第19話 クラブ員自己紹介⑥

「次は、大木 ルミ だが、もうみんな、わかるよね」


「【ミルキー】」


「大正解!」


「ちょっとぉー監督、人の名前で遊ばないでください」


「嫌なのか、ミルキー」


「別にいいですよ、ミルキーなら。

『ママの味』だったら、断固反対するところだった」


「ミルキーで、いいんだな。 試合中、『取れるぞぉ~ ママのあじぃ~』て声援が飛んだら、他校から、『あの学校、大丈夫?、みんな近づいちゃダメだよ』ってなるだろうからな、それはやめにしといた。」


ミルキー: <一応、案には入ってたんだ。怖わぁ~>


「という事で、ミルキーどうぞ」


「はい、双子の姉、ミルキーです。妹のドレミと合わせて、『ドレミルキー』です。

彼氏と、『映画、どれ見る気ぃ』なんてね」


<あれっ、ドレミも、ミルキーの事を『双子の妹』って言ってたよな。変なとこで、張り合ってんなぁ~>


「ひょっとして、彼氏いるの?」と、すーあん が心配そうに尋ねる。


「いるよ、ほら、あそこに」

と言って、男子コートの方を見た。


「えーーーーーーーーーーーーーーー」

「うそぉーーーー」

「誰よ、彼氏は?、誰なのよぉー」

「吐け、吐くんだ!」


 今日一番の、盛り上がりを見せる女子コートに驚いて、男子クラブ員が、練習を止めて、全員こちらを見ている。

「何ごと?」


しょう君と付き合ってる」


「流川 翔?」


「うん」


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「幼馴染だし、家近いし、ジュニアクラブで、テニス一緒にしてたし。翔君から、告白されちゃった💛」


「えぇーーーーーいいなーーー」


「みんな、盛り上がっている所、すまないが、自己紹介を進めたい。

彼氏の件は、あとで、とことん追及してやってくれ」


「クラブ入っちゃうと、デートが出来なくなるから、クラブは入らないでおこうねって約束していたけど、やっぱり、二人ともテニス好きだし、テニスコートが隣同士だから、デートしているのと変わらないし。って事で入部しました。

 でも、勘違いしないでね。クラブに入ったからには、真剣にテニスします。私も、中学の時、ほとんど勝った事がなくて。やっぱり、このままでは止められないなって。

翔君も同じ気持ち」


「最後のは、いらんぜよ」とカレー。


「気のせいか、殺気とういか、ジェラシーの炎がメラメラと燃え上がっているようなので、次の軽部にいくか」


「監督、みんなを焚きつけてどうするんですか。もう!」と、瞳コーチ。


「でも、まだ家族の事とか、特技とか、変な癖とかを聞いてなかったな。

何かあるか?」


「ありまーす。私、エレクトーンなら自信ありま~す。テニスは自信ないけど」


「すごいじゃないか。なかなかむつかしい楽器だし」


「でしょ。エレクトーン奏者に812アスカさんって言う方がいるんだけど、その人に憧れて、エレクトーンを始めました。『ビッグブリッヂの決闘』とか得意です」


「アスカって、『茶毛』&・・

「違います!」

「アニメの、アスカ・ラングルー『オバンゲリオン発信!』なんつって」

「それも、違います!」

 

「本当は知ってるくせに」


<あれっ、なんか、久しぶりに、コーチ陣から殺気が・・・・・>

(エバン・・・オバン・・・それな)


<早く次に行った方がよさそうだな・・・>


「次の軽部も、面白いぞ」と葉山。


「もう、やだ!絶対に変なやつじゃん。私の」と軽部 理子が言う。


「今回、みんなの愛称を考えた中では、一番の出来だから、安心しとけ」


「安心なんかできません。・・・今までの流れから、だいたい想像は出来るけど」


「じゃぁ、自分で言ってみろ」


「たぶん・・・【カルビー・じゃがリコ】でしょ?」


「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」


「古ぅ~」と澪コーチ


「さっきのが、ミルキーで、今回が、カルビー・じゃがリコ

『お菓子』繋がりで、ペア決定!ちょうど前衛と、後衛だし」


「みんな、そんな事で、ペアは決めませんから安心して。・・・おもしろいけど」

と、真子コーチが、笑いをこらえて言った。


<あかん、みんな、監督色にどっぷり染まってきている>

穂乃香コーチが、不安げに隣の、瞳コーチを見た。


<あかん、瞳コーチまで、笑っとるし>


「カルビではなく、軽部かるべ理子、またの名を、じゃがリコです。よろしくお願いします。」


「彼氏は?」と、すーあん。


「安心して、すーあんと一緒。

テニスの方は、私、ちょっと変なんです」


「テニスの方だけ?」と天音コーチが突っ込み、瞳コーチに睨まれる。


「はい、テニスの方だけです。ロミオと正反対で、私、バックハンドの方が得意で、フォアハンドよりも、早いボールが打てるし、自分の思った所に打てるんだけど、フォアは、全然打てません。だから、初めての対戦相手だと、まずはバック側を攻めてくるから、第一セットは、だいたい取れるんだけど、試合が進んでくると、フォアが打てないことがバレて、結局、試合には負けてばかりでした。

 だから、コーチには、フォアハンドを教えてもらいたいです」


「確かに変わってるね」と。美弥コーチ


「確かに」とミルキーが念を押す。


「何か、趣味とか、特技はあるか?」


「特技ですか・・・・・・」


「無ければ、無理して言わなくていいぞ」


「うた」・・・本当に小さな声で、じゃがリコが言う。


「歌か」デビルイヤー(嫌やぁー)の葉山が聞き漏らすはずもなく、

「歌ってみるか?」


「えーーーー無理ですぅ、今まで一度も人前で歌った事なんて無いし」


「それなら、なおさら聞いてみたい。自分の殻を破る事も大切な事だぞ。社会に出てみてわかる事だが、歌が上手だと、得する事が多い。思いきって歌ってみなよ」


<聞きようによっては、なんかすばらしいアドバイスをしている様にも聞こえるけれど、『興味本位の塊』みたいな男だからなぁ~>と瞳コーチ。


「じゃあ、歌ってみます」


「よし!、では何歌う?」


「ドリーカムの、大崎LOVER」


「おおーーー」歓声が上がる。

その度に、男子が練習を止めて、こちらを見、小田先生が、迷惑そうな顔をする。


<小田先生、ごめんなさい。今日だけだからね>

<今日だけで済む訳なかろうが。これからが思いやられる>


(^^♪ 目と目で通じ合う~、そーいうーいなぁーかになりたいわー♬)

葉山と小田は、長年ペアを組んできただけあって、目と目で会話が出来るのであった。


「ちょと待てよ、じゃがリコ」と言ってスマホを取り出し、

「大崎LOVERだったな。えいっ、」と言って、カラオケを流し出す。


あわてて、ジャガリコが、歌う準備をする・・・

「♬採集に間に合ったよ、零時前にそっちにつくよ~

^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪^^♪


すご!、ドリーカム、くりそつ!本当にCD音源と同じ!凄すぎる!

高温の伸びも凄いし、独特のビブラートも同じ!

みんな、聞きほれている。


^^♪^^♪^^   恋しくて憎らしい、大崎 ♬」


一斉に拍手が起きる。男子コートからも、拍手やら、口笛が吹かれている。


「すごいな、じゃがリコ。ひとつ殻を破ったじゃないか。

みんな、テニスも同じだぞ。ひとつひとつ、自分の殻を破って強くなっていくんだ。いいか?」


「はい!」


<まだ何か言おうとしている。ここで止めておけばいいのにぃ~」と、人愛コーチは思う。が、そんな思いが通じる訳もなく・・・


「会社に入ると『宴会』といものがある。俺はあまり好きではないがな」


<絶対違うし。ひょとしたら、部下に毎週、宴会を開かせていたりして>と、ほぼ全員が思う・・・


「その『宴会』を仕切る人物を『宴会部長』という。本日、ここに、軽部 理子君を新生多岐商女子ソフトテニスクラブ初代宴会部長に、任命する。おめでとう!」


 歌い終わって、恥ずかしさと、なんか『やったぁー』という達成感で、まだ、ボーとしている理子は、意味もわからず、


「ありがとうございます」と、宴会部長を引き受けてしまった。

(これが、あとから、じゃがリコの快進撃を生む事になろうとは、この時、誰も思わなかった)

・・・思うかい!普通、そんな事!・・・

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