第6話 友として・・・
6 友として・・・
「お断りいたします。」・・・割と強めの口調で佐藤はハッキリと拒否をした。
”えっ・・・?!何で?!速攻で断りの返事。考える間もなく。・・・と思いながら
「いいじゃん、ダンスの練習くらい付き合ってくれても。」と言いながら
男性側のポーズで佐藤の手を取りながら腰に手を回した。
ダンスと言ってもブレイクダンスでもヒップホップでもない。・・・社交ダンスだ。
「うひゃぁ!」佐藤がビックリついでに、奇妙な声を上げる。
「お断りしたでしょう。不意に触れないで下さい。私、究極のこそばがりなんですから。」
佐藤は両手でグイグイと桜田との距離を離そうとしながら
「ダンスをお教えする事は出来ますが、練習のお相手をするのは無理です。」
「佐藤は丁度良いんだよな。小柄だからサイズ感もいいし・・ダンスが上手だと聞いてるよ。」
「ふみゃ~・・触らないで下さい。」
へぇ・・・面白い弱みを握った。そんな弱点があっただなんて・・・
「みゃー・・背中を撫でないでください!!!」
「悪い悪(笑)ちょっと、面白くなっちゃって。ごめん、今度から気を付けるから。」
「でも、社交ダンスは必要だろ?苦手なんだよ、何か手を考えておいてくれ。」
「判りました。何か対策を考えてみます。」
佐藤は、桜田のプライベートの時間が穏やかに過ごせるようにお茶を入れてくれている。
桜田は、少し後悔をしていた。本当は1人3役なんて、忙しいと言うか大変だなと思う。
無理を押しつけてはいないか?・・・
桜田の表情を察した佐藤は笑っていた。
「大丈夫でございますよ。私、こう見えて暇ですから・・・・」
「昨日の飲み会で仲良くなって。コック兼給仕の美作くんと、財務、ワインの数から万年筆のインクまで、全部を把握しているフットマンの小林くん。この2人で、屋敷の全てが回っております。」
余談ではあるが
小林君は本当なら、いつでもバトラーに昇格出来る程の人材だが・・・本人がそれを希望していない。
昨日の飲み会とやらは、とても楽しかったらしく
佐藤は、飲み会の様子込みで仕事の振り分けなどを説明してくれた。
その話を聞きながら桜田は
「昨日、飲み会なんてあったの?親睦会?主の私をのけ者にして?」と言った。
「主なればこそでございます。使用人達の親睦会でございますからバックヤードで行います。」
「まさか、バックヤードに入っては来られないでしょう?」
桜田は、何か納得のいかない顔をしながらも
「判ったよ。明日の仕事もあることだし、もう休もう。」と言った。
桜田の部屋と桜田の寝室、佐藤の部屋(寝室込み)は、全て中ドアで繋がっている。只不便なのは
桜田は全ての用事を、中ドアを使って済ますが
佐藤は一旦外に出て、廊下側のドアから出入りをするのである。まさに今も・・・
桜田の寝室の準備を終えて、一旦廊下側のドアからでて桜田の部屋へ行き寝室へと促し
また廊下側のドアより自分の部屋へ戻るのだった。
桜田の執事としての初日が終了。
「ふぅ、疲れた。」小さく呟いた。
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