第30話 ツアー御一行様


30 ツアー御一行様


「皆さん、揃いましたか?では出発致します。佐藤さん宅探検ツアー。」

小林は、用意周到に手作りの旗を持って皆を先導する。

小林の言葉を皮切りに、今日のツアーが始まった。


   ***


「コ・・コバちゃん、コバちゃん。此処は何処?ベルサイユ宮殿に来たの?」

美作が、目をまん丸にして聞く。


「そうですよ(笑)」小林は優しい相づちを打つ。


「佐藤さん宅なの?豪邸を通り越して、城なんだけど・・・」松井も驚きを隠せない。


「そう・・・だね。」桜田はに至っては絶句に近い状態だった。


「これでさりげなく、お父上に桜田様を紹介して下さいね。」

小林が小声で佐藤に耳打ちをした。


「コバちゃんが作戦を立てたの?」と佐藤が聞き返す。


「松井様と2人で考えました。」小林が答えた。


「コバちゃん、頭良い~。松井様も、有り難う。」2人に素直にお礼を言った。


「私は佐藤さんの為なら、何でもする男ですからね。」と松井は冗談めかして言う。


「カケル君の父ちゃんに会えるの、楽しみ~。」美作は、はしゃいでいる。

さっきまでの夢かと思う様な、佐藤宅にもう馴染んでいる。切り替え早!!


・・・ドキドキドキ・・・桜田は声も出せない。


「し~っ!」小林は口に指を当てる。

「さぁ、ご挨拶に参りましょう。」このツアーを仕切りだした。


   ***


「ようこそ、皆さん。カケルが何時もお世話になってます。」父上の登場だ。


「父ちゃん、俺の大切な人達を紹介するよ。」佐藤が前へ出た。


「待ちなさい・・・私が当てて見せよう。」

「君が小林君だね。カケルの話にあるように、しっかり者のイメージそのものだ。」


「当りです。宜しくお願い致します。」よく言うよ。知ってる癖に・・・茶番だ。

小林は、お辞儀をした。


「そして君が、カケルの想い人の桜田翔君だね。カケルの言うように、男前で賢そうな顔をしている。」


「・・・・・・いいえ。私は松井心と申します。お会いできて光栄です。」

「私は佐藤さんの事が大好きですが、振り向いて貰えません(笑)」


「君が松井のご子息か。松井も良いご子息に恵まれたな。」


「父をご存じで?」


「勿論だよ。私達の世界は広いようで狭いからね。」


「すると、君が桜田翔君だね。カケルの話にあるように、お茶目で可愛らしい。」


「ブー!!僕は料理長の美作でーす。」


「おお、元気の良い。儂は、元気の良い男が大好きだ。君の料理は絶品だとか。私も食べてみたいな。」


「何時でも作りますよ。カケル君とは仲良しです。宜しくお願いします。」


「フフン。分っているよ。君が桜田翔君だね。」


「もう・・・私しか残って居ませんから。」

「男前で賢そうではないですが・・・お茶目で可愛くは有りませんが・・・」

「初めまして、私が桜田翔です。」少し青ざめた顔で挨拶をした。


「暗い男だな・・・本当にカケルの恋人なのか?」


「暗い男とか言うな!!ちょっと凹んでいるだけだよ。」

「父ちゃんがゴチャゴチャと五月蠅いから・・・」佐藤は猛然と抗議をした。


「親に向かって五月蠅いとか言うな!!」


「佐藤、喧嘩をしないで。」

膨れっ面の佐藤を、何とか宥めた。


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