第6話

 その日の夜。

「おい、起きろ。仕事の時間だ。行くぞ。」

そう言ってハチは歩き出した。

「?どうやっていくんだい?第一、僕はカヨの家なんて知らないよ?」

「家なんて知らなくたっていい。夢の中で繋がるんだからな。夢の中は本人も無意識のことが多いから一番、心の中に入り込みやすいんだよ。」

「...つまりは僕も今、夢の中ってわけか。」

「そういうことだよ。さあ、行くぞ。」

ハチは進んで行く。その道は薄く霧がかかったようになっていて、どこまで広がっているのか見えなかった。

少し経った後、視界が開けてきた。

「ついたぞ。」

そこにはカヨが座っていた。その周りには鎖が巻き付いていて、何だか空気が澱んでいるような気がした。

「二重だな。今回は軽度な方だろう。さあ、ここからがお前の出番だ。鎖を解くんだ。」

「え、どうやって?」

「ああ、そうだったな。...鎖を解くためには鍵が必要なんだ。その鍵は“ことば”だ。」

「ことば?」

「そう、その人の鎖に当てはまるようなことばをお前が話すんだ。そして当てはめることができたら鎖は解ける。とりあえず、その子の前に座って話しかけてみるんだ。本人も無意識の中だから、隠さずに伝えてくることが多い。気をつけるんだぞ。」

そういうとハチは座った。

僕はハチの話を聞いてゆっくりとカヨに近づいていった。距離が縮まっていくにつれて、あたりはだんだん薄暗くなっていく。そして僕はカヨの目の前に座った。

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