第22話 お弁当の時間①
お弁当の時間①って事は・・・②とか③とかもあるって事? 練習は?
昼休憩は、テニスコートに隣接する休憩所でとる事とした。
60名までなら、余裕で入れる休憩施設で、男子・女子それぞれにあり、とても恵まれた環境下にあった。
テーブル席の他に、畳の間、炊事場、お客様用茶室?がある立派なもので、過去の栄光がもたらした財産である。ちなみにトイレは、違う場所にある。
学校には、別の場所に、クラブ活動専用のクラブハウスがある。ここは、大食堂や、小食堂、男女別更衣室・シャワー室も完備し、2階は、畳の大広間が4室もあり、クラブ関係者なら、自由に利用が出来る施設で、他校が来校した時などに、利用をしていた。
(本当に余分な話ではあるが、中食堂が無いのは、『中毒食堂』をイメージさせるからである。・・・しらんけど)
お昼も、コーチ陣とクラブ員は、少し距離をとって、それぞれに席を取った。
葉山は、コーチ陣に加わった。
「それでは、12:30まで、お昼の休憩とする。コーチから、お菓子の差し入れをもらっているので、ご飯を食べ終わった頃にみんなに配る。昼からの練習に向け、食べ過ぎないように」
「はーい」
「では、食べよう」
「いただきまーす」
「無い、無い、どこにも無い! お弁当が消えたーーー」
突然、じゃがリコの大声が、響きわたる。
「リュックの中、よく探した?」
「うん」
「忘れてきたんでしょ?」
「ちゃんと、リュックの中に入れたの覚えてる」
「じゃあ、誰か食べた?」
「やすこ、あんたでしょ?」と、あべちが笑って言う。
<こういう、冗談・いじりが、直接、やすこに言える雰囲気になった事が、葉山はとてもうれしかった>
「私、多分食べてないと思う。記憶が
「ハッハッはぁー、やすこも言うねぇーーー」
「あっ、 思い出した」
「なによ、リコ」
「赤色のリュックに入れたのに、黄色のリュックがここにある。なぜ?」
「なぜ?って、あんたねぇ~」
「予備のリュック持ってきちゃった。えへっ」
「じゃあ、仕方ないから、一人でコートでも走っときー、ここで見といてあげるから」とナナミー。
「キャプテン、ひどーい!こういう時は、『私のお弁当少しあげようか』とか言うのが普通なのにぃ。鬼!、悪魔!」
「もう仕方ないなぁ~。みんな、少しづつでいから、お弁当、分けてあげて」
「キャプテン、ずっとついていきますぅ~大好き!」
「じゃぁ、このタッパーに、みなさん、ご寄付を」と言って、あべちが、大きめのタッパーをみんなの前に差し出した。
「はい、私からは、お母さん特製の卵焼き、おいしいよぉ~」
「ありがとうごぜいますだ。お代官さまぁ~」
「私からは、ご飯と、きんぴらごぼうね」
「おにぎり一つあげる。シューチキンおにぎり」
「大好きでございますぅ~」
「ゆで卵と、たこさんウインナーをどうぞ」
「かわいいー ・・・ って高校生に、たこさんウインナー?」
「なによー、おかしい?」
「そう言うあんたのお弁当こそ、相当いってんじゃん」
「どれどれ」
「わーーーー、キャラ弁じゃん、しかもアンパンマの」
「あのぉ~、みなさ~ん、私へのご寄付は?」
「じゃあ、アンパンマの顔の部分を、すくってと・・・はい、あげる」
「みんなーこれ見て、言う事は何かな?」
「せーの」
「顔がなくなり、力が出なぁーい!」
「でも、まだまだ足りないあぁー。やすこぉ~ダイエット中でしょ。何かくれない?」
「カロリーの低いメニューばかりだから、おいしいの無いよ」
<やすこは、親にも話したんだ。だから、お弁当にも気を使ってくれている。やすこのダイエットは、家族の協力無しでは、成功しないからな>と葉山。
「かまへん、かまへん。えーと何があるかな?」
「これだ!」と言って、『がんもどき』を箸でつまみ上げた。
「あーそれは、私が一番楽しみにしてたやつぅー。1個しかないのにぃー」
真顔で、じゃがリコが言う・・・
「あのね、なにも自分の食欲を満たすためとか、やすこに、いじわるをするためとかじゃないの。このお弁当の中では、がんもどきが一番カロリーが高くて、危険なの。
私は、やすこの事を思って、この危険な がんもどき を処分してあげようかと」
と言い、その場でパクッと食べてしまった。
「あーあ、食べ物の恨みは、恐ろしいぞぉ~。 知ぃ~らないっと」
「じゃがリコさん、コーチの分も上げるから、コッチに来なよ」
「ありがとうございます」と言って、即行、コーチ陣の元へ行く。
「はい、私からは、和風オリジナルハンバーグね」
「ハンバーグあげちゃうの? 太っ腹ぁ」
「はい、鮭と、かまぼこをあげるから、頑張って」
「ブロッコリーと、マカロニサラダね」
「肉団子2つと、お漬物、これおいしいよ」
「これは、超豪華弁当になったぞぉー。ラッキー」
「いいなぁー私もお弁当忘れてこようかな」
「そう言えば、澪、昔、こんな様な事があったの覚えてる」
「何の事?」
「あんたねぇ、忘れたの? 澪もさぁーお弁当を忘れてきてさ。
そうしたら、曽我先輩が、『お弁当忘れたくらいで、泣かない。私たちのをあげるから』って優しくしてもらって。そしたら、また大泣きしたのを。
そして次の週に、ラケットを忘れて来て、めっちゃんこ怒られてやんの」と、ジンジン。
「あんたねぇー本人も忘れていた黒歴史を、なんで今、言うのよぉ~」
「おもしろいから」
「はいはい、という訳で、今後『ラケット もしくは、お弁当』を忘れた子と、コーチと、監督は厳罰に処します」
と、瞳コーチが、綺麗にまとめてくれた。さすが!
「さあ、食べるよー」
「いただきまーす」
「あれ? また、『いただきます』」
「天音コーチ、『雅』で、お昼のお弁当ってやってる?」
「あるよ。ひょっとして、注文してくれる?」
「うん、たまの休日くらい、楽、したいし。おいしい物、食べたいし」
「だよねー」
「もう、子供の世話とか、犬の世話とか、ついでに旦那の世話とか大変」
「ついでなんだね、旦那は」
「朝起きたら、朝ごはん作って、洗濯して、お掃除して、そうこうしてると、お昼で、お昼寝して、起きると、おやつの時間で、もうほんと忙しいったらありゃしない」
「そりゃ、大変だわ」
「どこが!」
「それはそうと、瞳コーチ、お肌がめちゃめちゃ綺麗なんですけど、お化粧品、何、使われてます?」と、美弥コーチ。
「わかる人には、わかるんだね。今度お店に来たら、コーヒー御馳走するね」
「瞳コーチ、お肌がめちゃめちゃ綺麗なんですけど、スキンケアどうされてます」
「明らかな、コーヒー狙いね。そういう真子コーチには、おしぼりのみサービス」
「で、その美肌の秘密は?」
「それはですねぇ・・・・・・・」
コーチ陣の話題は、『子育て・家庭・仕事・美容・健康・お金』といった、生活に密接した話題ばかりであった。
それに対して、クラブ員の方は・・・・・
「恋人同士が、半年後に結婚しようって約束するとか、離ればなれの二人が、半年後に思い出の場所で必ず会おうって約束するのはドラマでよく見るけど、半年後の交際申し込みって、キャッ、初めて。さっきの思い出すだけで、胸が熱くなっちゃう」
「言われたの、あんたじゃないでしょ。」
「で、やすこ。あんたは、如月君の事、どう思ってるのよ?」
「えっ」
「えっ じゃないわよ。如月君の事、好きなの?それともタイプじゃないの?」
「それは・・・・・」
「じれったいな。女でしょ」
・・・・・・
「痩せようって思った理由の一つが、如月君なの」
「イエーーーイ」
「キャーーー、もっと詳しく教えて」
・・・・・・
「小さい頃からよく一緒に遊んでて、その頃から好きだった。
でも、こんなになちゃってからは、絶対に嫌われてるって。如月君がここに入学するとは知らなかったから、もう前みたいに一緒に遊ぶことも一生ないだろうなって思ってたけど、3月に、如月君とすれ違った時、
『同じ高校だから、またよろしくな。いろいろあると思うけど頑張れよ』って言ってくれて。」
「それで、痩せようって思ったのね」
「痩せようと思ったのは、さっきも言った通り、みんなに迷惑をかけたくなかったから。テニスがしたかったから・・・本当よ」
「うん、信じる。その次が如月君ね」
「あんた、絡むねぇーーー」
「私にも、誰か言ってくれないかな。『明後日から付き合おう』って」
「予約期間が短かァーーーと言うか、中途半端」
「ここの男子ってさぁ、みんな、結構イケメンじゃね?」
「何よ、突然に」
「私もそう思う。先輩カッコいいし」
「佐橋先輩とか、玉城先輩とか」
「あんた、年上が好き?」
「同年より頼りがいがあるじゃない」
「じゃあ、葉山監督とかは? 年上だし」
「問題外」
「対象外」
「想定外」
「規格外」
「公害」
<そんくらいにしといてくれぇーーー>
<もう最後なんか、『害』になっとるし>
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