御剣焔。結城ほむら
人気漫画家結城ほむら。
2xxx年に小夢館で『アドベンチャーライフ』を連載開始。
現時点で累計200万部。2xxx年の夏にアニメが放送されてブレイクして更に有名となった。
アニメ二期の制作も発表されて、更なる売り上げが期待されている。
なにごとも平凡な生活を送っていた小学6年生の主人公(男子)がある日、異世界に飛ばされてジークという一匹の魔物と出会いを果たす。友達となった二人が異世界を冒険するファンタジーバトル漫画。
二人を中心に出会っていく様々な魔物、魔族、人々。初めて目にする未知なる広大で幻想的な世界観。回を重ねていくごとに成長していく主人公とジーク。
迫力あるバトル展開に、厨二心をくすがれるようなカッコいい技名は子供だけでなく、大人すらも童心に帰らせて夢中にさせる程に面白い作品として一躍有名となった。
「人気漫画家結城ほむら。 私たちが通う学園の人気漫画だと聞いてはいましたけど、実際に目にしたのは初めてです」
「わ、私も。実際に目にしたのは初めて!」
「もしかして、お二人は私のファンだだったりするのか?」
「いえ、ファンなのはハルカだけです」
「わ、私! アドベンチャーライフの大ファンです。結城ほむら先生、サインお願いできますか」
「いいぜ。先生として、ファンの要望に特別に応えるぞ」
結城先生はそう言うと、私のノートに『アドベンチャーライフ』の主人公とジークの肖像画をサイン付きで書いてくれた。
太陽のように眩しく輝いている結城先生を前に、サインを書いてくれたノートを受け取った。
あまりに嬉し過ぎたせいか、心臓がバクバクしていた。
「んじゃこの辺で失礼するぜ。部屋で私の仲間が腹を空かせて待っているからな」
結城先生は一人でコンビニに行って、仲間たち(アシスタント二名)の夕ご飯を買いに行っていたらしい。
「あ、あの結城先生」
「なんだ?」
「失礼かもしれませんけど、私も結城先生の部屋に行ってもいいですか?
助けてくれたお礼に、何かの助けになりたいんです!」
「気持ちは嬉しいんだけどよ。今私たちは正念場なんだ。
こんな事は言いたくないんだが、余計に負担は増やしたくない」
なら、尚更邪魔をすることはできないよね。
一ファンとして、助けてくれたお礼を理由に結城先生の“助けになりたい″という善意にあやかろうとしていた自分が情けない。
「遥は十分に助けになると思いますよ。
遥の美味しい料理を結城先生たちにごちそうすれば、結城先生たちの英気を充分に養えると私は思いますから」
レイが横からフォローしてくれた。
レイ、いつもありがとう。
「美味しい料理か、それはありがたい。
遥って言ったか? アンタは調理部の人だったりするのか?」
「いえ、遥は元から部活に入ってはいません」
「そうか。私の家まで案内する、ついて来な」
10分くらい結城先生の後をついて行った私とレイは、結城先生の実家にたどり着いた。
二階建てのそれなりに広い敷地、ごく普通の住宅だった。
結城先生曰く、アシスタントの二人は二階の現場(部屋)自分の創作に没頭しているらしい。もうすぐ始まるオラフェスに向けて、同人誌を描いているらしい。
私とレイは荷物を置いてすぐにキッチンに向かって、調理に取り掛かった。
冷蔵庫並びに冷凍庫に保管されている食材を全て確かめて、私とレイは何を調理するかの結論に至った。
結城先生は立ったままじっとして私たちの調理を眺めている。
私とレイはそんな結城先生を気にもかけず、調理することだけに専念していた。
「よし! 調理の出来上がり」
出来上がったばっかりの晩飯の匂いがリビングに行き渡る。
「おお! これは確実に美味い奴だ」
結城先生は晩御飯の匂いを嗅いだ途端、食欲がみるみるに湧いてきた。
毎日コンビニのおにぎりや弁当だけで済ませていたらしくて、こういったものを食べるのは一週間ぶりらしい。
ちょっとして二人の少女が降りてきた。
結城先生の親友にして同人誌作家の一人。
桜のような綺麗なピンク色をした長髪に、青空のような透き通るようなシアンの瞳をしていて、メガネをかけている。
黒髪のショートヘア。黄色の瞳。
漫画家を夢見るアマチュアにして、結城先生の弟子であるアシスタント。結城先生のことを『師匠』と呼んでいるらしい。
結城先生たちはこぞって美味しそうに晩飯を完食した。
「いやあ食った食った、ごちそうさま。久しぶりに美味しいものを味わったよ」
「コンビニ食には飽き飽きしてたから、いい気分転換になった。今なら面白い
オラフェスに向けてなるべく時間をできるだけ無駄にしない為、食事はコンビニで買ってきたものやインスタントもので済ませていたらしい。
食事は結城先生と盾羽さんで作れるらしいけど、原稿を描くことだけに専念する為にインスタント食品に頼り続けてきた結果、自分で調理することを
「しかし結城先生も同人誌を描いていたことには驚きました。仕事の山場って同人誌のことだったんですか?」
「大体合っているが正確には少し違う。 連載分の原稿を済ませたから、これから同人誌分の原稿に取り掛かるところなんだ。
だから私にとって、ここからが本当の山場なんだ」
人気
「あの結城先生、一つ聞いてもいいですか?」
「いいぜ。何を聞きたいんだ?」
「どうして同人誌を描いているのか、その理由を聞いてもいいですか。
単に、描いている理由を知りたい。ただそれだけなんです」
私がそう言うと、結城先生は腕を組んで目を閉じた。
ちょっとして、私の問いにこう答えた。
「どうして描きたくなったか、か。 それは簡単だ。
私はな、常に描くことだけ意識して
結城先生の言葉が私の心に響き渡った。
当たり前のことだった。作者が描けなくなってしまうことは作者の『死』を意味する。
誰かに言われなくても分かっている『当たり前なこと』を、私はすっかり見落としてしまっていた。
「私にとって同人誌は、私の情熱に再び火を灯してくれたかけがえのないものなんだ。同人誌に出会ってなければきっと、
だから私は同人誌を描いている。同人誌は私にとっての
結城先生は左手でえんぴつを持ってまっすぐな笑顔をしてそう言い放った。
堂々と胸を張って自分の意見を主張する結城先生の顔と姿が立派で眩しく見えた。
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