第39話 桜田の気持ち

39 桜田の気持ち


ふふふっ可愛い・・・桜田は眠っている佐藤を見て思う。

今の俺には、早急に決断しなければならない事が2つある。


1つは・・・松井部長・・・以前はこう呼んでいたんだよな。


まさか彼とプライベートで仲良くなるなんて、思ってもみなかった。

最初に、佐藤を好きだと言ったのは彼だ。

俺が後から割り込んだ・・・


それでも彼は、俺の事を友人と思ってくれているのだろうか?

もし彼と友人でいられるなら・・・正直な自分で、彼と向き合いたい。


最近はコバちゃんの事を、気に掛けているみたいだけれど・・・

腹を割って話そう。真面目にココロ君様と向き合える様に。


そしてもう1つは・・・愛おしいこの人の事、この人との未来の事。


俺は誰を傷付ける事になっても、何を失う事になっても

カケルと離れ離れになる事には、耐えられない。例え地獄に落ちてもだ。


でも、カケルと一緒に居るんだから地獄に行くより幸せになりたいよ。

俺は欲張りだ。妥協はしない・・・


「・・・って、あれ?カケル起きたの?」


「うん・・・。」


「カケル・・・どうした?」


「しーっ!」口に指を当てている。

「あっち見て。・・・コバちゃんとココロ君様、何か良い雰囲気だよ。」

「チューするかな?」


あっ・・・本当だ。桜田も佐藤に視線の先に注目した。

「そりゃ、ここはチューでしょう。」

「俺達もチューする?」


「しない・・・俺、チュー見たい。」


「じゃあ、応援してみる?」


「うん。」


「チュー・チュー・チュー」手拍子に乗せて言ってみた。


   ***


「翔たんのせいで、コバちゃんに怒られた。」佐藤はふて腐れた。


「ははは、何で俺のせい?」


「もう一回寝る・・・」佐藤は横になった。


「うん。分った。」桜田はかいがいしく布団を掛けてやる。


俺って馬鹿みたいだ。でも・・・馬鹿みたいな自分が可愛い。

ちょっと前までの俺は、友人も恋人も執事も・・・一纏めで良い、それが合理的だと思っていた。


そんな俺が、友人の事で悩み恋人の事で悩み・・・

全部貴方のせいだからね。


さぁ、勇気を出せ俺!!


「松井部長・・・今ちょっと良いですか?」松井に声を掛けた。


「えっ?何?・・・何でしょうか?」松井も真面目な顔になって返事をした。


「正直に、そして遠慮無く答えて頂きたい・・・。」

「貴方と佐藤の間に割って入ったこの私が・・・友人の顔をしてココロ君様なんて呼んで良いのでしょうか?」


「・・・」

「友達の顔って・・・翔さんと俺、友達でしょ?友達で好敵手(笑)」

「佐藤さんの事は、正々堂々と戦って負けたんだから・・・仕方ないと思ってるよ。」

「俺も、翔さんと仲良くなれて嬉しいんだからね。」


「ココロ君様・・・よかった~!!マジでドキドキした~!!」



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