第25話 伝言

25 伝言


「小林君、何を言っているのか分らない。佐藤を呼んできて。」

桜田は少しきつめの口調で言った。


「先ほども申しましたが、カケル様はご実家に戻られました。伝言を預かっております。」


「佐藤は何て・・・?」


「『お声がけせずに、申し訳ありません。』との事です。」


「えっ?それだけ・・・他には?」


「伝言は全て伝えました。失礼致します。」小林は淡々と伝言を残して去って行った。


桜田は、小林を追いかける。

「小林、お願いだ。佐藤を、連れ戻して。」


「お断り致します。」と言って少し間をおき

「私の優先は、カケル様のお心です。」と言い一礼をした。


「すまない。仕事の邪魔をした・・・もう行って。」桜田は小林にそう言って踵を返す。


「はい。失礼致します。」小林は桜田の背中に、そう言った。


   ***


佐藤は何を想って・・・後悔をしている?

私はこんなに苦しいのに・・・佐藤は1人でも平気なのか?

それとも・・・他に誰か、居るのだろうか?私は貴方の事を、何も知らないのだな。


無邪気で可愛くて、皆から愛される。

でも私に対しては、自由奔放で高飛車・・・さらっと毒を吐く。

こそばがりで、ふにゃっと笑う。


色々な貴方が頭の中をグルグルと・・・

貴方と出会う前は、どうやって息をしていたのだろう?


   ***


1人で部屋に塞ぎ込んでしまった桜田の様子を聞き、松井も駆けつけた。

「桜田社長の様子はどうですか?」


「食事もろくに摂っていない様です。・・・もう3日目。」何時も元気印の美作も、今日は元気がない。


「美作君。こういう時は、どうすれば良いんだろう?」どうにもならないだろうと知りつつ、松井は聞いてみた。


「俺、馬鹿だから分らないよ・・・」美作は、涙目になっている。

「こんな翔様、見るのは辛いよ。」


「それでも、見守ろう。それしか出来なくても。」松井の覚悟が窺える。


2人は哀しそうな顔で、桜田を見守ると決めた。

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