第32話 ツアー御一行様 3

32 ツアー御一行様 3


桜田・佐藤Side


コバちゃんに指摘されて桜田の方を見ると、そこには泣きそうな顔で笑っている桜田が居た。


「桜田様・・・」


「佐藤、1つ確認をしても良いか?」


「・・・ん?」


「私が・・・佐藤の恋人で・・・良いのか?」不安に押し潰されそうな顔で聞いてきた。


この不器用で真っ直ぐな人に、こんな顔をさせているのか・・・私が・・・。

全く親父の言う通り不誠実な男だ。


「桜田様・・・」


「佐藤、ごめん。皆の様に上手に挨拶出来なかった。」


「ねぇ翔たん。私は多分、貴方の事をすごく愛していると思いますよ。」


多分って何?!多分思うって・・・フォローになってないわ!!!桜田は心で叫ぶ。


「こんな気持ち・・・初めてだから、良く分らないけど・・・」


「カケル・・・泣きそうだ。可愛すぎる。」桜田はウルウルした目で佐藤を見つめる。


「この気持ちを大切にしたいと思う・・・翔たんには、伝わっていない?不安?」


「カケル・・・ごめ・・ん。もう大丈夫だ。」


   ***


「コバちゃん、ココロ君様と仲良いな。」佐藤は小林の背中に飛び乗った。


「カケル君重いですよ・・・翔さまを放っておいて大丈夫なんですか?」

小林が桜田の方を見ると、向こうで桜田は余裕の笑みをカマしている。

・・・さっきまで青ざめていたのに。


「俺達、少し素直に話をした。コバちゃんお陰だ・・・ありがと。」


そんな可愛い顔で、お礼なんて言われると・・・照れるじゃないですか。

小林は心でそう思いながら、微笑んだ。


佐藤さんの言葉に照れている・・・小林さん、可愛い。・・・松井も小林を見ていた。


「小林さん、佐藤さんの事好きなの?」松井がストレートに質問をぶつけた。


「そりゃあ、大好きですよ。幼い頃からずっと見てきましたから。ココロ君様とは、意味が違いますけどね。」小林が小声で答えた。


「それが、そうでも無いんだよね。」松井は少し困った顔をした。


「まぁ、佐藤さんとの出会いが運命だった事は確かですけど。」

「私もビミョーに複雑なんですよ。」


ビミョーに複雑って・・・どう言う状況だよ。と小林はツッコミを入れたくなった。


向こうから美作が、小走りでやって来た。

「コバちゃん!!カケル君家のコックと友達になった~。」

「レシピ貰ったから、今度作ったげるね。」

「って、ココロ君様。今、俺のコバちゃんを口説こうとしてたでしょう?」松井の方を睨む。 


「いや・・・そこまで明確な行動は、してない。」

「佐藤さん~。美作君が、イジめる~。」松井は佐藤に助けを求めた。


「ダメだぞ~。仲良くしなきゃ。」


「だってココロ君様が、俺のコバちゃんを・・・」


「2人でコバちゃんを、取り合ってたのか・・・だったら美作君、コバちゃんに良いところを見せないと。」


「美作君の良いところか・・・元気で可愛い笑顔だな。」桜田も参戦する。


「料理の腕は?」


「それは、別格!!」


「コバちゃんは中々手強いぞ!」


「自分達がスッキリしたからって、私で遊ぶのは止めて下さい。」小林が睨んだ。

「カケル君。他にやる事あるでしょ?」


「うん。分ってるよ。」と言って、桜田の腕を掴んでズンズン歩いて行く。


「父ちゃん、紹介するよ。俺の一番大切な人、恋人の桜田翔君です。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る