惑星の神隠し。つまりはこの両手の中にある。

「春子さん、君は幽霊になったんだ。実はね、魂が二つに分かれるいわば魔の刻があるんだ。君を蘇らせたのはいい。ただ·····」耳人形は言った。


「ううん、幽霊でもいい、私生き返ったんじゃないけれど、そこは悔しいけれどいい」春子は無理に微笑んだ。


「君の魂が二つに分かれて一つは、目の前にいる春子さん。もう一つは、淫魔(サキュバス)になっているんだ」


「サキュバスかー。私なんかよりずっと美人なんだろうなー。私、もう幽霊だし。もうひとりの私、どんな結ばれ方するのかな。可哀想だけど、私よりは幸せになれないだろうな。」春子は言った。


耳人形は目を閉じた。

「精霊魔術師エルク様の声が聞こえる。もうひとりの春子さんは、世界の終わりを見るんだ。よかったね、その後もエルクが微笑む、と聞こえる」


「世界の終わり?サキュバスさん大丈夫かな。だって、肝心の本体がこんなだよ」春子が言う。


「エルク様も得手不得手がもしかしたらある。そんな時は弟子が尽力する」耳人形は続けた。「人を守るもののけにとって、人とは愛しい存在なんだ。エルク様はそんな生命を寵愛される大精霊だよ」


「あー、よかった」春子はその時には精霊魔術師エルクをまだ知らなかった。






→『幻想日記』につながる


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