ネタと構想


昼食を終えた後、結城先生は即座に作業に取り掛かった。


 結城先生はこれから描き上げる予定の同人誌作品の起承転結、設定、ネタ、構想を紙に粗方書き出してから原稿に取り掛かった。

 結城先生曰く、作品を描く時で最も大事なのは具体的なイメージで、“このシーンを見せたい″“こういうメッセージを伝えたい″をハッキリさせておくことが大事みたいで、

 そこ根幹をハッキリとしてなかった場合、ぼんやりとしたものに出来上がってしまうかららしい。


 

 これから結城先生が描き上げる予定の同人誌は二次創作。

 結城先生自身が好きな作品を、結城先生が自分なりにアレンジして描い表現していく。

 基本的に『二次創作』は世に出回っている作品を取り扱う為、著作権のガイドライン(規約)に必ず従って創作する必要がある。

 二次創作は昔からグレーであることに変わりはないけど、色々なモノであふれている現在いまの時代において、二次創作は頻繁におこなわれている。

昔はそれなりに二次創作はファンたちの間で度々おこなわれていたけど、今では底なしに行われている。


 各作品/シリーズによって各企業などが独自のガイドラインを設け開示されていて、創作が盛んと化した今のこの時代では、必ずガイドラインや注意事項を必ず開示することが必須となった。


「さーて、仕事の時間だー!」



 結城先生は元気にそう叫んでから原稿に取り掛かった。

 いつも漫画を描く前には必ず叫んでいるらしくて、日々の日課と化してしまっているらしい。


「自分はどうすればいいですか?」

「絵の技量はどれくらいあるんだ?」

「えっと…まあまあ、かな」


 私の絵の技量を聞いた結城先生は少し目を閉じて考えた後、あるものを取り出して私に説明した。


「作画は私が全部描くから、遥は作画のベタ、トーン、ホワイトを頼む。

 デジタルだから絵に自身がないハルカでも大丈夫なハズだ」



 漫画の描き方には三種類ある。

 アナログ。デジタル。ハイブリッド。


 その中で結城先生は、アナログとデジタルを両立したハイブリッド型。

 知らない人のために分かりやすく説明すると、

 アナログは紙にインクとペンだけを使用した手描き型で、デジタルはパソコンやタブレットを中心にアプリを使った描き方。


 アナログで出来上がった原稿をデジタルでベタ塗り、トーンを貼り、ホワイト(修正/過筆)していく。


「分かりました。結城先生の手伝い頑張ります」

「おう! 頼りにしてるぜ」



 こうして私と結城先生による作業(同人誌作り)が始まった。

 結城先生は全力で作画を描き上げていき、描き上がったものを私がベタ塗りしていく。

 分からないこと、どうすればいいかを結城先生に聞きながらアドバイスを貰い、指導に従いながら作業を進めていく。


 作業(同人誌)作りは順調に進んだ。

 結城先生の指導とアドバイスのお陰でベタ塗りにもだいぶ慣れていって、一人でも作業ができるようになった。

 結城先生は黙々と作画を描き上げていってる。作業が始まって2時間くらい経っているのに、相変わらずブレてない。


 流石はプロの人気漫画家だと私は思った。

 毎日連載作品をを描き続けている結城先生にとって、この程度のことは朝飯前なんだと思う。

 

「無理し過ぎじゃないののか、少し休んだ方がいいぞ」

「こ、これくらい、だいじょうぶ…です。 まだまだ頑張れます」


 うつらうつらと睡魔と闘いながら、私は作業を続けていた。

 結城先生が頑張っている以上、私も頑張らなくちゃ。

 そう思いながら私は自分を奮い立たせて、睡魔からギリギリのところで踏ん張っていた。



「ありがとう。ただ“働く″だけでなく『休む時はちゃんと休む』のも仕事の一環だ。そこは絶対に間違えてはいけない。

 初めてにしてはよく頑張ってくれた。だから誇らしく思って休んでくれ」

「で、でも」

「ここから先は私に任せてください。ハルカ」


 扉を開けてレイが現場へ入って来た。

 唐突なレイの入場に私は驚いて、結城先生は冷静な状態のまま落ち着いていた。


「その顔、さぞや自分の腕に自信がある顔だな。私には分かるぜ」

「話が早くて助かります。遥の分は私が代わりに受け持つので、遥は安心して休んでください」

「それはそれで助かるけど」

「大丈夫。漫画の作業に取りかかる・・・・・・・・のは今回で初めてだけど、アシスタント回りであれば何でもできる。だからハルカは安心して休んで」


 そう言いつつ、レイはおいしいパン菓子を私の口元へ近づけた。

 私はレイが作ってくれたパン菓子を食した。

 

「あ、あれ? どことなく眠気が―」


 私はどたっと、横に倒れて眠りに落ちた。


「隠し味にハーブティーを少し混ぜておきました。これでしばらくの間、ハルカは目を覚ますことはありません」

「助ける手間がはぶけた、ありがとう。

 こうゆうタイプの奴は壊すとこまで壊しちまうからな。

 それはそれとして、アシスタント回りであれば何でもできると言っていたがそれはどういうことだ?」


 ほむらの直感は正しい。

 レイは一度も漫画を描いたことがない素人・・だ。だがレイはとても素人しろうととは思えないオーラ雰囲気を発していた。


 プロであるほむらはそのオーラを即座に感じ理解した。

 見せかけや見栄ではない、純粋なものだと。



「盾羽さんから漫画の描き方を粗方教わりました」

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