第16話 クラブ員自己紹介③

「次は、え~と、綾小路 レイナだな。

しかし、カッコいい名前だなぁ~ 和と洋の折中せっちゅうというかハイブリッド的な感じで。きっと由緒正しい家柄なんだろうな」


「監督ぅ~、またまた質問です」と、大木 ルミが言う。


「今度は何だ?」


「折中ってなんですか?」


「折中とは、複数の考えや物事などから、良いところを取って一つにすることだ。」


「国語の勉強になります。ありがとうございました」


「俺は、ただ単にテニスを教えに来ているのではない。社会に出ても恥ずかしくない人間を育てるためにも、ここに立っているのである」


<ただ単に、話の流れから、いいように言っているに過ぎないな。これは>

完全に、真由香コーチに読まれていた。


「はい、続きを」


「どうしてわかったんですか。わたくしが、室町時代から続く由緒正しい綾小路家のお嬢様で、品行方正、つつましく、おしとやかである事を」


「なーんも、そこまで言っとらんがね。まあ、由緒とか室町時代という言葉が、とっさに出てきた部分だけは、褒めといてやる。・・・

 では、お嬢様の愛称だが、『あやのこうじ れいな』だから、【あれなぁ】だ。

ポイントは、小さな『ぁ』が付くところだ。」


「えーヤダー。絶対に、『あれなぁ』『それなぁ』『これなぁ』っていじられるパターンやん」


「パターンと言えば、監督の付ける愛称って、みんな、氏名の一部を切り取って作ってるだけじゃん」と、あべちが突っ込む。

「悪いか?」

「悪いとかじゃなく、単純やなぁーと思って」


「確かに」と一言、お決まりの、大木 ルミが言う。


「じゃあ、あれなぁ じゃなくて、『あれな』にしといたる。これなら文句ないだろ?」

「もう、何でもいいです」


「そうなると、私の場合は・・・・・えー、やな予感しかしない」

と、軽部 理子。


「先に進みましょうよ」と、美弥コーチ


「そやな。じゃ、自己紹介再開」


「えーと、自分でもカッコいい名前だなって思ってる、綾小路 レイナです。

よろしくお願いいたします。」

 

「今、思ったんだけど、『あれな』より『ARENA』にしよう。その方がカッコいいし、顔立ちが、日本人離れしとるような気がするから」と、また葉山。


「『あれな』でいいです!」


「実は、おばあちゃんが、アメリカ人だから。お母さんは、クマモトケン人です」


「おかあさん情報、必要か? それと漢字で頼むわ。

まあ、それはそれとして、話をさえぎって悪かった」


<絶対に悪かったとは、思っとらんし> と、全コーチ及び、全クラブ員


「はい、どうぞ」


「I'm glad to be a part of such an interesting team. I can speak English, but I'm not good at studying」

《とってもおもしろいチームに入れてうれしいです。英語はできるけど、勉強は苦手です。》


<おおぅ!> 本日、何度目かの感嘆符が出た。


でも、今回は、おばあちゃんの 前振りがあったので、驚き半分といった感じである。

「テニスは、中学1年から始めました。1年生の時は、球拾いが多かったから、実質2年分くらいしか、ラケット振ってません。

だから、みんなに迷惑かけそうなのが怖いけど、頑張るので、よろしくお願いします」


「お願いします」


「みんなお互い様だ。だから迷惑をかけるとか、考えなくてもいいよ。

俺なんか、会社でみんなに、迷惑掛けっ放しだけど、ちょっとも悪いとは、思っていないから」


すかさず、人愛コーチが突っ込みを入れる。

「迷惑かけてるっていう自覚はあるんですね。でも悪いとは思ってないんだ」


「そんなふうに、社長さんに、文句言うと、会社クビにならない?」と、心配そうに天音コーチが言う。


「天音コーチ、あれしきの事でクビになるなら、もう100回くらい、クビになってるよ。

 よし、次いくか。えーと、次はインスタントだな」


「またぁー、何ですか、それ?」と、あきれるように穂乃香コーチ


「インスタント と言えば、ラーメン か、カレー だろ?

かとう れいこ で、【カレー】ね。これ常識」


「カレーか。まあ予想はしてたけど。まっいいか。

カレーです。甘口です。シーチキン入りのカレーが好きですが、彼(カレー)はいません」


「みんな上手ね。話の流れに乗るのが」と瞳コーチ。続けて・・・

「テニスの方も、それくらい上手だといいのにね」


・・・・・・・・・・・・・・


「はい、はい、今のは、瞳コーチの、『愛のムチ』

私も、その『愛のムチ』に打たれてみたい💛」


「ねっ、言った通りでしょ。監督はド変態だって」

と、人愛コーチが、隣にいる澪コーチに、小声で言った。

うなづく、澪コーチ


「人愛コーチの、『愛』は、全然いらんがな」


「欲しいって言っても、あげません」


<この二人と、さらにダーリンがいる会社って、どんなんだろう?>

当事者2人を除く、全員が、北の山の中腹を見やるのであった。


「中学の時、付き合ってた彼にテニスを教えてもらってたんだけど、いつも『へたくそ』『へたくそ』て言うもんだから、頭ったま来て、別れて、もうテニスはしないって決めたのに、なんだか、『へたくそ』って言われたまま、テニスをやめてしまうのが悔しくなって。

クラブが復活したのは、神様が私にチャンスをくれたのかなっと思い、入部しました」


「元カレへのリベンジはともかく、『へたくそ』って言われたままでは、やめられない という気持ちは大切にしたいと思う。」


<あれっ?まともなコメントだけ?・・・なんだか気味が悪い>

春の日に、背筋に悪寒を覚える、真子コーチであった。


「あっ そうそう」


<来たァーーーーーやっぱり、来たァー>

そこには、お腹に春の日を浴びて、ホッとする、真子コーチがいた。


「カレーはやめて、『玲子』だから、愛称は【カレー粉】でいくか」


「やだ!、絶対に、い!や!だ!」


「冗談だよ、じょーだん。」

<我ながら、いい案が出たと思ったのにな。・・・まぁ、『カレー粉』では、ちょっと、いろいろなスパイスを詰め込みすぎか。・・・カレーだけに>

思わず、自分が考え付いた事に、クスッとしてしまう葉山であった。


「ほらね。やっぱり変でしょ」と、再び、人愛コーチが澪コーチへ。


「うん。澪も、納得」









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