてました」と、天音コーチ。


すると、穂乃香コーチが、

「あっ、思い出した。何かの時に、別の先輩から、『優里亜先輩の結婚式に出た時の写真』って言って見せてもらった写真の中の、新郎? ・・・

えーーーーーーーーーーーーーーー」


「なんだ、今度は、短かったな。その写真のカッコいい『新郎』が、俺」


「うそ ?  夢なら覚めてほしい」


「嘘じゃないわー!」


「だって、フランス人の、超イケメン男性と結婚されたって聞いてましたけど」


「その、超イケメン、フランス人男性が俺。正確に言うと、フランス人の母と、日本人の父との間に生まれた、ハーフだがな。

ちなみに、祖母は、オーストリア人で、ルーツを辿ると、スペイン人の血も、入っている。いわゆる『多国籍ハーフ・イケメン』だな」


「えーーーー、 でも、そん時の写真と、だいぶ違うような、違ってほしいというような」


「なんじゃ、それ! そんなに言うなら、ほれっ」

と言って、スマホを取り出し、アルバムアプリを開いた。そして、結婚式当時の写真を、コーチ陣に疲労、じゃない、披露した。


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「超イケメン」

「それが、どうして、こうなる?」

「悪いもんでも食べ続けた?」

「整形してたのが、元に戻ったとか?」

「奥様、超絶美人!」

「こんな風に生まれたかったなぁ」

「奥様、後悔されてませんか? なんで、結婚しちゃったんだろうって」

「なにかの、間違いよ、これ」

「間違いであってほしい」

「結婚詐欺に近い物を感じる」


「ほっとけ!、お前ら、言いたい放題言いおって」


「本当に、フランス人の血が流れているんですか?というより、人間の血が、通っているんですか?」


「どう言う意味じゃ、それ!

Avec tant de gens ayant de mauvaises habitudes en matière d’alcool, je suis désolé pour l’avenir.

(こんなに、酒癖の悪い人ばかりだと、この先が、思いやられる)

と、流暢なフランス語を披露した。


「みんな、騙されちゃダメ!、フランス語みたいのが話せたからと言って、地球人とは限らないんだから」と、ベロンベロンの瞳コーチ。


「優里亜は、穂乃香コーチの事、知ってたぞ。国体とかの試合で、『国分ケンコー』の応援に何度か行っていて、大活躍中の穂乃香コーチの事は、強く印象に残っていたみたいだ」


「わぁっ、本当ですか?」


「ああ、本当だ。この目が嘘をついている目に見えるか」

と言って、目を、三日月型にしてみせた。


「嘘しか、ついてないようにしか見えませんけど」


「まあ、それはともかくだ。優里亜の一目惚れでな。お互い、ソフトテニス界で活躍していたから、大会でのレセプションとかで、顔も会わせていたし。佐賀国体の時、大会後、大分県の湯布院へ、観光に出かけてだな。その時、偶然一緒になって、そん時は、グループで行動したんだが、こそっとお互いに、連絡先を交換し合って、交際が始まったって訳よ」


「話、盛ってません? 特に『奥様の一目惚れ』って言う部分」


「盛るってるに決まってるやないの。無理やり襲ったか、結婚詐欺か、はたまた、新手の催眠術とか、違法行為満載で、陥れたに決まっとる」


「だよねー」


「好きに言っとけ。でな、交際半年で、結婚した。

子供とかの話も、今までしてなかったな」


「聞いてましぇ~ん」


「長男は、アメリカのOPEN HOUSE AI社の社長をしていて、子供が2人いる。娘は、歌手のREIRA『麗羅』だ」


「オペン ホーセ?」

<言うとは思たが・・・突っ込み入れると、更に絡まれるので放おっておこう>


「じゃあ、本物の、おじいちゃんって事ですか?」


「なんか、言葉に棘があるな。・・・まあ、そう言う事だ」


「失礼ですけど、『麗羅』さんって、聞いた事がありませんが」


「活動拠点が、ヨーロッパだからな」


「なんか、すごいですね」


「前から聞きたかったんですけど、どうして、普段は、そんなんなんですか?」


「何か、おかしいか」


「変人そのものなんですけど」


「はっきり言うなぁ~」


「会社でも、こんなん?」と、美弥コーチが、人愛コーチに尋ねた。


「ある時は、清掃のおじさん、ある時は、覗き魔、しかしてその実態は・・・・」


「実態は?」


「よく、わかりましぇ~ん」


「なんじゃ、それ」


「だって、よくわかんないんだもん。人間離れしていて」


(もう、人愛コーチの、言動には免疫が出来ていたので、軽く聞き流す葉山であった)


「写真の人物と同一人物なら、もっと普段から、シャキッとすればいいのに。そうすれば、少しくらいは、女子高生に、もてるかも」


「別に、JKに、もてたいとも思わんし、これのどこが悪い?」

と言って、アニメ『鉛筆 芯ちゃん』のプリントされたシャツを指さし、もじゃもじゃヘアーを、手でかき上げた。


「なんか、深く考えると、疲れてくる」


「話題、変えようよー」


 結局、5時間に渡り、宴会は続き、おひらきとなったのである。

お店の従業員は、とっくに帰った後で、『大奥の間』以外は、真っ暗であった。


宴会場には、無数の酒瓶が横たわり、

それを見て、ほくそ笑む天音コーチがいた。


<毎度ありぃ💛ーーーー>

目が $$ になっていた。いや、日本人だから ¥¥ か。


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