第13話 け・じ・め
13 け・じ・め
「桜田様・・・お願いが御座います。松井様に直接ご挨拶をさせて頂けませんでしょうか?」
「そして、その席に桜田様もご同席頂けませんか?」
「・・・段取るよ。早い方が良いな。」
佐藤の気持ちを考えれば、その方が良いと判断した。やきもちを妬かない訳ではないのだけど。
「有り難う御座います。」と言い残し仕事の段取りの為、部屋を出て行った。
***
桜田に呼び出されていた松井が到着した。
「桜田社長。折り入ってお話があるとか・・・何でしょうか?
気が変わって、佐藤氏を譲って下さるとか?」(笑)
「黙っていて申し訳ありません。今日お話があるのは、私ではなく佐藤の方です。」
神妙な顔をした佐藤が現れ一礼をした。
「松井様には直接、お礼とお詫びを申し上げたく桜田様に無理をお願い致しました。」
松井は少し眉を寄せて
「あまり、良い予感がしないな。でも佐藤さんの言う事を黙って聞くよ。」
「先日、松井様と偶然お会いした時に・・友達になろうと言って下さいましたが、お断りしなくてはなりません。松井様のあまりにも真っ直ぐな感情表現に、大変嬉しく思わず約束をしてしまいましたが。私は、桜田の執事でございます。松井様のお友達になる事、叶いません。私の生活の全ては桜田と共にあるのですから。」
「松井様が、尾も鰭も関係なくと言って下さった事。本当に嬉しかった。有り難う御座いました。」
松井は佐藤の正直な言葉を受けて、やや目線を下に落とした。そして、
「結局僕は、振られたんですね。」と淋しそうに言った。
その様子に、桜田も佐藤も胸がチクリと痛んだ・・・
「松井部長・・・」桜田は、何と声を掛ければ良いか迷っていた。
松井は落とした目線を元に戻し、哀しくも微笑みを顔に貼り付け
「桜田社長。この話が打ち合わせに無かった事、先ほどからのあなたの顔を見れば即に判ります。あなたが一番、驚いているご様子だ。」
「私の独断でございます。」佐藤が割って入った。
「僕たちは良いパートナーには成れる。そうでしょう?桜田社長。」
「ええ、もちろんです。」
「よかった・・・では、今後は2人の事を兄の様に慕います。立派なパートナーになれるように導いて下さい。今はまだ・・・何の実績も無い只の跡取り息子ですから・・・。」
「桜田社長、最後に一言良いですか?」
「ええ、もちろん。」
「僕の好きになった人が、佐藤さん・・・あなたで良かった。」
松井は少し吹っ切れたように、笑った。
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