第12話 後悔

12 後悔


佐藤が、眉間にしわを寄せ苦しそうにしている姿に我を取り戻した桜田は、一歩下がり距離をとった。

佐藤は壁に背を付けたままで、下にズルズルと落ちて行った。


違う・・・違う・・佐藤に、こんな思いをさせたっかったんじゃない。

「ごめん、佐藤。・・・こんな酷い事を。こんな風な事をしたかったんじゃない。

 こんな佐藤を・・・傷つける様な事を・・・只私は・・・」桜田は、小さく蹲る。


やっとの想いで息をついた佐藤は

「桜田様、私は大丈夫です。落ち着いて下さい。」と言った。


桜田の取り乱した様子を気掛かりに思い、自分の事を後回しにした結果の言葉だ。


「佐藤ごめん。私を嫌わないで・・・」消え入りそうな小さな声で弱々しく呟く。

「嫌っていません。」佐藤は優しい諭すような声で答えながら、抱き起こした。


佐藤の優しい声と暖かい腕に包み込まれながら、罪悪感と居心地の良さの狭間で、桜田は意識を薄くなるのを覚えた。


   

 ***



「桜田様。時間でございます、起きられますか?」

カーテンを開けられ、朝日の眩しさに開けた目をもう一度閉ざす。

目を瞑ったまま、しばらく考え込む。昨日の出来事を・・・


「側にいてくれたのか・・・。」


「はい。」


「ちょっと、待ってて。」桜田はおもむろに携帯電話を取り出す。


「あっ松井部長、朝早くに申し訳ありません。先日の佐藤の件は、お断りさせて頂きます。誰にも譲る事は出来ない存在だと気づきました。 はい、じゃあ後日。はい、宜しくお願いいたします。失礼します。」


電話を切った桜田は、佐藤の正面に向かい

「佐藤・・・昨夜の様な真似は、二度としないと誓う。だから頼む。私の側にいて欲しい。」


「もちろん側におりますよ。私は桜田様の執事でございますから。」佐藤は花の様に微笑んだ。


「ありがとう、佐藤!!」嬉しさのあまり、桜田は佐藤に抱きついた。


「んぴゃ~!!!」と佐藤はこそばがった。


「あっごめん・・・忘れてた。」(笑)




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