第3話 VTuberになる過程②

 優馬によるとあかりんの配信は基本的に毎日やっているらしい。

 時間は夕方の六時頃。学校から帰ってきてから配信するため、そこは不定期だという。

 ここ最近学生の配信者は年々増加の傾向にあるらしいが、高校二年生であかりんほどの人気を持つ配信者は少ないらしい。

 

 某人気動画サイトでのチャンネル登録者は現在28万人。

 動画投稿して半年も満たない九重さんがこんなに急成長しているのは、決して容姿の良さだけではない。

 人当たりがよく、リスナーを大事にする。そしてなんといってもかなり負けず嫌いの努力家らしく、始めたばかりのゲームも負けないように、そして配信者として最低限人に見せられるように頑張るその健気さ。


 ざっとレビューを調べた感じ、九重さん、もとい配信者あかりんの評価はこんな感じだった。

 俺の唯一の取柄であるSPEXで俺を倒したくらいだしな(不意打ちだけど)、中途半端な実力じゃ世界一位は倒せない。


 なるほどな。

 とりあえず優馬の言っていた通り、配信者とは何かを人気者から吸収していこう。

 手始めはもちろんあかりんの配信だ。



『おっはりーん、今日も元気に配信やっていきますよ~』


 :来た来たwktk

 :俺の生きがい

 :おはりん!

 :おっはりん! 今日も可愛いね!

 :今日は何やるの


 同時視聴者数:3289



「うわ、いきなりすごいコメントの数だな。そりゃこんだけいれば当然か」


 滝のように流れていくコメントをあかりんはすかさず拾う。

 もはやプロの領域だ。ハッキングでもされたコンピューターのようなコメント欄。

 正直リスナーとして見てるだけでも疲れてくる。


「あはは、今日もみんな大好きSPEXだよ。大丈夫? ここ三日くらいこのゲームだけど見飽きてないかな……?」


 :そんなやついるの?

 :最近ランク絶好調だしね!

 :あかりんがやるゲームは全部見てて楽しい! なんなら画面あかりんだけでも!

 :大丈夫? 昨日世界一位の人に死体撃ちされてたけど…


 同時視聴者数:4638


 ふと俺のことを言っているコメントが視界に入った。

 うっ、途端にお腹が……


「うん、大丈夫! その人ちゃんと謝ってくれたしね!」


 :え? 謝ってたの?

 :まじ? あかりん許したの?

 :本物の天使だな、あかりんは

 :罰ゲームでつけた【天使のあかりん】はやっぱり間違いじゃなかったね


 その話題に入ってからか、段々同時視聴者数が増えてきた。

 それもそうだ。今じゃ昨日の一件でもう大量に切り抜きが作られている。

 話題性に引き寄せられてくるやつも少なくはない。


「なんか暗くなっちゃった? と、とりあえず始めてくよ!」


 あかりんはそう言って試合開始ボタンを押した。

 大体五試合くらい見て分かったことがある。


 あかりんはコミュ力がすごい。

 なんというか、語彙力がすごい。


 確かに学校での成績は優秀な九重さんだ。人形のような容姿とまるで天使のような優しい性格。友達も当たり前だけど多い。

 だが、あかりんはそれだけじゃない。話し方、声色、表情、そしてゲームセンス。

 実際にこの目で見て理解した。これがプロだ・・・


 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・


『やったー! 今日最後の試合でチャンピオン! みんな見てくれてありがと!』


 :さすがあかりん。1v3をものともしない!

 :最後のあかりんの裏取りやばくね?

 :まじで最強すぎwww

 :いいもの見させてもらいましたわww


『じゃあ今日はここらへんで! みんなおつりん!』


 :おつりん

 :おつおつ!

 :おっつりんー! また明日も楽しみにしてる!


 あかりんの平和な配信は大体三時間ほどで終了した。

 時間を忘れてしまうほどに魅了されていた。


 そのあと数時間ほど他の配信者やVTuberを見て俺は眠りについた。

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