第23話 お弁当の時間②

「よぉーし、みんな食べ終わったようだから、デザートとして、お菓子を配るぞぉー」


「やったァー」


「ちなみに、天音コーチからの差し入れです」


「ありがとうございます。天音コーチ」


「いえいえ」

(とっても大きな、くり饅頭が1箱に12個入っており、それが2箱あった)


「おい、みんなぁ~ 一人1個づつ持ってけー」


「大きいから、いっぺんに食べなくてもいいよ」


「はーーーい」


「監督ぅ~」


「何だ」


「このお菓子、やすこも1個食べていいんですか?」と、しおりん。


「そだな、ダイエット中のやすこは、無しにしとくか」


「えーーーそんなぁ~、愚れてやる!」


「冗談だよ、上段。 お菓子切ってやるから、半分だけ食べろ。

上の部分がいいいか、下の部分がいいか、どっちだ」


「普通、半分って言ったら、縦に切りません?、横に切ってどうするんですか」と天音コーチ


「その方が、おもしろいかと」


「もう!、私が切ってあげるから、安心してね、やすこ」


「ありがとうございます。一生、天音コーチについていきますぅ~」


「ところで、余った半分は、どうするんですか?」と、あべち


「第1回、春のじゃんけん大会を、只今より開催いたします。参加ご希望の方は、ここに集まってくださーい」


「はい」

「はい」

「はーーーい!」


「では、ルールを説明します。商品は、こちらにお見えになる、くり饅頭左側君です。くり饅頭右側君は、不本意ながら、間もなく、やすこのお腹に吸収されてしまう予定ですが、左側君は、まだ健在です」


「監督ぅ~、軽く、やすこをいじってますよね」


「そう聞こえた?」


「そうとしか聞こえなかったです」


「では、ルールを説明する」


「『最初はグー』で、全員でじゃんけんをして、勝った者が、2回戦へ進んでいくというふうで、最終勝者が、左側君をゲットできます」


「やすこも参加していますが、いいんですか」


「しょうがないなぁ。やすこが優勝しちゃったら、左側君の、上半分をやろう」


「やったね、やすこ。頑張る理由ができたね」


「上半分って、くり餡無いじゃん」


「やすこは、ダイエット中だから、仕方ないよ」


「そうそう、みんな、やすこの事を思って、言ってるだけだから。なにもいじわるしている訳じゃないからね。勘違いしないでよね。」


「んだ」


<そうは、絶対に見えんけど>


「では、始めるぞ。『最初はグー・・・』」


「ちょっと待ったーーーーー」と言って、コーチ陣が、なだれ込んできた。


「私たちも、もちろん参加しま~す」


「えーーーーーーーー」


「文句ある?」


「ありまーす。くり饅頭カロリー高いから、太りますよ」


「そんなの関係ねぃ。そんなの関係ねぃ。おっぱじめよぉー」


「競争率高くなっちゃったね」


「つべこべ、言わない。要は勝てばいいのよ、勝てば」


「テニスの試合と同じだぁ」


「そう、ロミオ。たまにはいい事、言うねぇー」


「もしかして監督も入るんですか」


「当然だろうが」


「監督だけには負けたくないな」


「今、言ったの誰だ?」


「やすこでーーーす」


「やすこぉーーーー、後で第一グラウンド3周な」


「監督ぅ~私、何も言ってないのにぃ~」


「わかっとるわ!、でもくり饅頭半分は食べるだろ。だから、その分は走らないと」


「なんか、いいように言いくるめられたね」


「んだ、んだ」


「たらば蟹」


「それ何よーミルキー」


「いつもの、『確かに』では、つまらないかと思って」


「わかりにくぅーーーーー」


「早く、じゃんけんやろうよ」


「そやな」


「では、みなさん、お手を拝借・・・最初はグー、じゃんけんポーン!」


「あーー、負けちゃった。なんでピー出すのよ。私の右手」


「こういう時は、『黄金の左手』で勝負しなきゃ。バッカねぇ~」


「じゃあ、次いくぞ。・・・最初はグー・・・・・」


なんだかんだで、壮絶なじゃんけんバトルも、勝者2名を残すのみとなった。


 その勝者とは・・・・・


「ここからは、私が仕切ります」といって瞳コーチが、じゃんけんの掛け声を引き受けた。


「只今より、春のパン祭り・・じゃない、春のじゃんけん大会、決勝戦を行います。

赤コーナー、クラブ員代表、レイナー、対しまして、青コーナー・・・・・・

みなさん、ちょっとお待ちください・・・

 只今、速報が入りました。青コーナーの勝者は、突然の腹痛により、決勝戦を辞退するとの事です」


「勝手に、辞退にせんといてやぁ~、『正義は必ず勝!』、

みなさん、お待たせしました。葉山、葉山俊博に、ご声援、よろしくお願い申し上げます」


「レイナー頑張れー。絶対に負けちゃだめよぉ。」


「頑張れレイナ。悪の力に屈しちゃだめよ!」


「いけいけレイナ、強いぞレイナ、行けぇーーーー」


「正義は必ず勝つ。自分を信じろ、レイナ」


「対しまして、青コーナー、葉山監督ぅー」


・・・・・・・・

・・・・・・・


「何か言ってよぉおおおお。ブーイングでも何でもいいからよう」

<もう、みんな、何も言わない事が、葉山監督に対して、ダメージを一番与える効果的な策である事を学んでいたのである>


(へたに、何か言うと、葉山は、それをエネルギーへ変えて、更にパワーアップしてしまうのであった)


「では、いきますよう。『最初はグー、じゃんけんポーン』


パーとピーに分かれた!

勝者は?・・・・・・・・


「勝者、残念ながら、葉山監督ううぅぅぅ」


・・・・・・・・


「昨日ね、テレビでV1グランプリやっててさぁ・・・・・・」


「アオンで、安売りやってるよー後で行こうか?」


「また、しみができちゃった。ヤダヤダ」


・・・・・・・・・


「悪がはびこる世界って、やーね」


「これが『周りの空気が読めない』ってことね」


「世の中、常に正義が勝つとは限らない事を身をもって知りました。」


「今、ここへ大きな隕石が落ちて来て、くり饅頭が食べられなくなったら、恨むだろ

うな。『左側君を食べてから、最後を迎えたかった』って」


・・・・・みなの声援?を受け、もはやミイラ状態であった葉山が復活した。


「ふっふっふ、みんな、私が運のみで、優勝したと思ってないか?」


「悪運のみじゃないんですか?」


「ふふっ、それが違うのだよ、レイナ君。君は、決勝戦まで、一度も、グーを出していなかった。

という事は、ピーを出しておけば、悪くても引き分け。君がパーをだせば、私の完全勝利。

ちなみに、準決勝まで勝ち上がったジュリエットは、グーピーパーの順番出しパターン。

真由香コーチは、グーのみで、準化粧まで、勝ち上がって来ている」


「準化粧!ではなく、準・決・勝!」


「細かい事はともかくだ。ようは、何事も観察力が必要ということだ。これは、テニスについても言える。相手を観察し、どう試合を運んだらいいかを考える事が重要。

 選手だけでなく、もちろんコーチにも、この能力は必要だ。これが出来ないと、試合中、適切なアドバイスが出来ないからな。なっ、人愛コーチ」


「どうしてだろう、言葉が、心に染みてこないです」


「おみゃーぁさんに聞いた私が、バカだった」


「聞く相手を観察する能力は無いみたい」と澪コーチ


「うまい!、座布団一枚!」

と言って、葉山が手をたたこうとした瞬間・・・・

右手に持っていた左側君が・・・

ヒューと飛んでった。


「ばい倍きーーーん」てか。


「悪の栄える試しなし」


「結局何だったんでしょう。今までの時間は」


「神様って本当にいるのね」


「フフフッ、君たち、先ほど私が何と言った。『観察力が必要』と。

お菓子の箱は2つ、1つの箱には、くり饅頭が12個も入っている。

1つの箱は、12名いるクラブ員へ。そしてもうひと箱は、コーチ陣へ。

コーチは私を含めて8名。ということは・・・・・

 ロミオ、箱の中にはいくつ残っている?」


「一個も残ってませーーーーーん」とロミオ。


「何を言っている。12-8だぞ。算数苦手か?」


「そこまで言うなら、箱ん中、見てくださーーーい」


葉山が、テーブルの上にあった菓子箱を持ち上げる

<ん? 軽いぞ、おかしいな>

不安一杯に箱を開けてみる。


「無い、何にもなーーーい!」


すると、ロミオが、

「フフフフフッ、監督、観察力が無いですね。

さっき、コーチの方々が、全部食べて見えましたけど」


 葉山の完敗であった。


一方、コーチとクラブ員は、完全勝利という事で・・・・


「乾杯!」


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