第27話 スピンオフ 内緒の裏事情

27 スピンオフ 内緒の裏事情


「桜田様・・・。御報告が御座います。カケル様には内緒で、お時間を作っては頂けないでしょうか?」

あるオフの日、小林が桜田に申し出た。


今日は佐藤と美作が、仲良く買い出しに出ている。天気も良く穏やかな日だ。


「私、不肖小林・・・カケル様のご様子は、全てにおいて把握しております。先日の里帰りの事なのですが・・・カケル様が、大旦那様・・・つまりお父上にカミングアウトをなされた様です。報告のレポートによれば、桜田様との御関係も全て大旦那様の知る所となりました。」少し含み笑いをする。


「今から報告のVTRを見る所なのですが、御一緒に御覧になられますか?」

小林は得意げに、少し上から目線で桜田に語った。


「VTRがあるのか・・・凄いな。見せて貰おう。」

「私と佐藤の絆を小林君にも理解して貰う為にも。」

小林の挑発的な態度に、応戦するかの様に桜田は、受けて立った。


   ***


「カケルの馬鹿たれ!」


「父ちゃんの分からず屋!!」


「お前の母ちゃん、デベソ!!」


「俺の母ちゃんは、父ちゃんの嫁さんだぞ!!」VTRは、2人の喧嘩から始まった。


「恋人の1人も居ない、お前とは話しにならん。だからお前は、半人前なのだ・・・」


「恋人なら居るよ。だったら、俺は一人前なんだな。」


「彼女が居るなら、何故連れて来ない?」


「彼女じゃないからだよ!!」何だか不毛なやり取りをしている。


「カケル・・・何を言っているんだ?」 

少し心配そうな声になった。『頭、大丈夫か?』なトーンである。


「俺の恋人は、彼女じゃない・・・彼氏だよ。」


「・・・じゃあ、お前が彼女なのか?」


「えっと・・・そうなのかな?・・・」

この会話の流れ・・・DNAを感じる。さすが親子。この親にしてこの子有りである。


「どっちが彼女で、彼氏かなんて大差ない!!恋人がいるなら、何故連れて来ない?」


「男だよ?!連れて来ても良いの?」


「お前は随分と不誠実な男だな。彼女だか彼氏が、気の毒でしょうが無い。」


「何で俺が不誠実なんだよ!!」


「男でも良いか?・・・私に聞いてどうする。お前が決める事であろう。そうと決めたら、お前は意見を変えぬではないか!お前に恥ずかしいと思う気持ちや迷いがあるから、連れて来れぬのだよ。」


「まだまだ修行が足りんな。だから、お前は半人前だと言うのだ。」


「父ちゃん・・・次の休みには、翔たんを連れて来るよ。」


「ふふん。楽しみじゃな。」


「よーし。飯の支度をしろ。久しぶりのカケルとの食事じゃ。食べて飲んで騒ぐぞ~!」


   ***


「VTRは、以上となります。」


「俺・・・泣くかも。なんて素晴らしいお父上様なんだろう。」桜田は感極まっている。


「ダメだ、我慢できない・・・佐藤を抱きしめたい。小林、佐藤を呼んできて。」


「承知致しました。VTRは、内緒の方向で・・・。」

と言って、この場を離れた。


まだ帰って来ていないと思っていた佐藤は、買い物を終えて帰ってきており美作と遊んでいた。


「カケル君。桜田様が、お呼びですよ。」と佐藤に声を掛けて、素早く退散した。


何だろう?と思つつ桜田の所へ行くと


「佐藤、愛している。」と、いきなり抱きついてきた。


こそばさと嬉しさを抑えつつ、

「翔たん。うざいよ。」と答えた。


桜田の抱擁は、暫くは終わりそうにない。


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