探偵馬鹿の助手

プロローグ

　俺が求めていた平穏な日常が、こんな形で脅かされるとは思っていなかった。

　古びた木製の机と椅子、白い壁に取り付けられた黒板、そして窓からほんのりと差し込む夕日の光。

　放課後の教室が持つ無機質ながらも温かな雰囲気が、俺は嫌いじゃなかった。

　何年もの時間を経て少しずつ色が褪せた机と椅子に刻まれた無数の傷や落書きは風格すら感じさせる。

　しかし、そんなノスタルジックな空間の中。扉の前にはあまりにも場違いな服装をした少女が立っていた。

　それは茶色のケープと帽子。俗に言う探偵服。

　毛のほつれや褪せた色から、それがよく使い込まれたものだと分かる。

　その目は明るく、何かを強く求めるような好奇心に満ちている。

　突然の彼女の登場に、俺は平穏な日常が音を立てて崩れ始めるのを感じていた。

「私は千歩（せんぶ）ほの。」

　少女はそう言いながら、ケープを豪快に翻し、

「この学園で最も聡明かつ、知的な存在。通称、学園最強の探偵。」

　不敵な笑みを浮かべながら、そう宣言した