第10話 ないしょ・・・

10 ないしょ・・・


はい、かしこまりました。旦那様の仰る通りに致します。

・・・それではまた、ご報告をさせて頂きます。


 ***



「あれっ?桜田社長の所の、佐藤さんでは・・。」


「松井様、奇遇でございますね。」


「今、少し時間とれます?お話がしたいと思っていたんです。すぐ近くにカフェがあります。お茶でもどうですか?私が桜田社長に、伝言を残しておきます。」


「桜田の戻る時間までで、宜しければ喜んで。」


お茶を飲みながらでも、松井の楽しそうな様子が窺える。

差し障りのない会話を終えて、ウズウズとした松井が本音とも冗談ともとれる口調で切り出す。


「嬉しいな。偶然会えるなんて・・・運命を感じます。

 桜田社長から、聞いていますか?僕があなたの事を、譲って欲しいと頼んでいる事を。」


「いえ。初耳でございます。」


「僕はあなたに、一目惚れをしました。それで是非にとお願いをしている最中です。」


「私は松井様に、そんな風に言って頂けるほど大層な者ではありません。」


「そろそろ桜田社長の所に戻らないと・・少し歩きながら話しませんか?」

と言い、店を出た。


少し眩しい日差しの中を歩きながら

「佐藤さんは、自分が伝説の執事と言われている事は知っているの?」と聞いて見る。


「噂に尾鰭でございますよ。」


「でも僕は・・噂も尾鰭も関係が無く、佐藤さんが気に入っている。好きなんです。」


「光栄でございます。松井様。」


「もし・・・桜田社長が、首を縦に振ってくれたら・・僕の所へ来てくれる?」


「それは、私が決める事ではございませんので。」


「じゃあ今は、友達になって下さい。」


「桜田様に悪影響がない範囲でなら、いいですよ。」


松井は、いい雰囲気だなと思った矢先・・・


「佐藤・・・お待たせ。」桜田が、近くまで来ていた。


「タイムオーバーか・・・。」松井が残念そうに呟く。


「では桜田社長。良い返事を期待しています。」と言い

佐藤に軽いバグをした。


「あっ...あぁ、また後日。」という桜田の言葉で去って行った。


・・・・・

「佐藤、さっきのバグはどういう事?」不機嫌な様子で桜田が聞いてきた。


「逆に、どう言う事でしょうか?」佐藤がこちらを睨んでそう言った。


そこへタイミング良く、否悪く運転手が迎えに来た。

佐藤が運転を出来ないという事で、新しく雇い入れたばかりである。


帰路への道のり、後部座席の2人は終始無言のままだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る