第11話 喧嘩
11 喧嘩
2人は、無言のまま帰宅した。
「お帰りなさい」・・と気まずい空気を知らない美作が、明るく言った。
「美作君、部屋にカモミールティーを持ってきてくれる?」と言うと
佐藤とも美作とも、目を合わさずに
「佐藤、部屋で話そう。」と言って佐藤を部屋へ促した。
美作がカモミールティーを持ってくると、桜田はティーセットを受け取りながら
「今から大事な話をするから、部屋に誰も近づかない様にして。」と言って
美作自身も、近寄らないように言い含めた。
「そこに座って。」と言いながら、カップにお茶を注いで佐藤に差し出した。
お茶を飲みながら、暫しの沈黙を破り・・・
「どう言う事?」
「佐藤・・・何故松井部長と抱擁をする流れになったの?」と冷静を装って聞いた。
「どう言う事?・・・それは、こちらが聞きたいですね。」
「松井部長と、何をしていたの?」
「偶然お会いして、お茶に誘われました。」
「それだけ? 何の話をしていたの?」
「松井部長が・・・桜田様にトレードの話を、持ちかけていると。私を・・・」
「っ・・それは、その話は断るつもりでいた。」
「そうでございますか。」
「何か・・・不満でも?」
「いえ。不満な事など、ございません。」
「佐藤は、松井部長のところへ行きたいの?」
「私が決める事では、ございません。」
「そうだね。佐藤は、仕事だからここにいるんだから・・別に俺じゃなくても良いんだよね?」
「主が変われば、俺のことはどうでも良いんだから。」
「・・・桜田様がそう思うのであれば、そうなのでございましょう。」
「トレードの話は、そちらの方で勝手に決めて下さい。失礼します。」
佐藤が部屋を出ようと、席を立つ。
「佐藤・・・それでもまだ、今は私が主だ。」そう言いながら、佐藤を壁際に追い詰めた。
壁に押しつけ、両腕を掴んで持ち上げ強引にキスをした。
佐藤は最初は抵抗をしたものの、直に諦めて少し苦しそうにしているだけだった。
此の一連の様子を窓の外の植木の陰に隠れて、何者かが一部始終を見ていた。
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