第33話 「宴会」とう名の「魔界」②

3⃣ 真子コーチと美弥コーチ 割って入って、人愛・美弥コーチ、


「真子コーチ、看護師って大変でしょ?」と美弥コーチ。

「今は大丈夫。ヘルプ要員だから、自分の都合のいい時だけ、お手伝いに行ってるっていう感じ」

「へぇ~、そうなんだ。けっこう気楽なんだね」


「どこの病院も、常に看護師が足りないような状況だから、引く手あまた状態。やっぱ、資格を持っていると有利ね。私の場合は、行く病院は一つだけど」

「長賀屋市内の病院?」

「うん。主人の病院」

「えっ、ひょっとして、真子コーチも病院長夫人?」

「言ってなかったっけ?」

「聞いてない、聞いてない。穂乃香コーチも病院長夫人だし。いいなぁ~」


 すると、それを聞いていた、人愛コーチが二人の間に割って入る。


「なに、何、ナニ、8名の内、二人も、病院長夫人?  多岐商テニス部って、玉の輿率、高いですね。・・・・と言う事は、私にもチャンスがあるかも」


「ない、無い、ナイ!、あんたは絶対に無い!」と、澪コーチ。


「何よ! そんなのわかんないじゃん。あんたこそ、ノーチャンスね。人の事はいいから、黙って大好きな鯖フライでも、食べとき!」


「やっぱり、二人とも仲いいんだ」と、真子コーチが、澪コーチと人愛コーチに言った。


「どうして、そうなるんですか!」と、二人が声を揃えて言う。


「だって、鯖フライが好きだなんて、仲良しでなきゃ、知らないでしょ?」


 ・・・・・・・・この勝負、真子コーチの完全勝利!・・・・


「真子コーチは、どうやって、ご主人さんと知り合ったんですか?」と、独身の二人が、身を乗り出して聞いた。


すると、美弥コーチが、

「そやぁ、どうせダンスチーム『ナイチンゲールズ』で、自分をアピールしたんでしょ? もしかして、セクシーダンスで、誘惑しまくったとか」


「あんたねぇ~、見たような事、言わないでよ」

「違うの?」

「う~  当たらずとも遠からず」

「やっぱりね。でなきゃ、病院長と看護師がくっつくって、有りそうで無いパターンだもんね」

「そんな事ないよ、けっこう有るよ」


「そうなんですか。・・・じゃあ、病院長夫人・・じゃない・・看護師になるには、どんな勉強したらいいですか? 先輩、教えてください」と、澪コーチが食い入るように聞いてきた。


「あんたじゃ、無理ね」と、グラフィックデザインの師匠である、美弥コーチが冷たく言い放つ。


「えーーーーー、ひどい! 美弥コーチは、いつも『可能性は無限なんだから。自分の感性、力を信じて、前に突き進む事が大事』って言ってるじゃないですか」


「そんな事、言ったっけ?」


「まあ、まあ、相変わらず、こちらの二人も仲いいわね。まあ、いつか、【必殺! 病院長の落とし方】を教えてあげるわよ」と、真子コーチが言う。


「お願いします。本当に教えてくださいよ」


「じゃあ、私にも」と人愛コーチ。


「二人とも、もてるでしょ?別に病院長だけが、男じゃないし」と、美弥コーチ。


「病院長夫人がいいんです!」と、声を大にして言う独身二人。


「あっ そ」


(・・・もう、ほっとこう。この二人は)

そう思う、真子コーチと、美弥コーチであった。


「ところでさぁ、社会人になってから、試合で対戦する事って無かったよね」

「そうそう、不思議とね」

「いつもブロックが別だったりして」

「でもそれって、二人とも、決勝戦まで勝ち上がれば、関係無いじゃん」

「だよね。だから、どちらかが、調子良ければ、どちらかが悪かったって事よ」


「なんでこんなに、テニスって面白いんだろう。ただ、ボールを追いかけて、コートを走り回り、ボールを打ち返すだけなのに」


「だよねぇ~、 後衛ってホント、上の試合へ行けば行くほど、自分がポイントを取るというより、いかに繋いで、いかにチャンスメイクするかとういう、言葉は悪いかもしれないけど、【縁の下の力持ち】的存在になってくるもんね。いい所は、前衛が持って行くというか」


(真子コーチも、美弥コーチも、二人とも後衛なので、お互い思う事は、一緒の部分が多かった)


「でも、それでもおもしろい。楽しすぎる。テニスって」


「私、最近、思うんだけど、多岐商のテニスコートへ行くのが、楽しくてしょうがないな」


「へぇ~・・・実は、私も」


「今のクラブ員の子、全員、本当に良く頑張ってる。メチャメチャ走らされているのに、誰も諦めないでいる。『もう、死ぬぅ~』とか、『卒業式に絶対仕返しする』って言いながらも、結局、最後までやり遂げてる」


「なに?  何? 『卒業式に絶対仕返しする』なんて言ってるの?」


「言ってるよ、しかも、私たちの前で堂々と」


「へぇ~、すごいな、今の子は」


「私たちも良く言ってたじゃん。『絶対に卒業式に呼び出して、仕返ししたるし』って」


「言ってた。言ってた。ただ、コソコソっと陰口で」


「なんかさぁ、今のクラブの雰囲気、最高だよね。それぞれ思う事はあるのだろうけど、みんな、なんだかんだで、テニスを楽しんでるって感じがする」


「自己紹介の時から、雰囲気、良かったね。一見、先輩・後輩の垣根が無いように見えて、肝心な所では、みんな、先輩を敬う事をわかっていてくれる。でも、特に休憩時間なんか和気藹々で、年齢なんか関係なく話が出来ているし」

「和気藹々なんだけど、メリハリもしっかりあるっていう、いい感じかな」


「それと、もう一つ思う事は、安子の存在が大きいと思ってる。最初見た時は、『この子がテニスやんの』ってビックリしたけど、あの子の頑張りはすごい!本物。

安子の頑張りを見てるから、他のクラブ員も、『私も頑張る』って、パワーをもらってる感じがする」

「そうだね。それと、ナナミーと、アベチの頑張りも凄い! この二人がしっかりしていて、クラブ員を引っ張っていてくれる。これも大きいね」


「あとさぁ~、これ、あんまり言いたくはないんだけど、私たちって結局、【お釈迦様の手の上で、いいように遊ばれてる】って感じかな」


「でもさぁ、それでいいんじゃない?」


「ところで、『お釈迦様』って誰の事?」


「言いたくない、言いたくない。わかっているけど、言いたくない」


「だよねぇ~」


「お釈迦様かぁ~、ただの変態にしか、見えん時があるんだけど」


「だよねぇ~」


( そんな話声が聞こえていた、真正面にいた瞳コーチは、目を細めて笑っていた。デビルイヤーの能力が、いつの間にか備わっていたのである)


恐るべし!葉山の感染力・・・瞳コーチの今後はいかに?・・・


『瞳コーチ、あまり葉山に近寄らない方がいいよ。碌なものしか、もらわないから』と思う、テニスの神様であった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


天音コーチが

「みんな、ビール以外のアルコールいる?と聞くと、すぐさま


「いるぅ~」「いりま~す」「欲しいー」



「日本酒、出来たら大吟醸酒でお願いしますぅ~」

(誰だ?お金払わんでいいと思って、大吟醸頼むやつは)・・・葉山が辺りを見渡す。


「いも焼酎くださーーーーい」

「わたしは、むぎィ~」


「ワインあります? 赤ワイン」

「ギャハハハァー、ワインちゅう柄かね」

「何よ! 文句あるぅ?」


「天音コーチ、真由香が、『アルコールなら何でもいい』って言ってますけど」

「そんな事、言っとらんがね」


「真由香コーチ、メチルアルコールでもいい?学校の理科の実験の時に使うやつ」

「よくありません。ワインがいいんですぅ~」

「はい、はい、ワインね」


「私は、『ほろよい』がほしいです」

「誰が、『ほろよい』やねん。(かわいこ)ブリッ子の、人愛君」


「あれ?独身のお二人は、お酒、弱いの」

「たしなむ程度です。すぐに顔が赤くなっちゃうんで」


「ちょっと待ったァーーーーー」と、ここで、シャシャリ出てきた葉山


「『たしなむ』というの日本語の意味知っとんのか?

『たしなむ』ちゅうのは、『おおむね、興味がないわけでもなく、過度に熱中するほどではなく、そこそこに楽しみながら行うことができる』といった意味合いで用いられる言葉やぞ。

 テキーラをショットでグイグイいくやつらが、何言うとんねん。

お前ら、日本一『ほろよい』が、似合わんわ!」


「はい、はい、だいたいわかったから、適当ぉーに持てくるわ」と言って、天音コーチが、調理場へ電話をした。

「佐橋君、ありったけの、お酒持って来てぇ~💛」


<鴨がネギ、鴨がネギ、ネギが鴨を・・・しょって来たぁーーー>

<恐ろしや、あのねコーチ、もとい、あまねコーチ>

・・・葉山と天音の、それぞれの思いが、交錯するのであった。・・・


・・・・お酒も増えて、益々ヒートアップしてきた、宴会・・・


4⃣ 真由香コーチと天音&穂乃香コーチ、よせばいいのに葉山が絡む


「私が、卒業する時に、入学してきたんだよね。天音コーチは」と真由香コーチが言った。


「幸か不幸か、そうです」

「おもしろいやん。それ」


「でも、すごいお店ね」と、穂乃香コーチ

「ありがとうございます」


「穂乃香コーチは、真由香コーチの2歳上なんですよね?」と、天音コーチが尋ねたる。


「そうそう、私の方が、2つも若い」

「今更、そんなの関係ないわよ」

「2歳差って、大きいわよ。化粧乗りとかも違うし」

「あんたねぇーやけに絡んでくるやん。まあ、美しさで言ったら勝てんから、年の差でせめてくるしかないのは、わからんでもないけど」


「まあ、まあ、どっちもどっちだし」


「あんたねぇ~」 天音コーチに向かって、声を揃えて言う、穂乃香・真由香コーチ。


「夏休み前だっけ、二人で大喧嘩してさあ。でも、社会人になっても、ずーとここまで、ペアでテニスしてるって、不思議っちゃ、不思議」


「あれ、なんで喧嘩したんやったっけ」

「忘れたのぉーーー?」


「真由香は、『自分が決めてやる』っていう気持ちが強すぎて、あんまり守んなかったんだよね。センターポジションを大胆に取ってて。

で、試合中、よくストレートで、抜かれてた訳よ」


「だって、コーチが、センターポジション、センターポジションって、うるさかったから」


「また、人のせいにして。あんたの性格からでしょ」

「で、インターハイが近づいてきいて、気がピリピリしている時に、相変わらず、守りが弱かったから、ブチ切れたわけよ」


「そんな事もあったっけ」


「痴呆症か」


「よく、こんなのから、あんな優秀な子が、できたもんよ」


「琴菜ちゃんの琴、いや、事?」と、わかりにくボケを入れてきた天音コーチ


「反面教師っちゅうやつやね。こんなふうになっちゃあかんと思って、琴ちゃん、頑張ってる」と、真由香コーチを指さして、穂乃香コーチが言い放った。


「ところでさぁ、話変わるけど、真由香コーチっで、国際線のスチュワーデスさんだったんですよね」

「今は、キャビン・アテンダントって言う言い方に変わったけどね」


「何?、なに? 『キャビア、合ってんだけど』って、なにぃ~?」

と、おやじが一人、絡んできた。


「ほら、来た」

「今日はいいですねえ、葉山監督」

「何が?」

「こんな絶世の美女に囲まれての、男性一人。ハーレム状態なんて」

「絶滅の美女?」

「誰が、絶滅しとんねん。絶世、絶世の美女」


「それは、おいといてだな。国際線のキャビアなんか、なかなかなれんだろ? 

たいしたもんだな」


「監督、酔ってます?」

「全然」

「でしょうね」


「なんか、多岐商から、キャビアなんて、イメージつかないけどな」と、天音コーチも。

「あのね・・・・もうなんでもいいか」

(全国のキャビン・アテンダントのみなさん、ゴメンナサイ)


「けっこう頑張ったんだよ。大学の時は、テニスに、勉強に大変だった。スチュワーデスになれたのは、運もあったけど」


「運だけではなれんだろ。普通は」


「なんか、ここに集まったみんな、すごい人ばかりだね」


「そうだな。そういった優秀な人たちと、触れ合うだけでも、クラブ員には、良い影響を与えるんだろうな。テニスだけでなく、いろんな知識、経験もどんどん、話してやってくれ」


「葉山監督って、たまーに、極、たまーに、いい事、言うんですね」


「引っかかる部分はあるが、褒め言葉として受け止めておこう」



・・・・・おいしい料理、おいしいお酒、そして何より、一つの目標に向かい、一致団結した、ソフトテニス大好き人間たちの、とりとめない話は、延々と続くのであった。・・・・・




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