第17話 クラブ員自己紹介④

「では、次は、土屋 レミだな」


「どうせ、【ドレミ】でしょ?」レミが言う。


「残念でした。『ミレド』でした。まだまだ考えが甘いねぇ~」


「幼稚園児並みねぇ~。本当は、『ドレミ』でしょ?

素直じゃないんだから。」

と瞳コーチが、横目で葉山を見ながら言った。


「はい、それでは、ドレミ、自己紹介を」


「監督ぅ~、休憩取りませんか?」と、あべちが聞く。


「あのね、このペースでいくと、今日中に自己紹介が終わらない可能性がある。練習にも早く入りたいし、休憩は無し」

 (どの口が言うか!)


「えーーーーー」「イヤだぁーーーー」と全員が、声を揃えて言う。


「事前練習でもしたかのように、ハモってたな。

今後『えーー』と『イヤだぁーー』は禁止とする。いいか」


「イヤだーーーーー」


「自己紹介中の監督からの、横槍を入れる事も禁止にしては」と、穂乃香コーチ


「嫌だぁーーーー」葉山がダダをこねる。

「それだけが楽しみに、今日、ここに来たんだよぅ。」


「じゃぁ、それを認める替わりに、10分休憩を」と、真由香コーチ


「では、平和交渉成立という事で、10分休憩」


「はい」


またまた、コーチ陣と、クラブ員が分かれて井戸端会議を始めた。


コーチ陣は・・・・・


「はー  ・・・疲れる」

「こんなに長い自己紹介は初めて」

「監督の横槍のせいね、絶対!」

「その点で言えば、真由香コーチも、けっこう入れてるやん」

「あ~ら、そのお言葉、そっくりそのまま、お返ししますわ。穂乃香コーチ」

「完全に、監督のペースに引き込まれているわね。みんな」

「ところでさぁ~、今の子って、先輩とか、全然意識しないのかなぁ~」

「そうだよね、私たちなんか、先輩が怖くて、しゃべれなかったどころか、近寄れなかったし」と、真子コーチ。

「あらっ。そうだったかしら。いっつも、みんなで、アイドルの話ししていたような記憶が。それと、けっこう先輩の私たちに、たてついてたじゃん」

「記憶にございません」

「その言葉は、本当は『記憶がある』時に言う言葉なんだよね」

「でも、いい雰囲気じゃない? 私は、先輩・後輩、クラブ員とコーチって、ビシッと線引するよりも、練習以外では、和気あいあいできた方が楽しいな」

「言えてるかも」

「そうね。時代もどんどん変わってるしね」


瞳コーチは、ふと思った。

<自分と葉山監督が出会った時から、こういった感じだった。なんでも言えてしまうと言うか、フレンドリーと言うか、変な垣根を感じない。

まさか・・・監督は最初っから、こういう雰囲気を望んで、いろいろ横槍を入れているのでは?まだ良くわかんないけど、この短時間の中で、コーチも生徒もお互いが、わかり始めているし。・・・・まさかね>


「人愛コーチ、監督って、会社でもあんな感じ」

「そうですよ。私なんか、清掃のおじさんと間違えて、溜口ついちゃったけど、何んも、おとがめもなし。課長は泡吹いて、倒れちゃったけど」

「わかるーーー。人愛のいる部署の、部課長さんって大変そうだもんね」

「なによ。私の何がわかるのよ!」

「全部」

「はいはい、幼稚園からの幼馴染みさん同士で、傷のなめ合いをしない」

「あと6人か」

「長いねぇ~」

「でも楽しみだな。このあとも何が飛び出す事やら」


一方、クラブ員達は・・・・・


「昨日、自己紹介、何言おうか考えてたら、眠れなくなっちゃって。今日、怖い先輩コーチが来たらどうしようかとも思い、ドキドキしながら来たのに、何か損しちゃった」

「あんたが、自己紹介ごときで、ドキドキする訳ないじゃん」

「あんたに、私の何がわかるのよ!」

「全部」

「そんな事より、男子がさぁーーずっとこっち見てない?」

「あっそうそう。私も男子の熱視線を感じまくっててさぁー」

「それは、勘違いでしょ」

「なによぉーーー」

「まあ、これだけの美女が集まれば、それも当然ね」

「言えてる。言えてる」


葉山が、例のごとく聞き耳を立てている。(デビルイヤー)

<多分、それ、お前らの勘違いだわ。

男子が気になっているのは、コーチ陣の方々のほう。

 あぁーなんか青春だなぁ~。高校1年の時なんか、2年や3年の女子の先輩に会うために、ここに来てたようなもんだったからなぁ。どの先輩も、かわいくて、綺麗で、夢の中では、恋人同士だったし。年上って最高!

 なんというか、もう大人の女性っていうか、神々しくて、『ああ、女神様』てな感じだった。同級生には、そこまでの魅力はなかったし。

 あっ、そうだ。女子顧問の先生もかわいかった。小さくて、おしとやかで。

転んで怪我をした時、先生にバンドエイドを張ってもらって、もう、ぽーーーとなっちゃた事もあったなぁ~・・・>


「もしもぉ~し 監督ぅ~ もしもーし」


「おっ、なんだ」


「おっ、なんだじゃないですよう。10分たちましたけど」と澪コーチ


「なんか、よだれ、垂れてません?」


「何を言う。これは青春の汗だ」


「訳わからんし。絶対に変な妄想にふけっていたようにしか、見えませんでしたが」と、瞳コーチ


<相変わらず鋭いなぁ~>


「全員、集合してるかー」


「してますって!」


「そんな、怒らんでもいいやん。顔のしわが増えるに」

<しまった!、1分前にタイムスリップ出来ないか?>


<出来んわ!>


ひとみ、ほのか、まゆか、あまね、まこ、みや、合体!

巨大スタンドが一撃で、葉山を宇宙の彼方まで、吹き飛ばしてしまった。


・・・・・・・


しばらくして、吹き飛ばされた葉山が、しぶとく戻って来た。


「じゃぁ、ドレミ 自己紹介を」


「はい、ドレミ こと、土屋 レミです。16歳、 独身です」


「あったり前やがねー」

もう、ほぼ全員が、速攻、突っ込みを入れる。


<ほうほう、なかなかいい雰囲気になってきたぞ>と、ほくそ笑む葉山。


「家族は、子作り上手な両親と、姉、兄3名、そして私の、5人兄弟です」


「確かに」と大木 ルミ

(まいど)


「何が?」


「子作り上手ってとこ」・・・・・


「テニスについては、全然、自信がないです。でもダンスは、『ブレイキン』だけど出来ます。兄貴たちがやってたもんで」


「すごーい! ところで、ブレーキって何?」と、しおりん


「あんたねぇ~、わざと言ってない? ブレーキは自転車とか、自動車に付いてるやつ。ドレミが言ったのは、『無礼金』。礼金敷金の無い事ね」と、カレーが、しゃべった。


「あんたこそ、わざとでしょ」と、あれな。


「バレたか」


すると、ドレミ が・・・・・


「『ブレイキン』というのは、

 1970年代のニューヨークの貧困地区で、縄張り争いが多発してた頃、「暴力ではなく、音楽で勝負しよう」と、DJだった当時のギャングのボスが言い出したことによって生まれたものです。その後、BLOCK PARTYと呼ばれる「音楽を楽しむ場」ができて、そこで、踊るバトルが繰り広げられるようになり、1980年代前半には、ニューヨークの大規模なバトルを、テレビなどで放送した事などによって、ブレイキンが世の中に広まっていったんです。『ブレイクダンス』も一緒の事ね」


みんな、ぽか~~~んとしている。あまりに凄すぎて。(説明が)


「ギャングのボスが、DJって嘘っぽくない?」


「ギャングにも、いろいろいるのよ」


「ドレミ に ブレイキン。 うまいこと音楽で繋がったな」と葉山

「しっかし、ドレミ と、大木 ルミは、よく似ているなぁ~」


(二人は確かに似ていた。髪型は一緒、目鼻立ちもそっくりの、JKらしい、めっちゃかわいいっと言った感じの女の子達であった)


「ルミは、生き別れた、双子の妹です」と、ドレミが、真顔で言う。


「真顔で言わないでよ。真顔で。全然、関係ないです」と、大木 ルミ。


「わからんぞぉ~、兄弟姉妹、5人も6人も変わらんし。これが本当の『誤認』でした」

と、またまた、葉山が、チョー余分な事を言う。

・・・・・<すべった。すべってしまった!>


「よし、ドレミは、これくらいにして、休憩するか?」


「次に進みましょうよ」


「さよかぁー」



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